上 下
38 / 175
第二膜 異世界ダンジョンハーレム編

三十八射目「【天ぷらうどん】」

しおりを挟む
 俺は今までの経緯を、リリィさんに説明していった。

 この世界に召喚されて、ラスボスを倒すことになった事。
 俺が、「特殊スキル」とマルハブシの毒の力で、ラスボスを倒した事。
 新崎にいざきさんや浅尾あさおさんと共に遭難して、うどんに飲み込まれてしまった事。

 ただし、俺の特殊スキルについては誤魔化しておいた。
 流石に、10才ぐらいの女の子に、性知識を教えるのは教育に悪い。
 【自慰マスター○-ション】とは、口に出さなかった。

 しかしリリィさんは、その説明が不服だったようだ。

「なるほど、今の状況は分かりました。ですが気になる点が一つ、行宗ゆきむねくんのスキルは、一体何なんですか??」

 俺が話を終えると、リリィさんは真っ先に、俺のスキルにツッコんできた。
 不満そうな青い瞳で、俺を真っすぐに見つめてくる。
 
 説明すべきなのだろうか。
 こんな少女に、オ○ニーについて……
 
 いやいや、マズイだろう。まだ小学生ぐらいのはずだ。

 俺が、どうしようかと悩んでいると、
 ぐーぐーぐー、と、
 リリィさんの腹の虫が鳴った。
 お腹が空いているようだ。
 
 俺はリリィさんに、小籠包しょうろんぽうをご馳走することにした。
 お風呂上りに、新崎にいざきさんと浅尾あさおさんと、三人で食べる予定だった昼食である。

 リリィさんは、小籠包しょうろんぽうを一目見ると、目を輝かせて飛びついた。
 よっぽどお腹が空いていたのだろう。

 よし、これで話題は逸れた。
 

 ★★★


「んふぅぅぅ!!美味しいですぅ!!ずっと、うどんばっかり食べていた気がするので、美味しすぎて、涙が出てきてしまいます………」

 金髪少女のリリィは、大きな小籠包しょうろんぽうを口に咥えて、涙を流していた。
 こんなに美味しそうに食べられるなら、小籠包しょうろんぽうも本望だろう。
 しかし、うどんを食べていたと言ったか?。まさか。

「リリィさん、まさか【天ぷらうどん】の中で、うどんを食べたんですか?」

「はい……。どちらかというと、食べさせられていた・・・・・・・・・という感覚ですね。
 はっきりとした記憶はないんです……ぼーっとした中で、ぬるぬると身体中をいたぶられ続けるという、まさに悪夢のような……」

「食べさせられていた??」

 どういう事だよ??
 ……ヌルヌルといたぶられ続ける??、なんかエ〇くね??

「これは人から聞いた知識ですが。【天ぷらうどん】というモンスターは、取り込んだ人間に、自身の肉体を食べさせて、人間の出す排泄物を食べると聞きました。
 想像するだけで食欲が減退しますね……。記憶が曖昧で良かったです。」

 は??
 排泄物を食べるって、バクテリアかよ。
 まさか、新崎にいざきさん達も今、同じ状況にいるのだろうか。
 つまり今、【天ぷらうどん】は、新崎にいざきさんたちの排泄物を食べ………
 いや、やめよう。
 スカ〇ロは、俺の性癖の範囲外だ……

「ですので、飲み込まれた人間は、【天ぷらうどん】に生かしてもらえるんです。
 しかし、やがてうどんの一部となり、人間単体での生命活動が維持できなくなってしまいます。
 先ほど倒れていた裸の男のように……
 さらに、魔法装備を着ていない全裸状態では、取り込まれる速度が早くなります。
 行宗ゆきむねさんの友達のタイムリミットは、あと一週間程でしょうか。」

「なるほど……」

 つまり、全裸状態の新崎にいざきさんや浅尾あさおさんは、一週間経てばモンスターの一部となってしまうという事だ。
 そうなれば、生きて外へ出る事は出来ない。
 
 果たして俺は、二人助けられるのだろうか??
 俺は一度失敗している。
 しかも、肝心の【天ぷらうどん】が、何処に逃げたのか分からない。


熱蒸気ホットスチーム

 すると、リリィさんは突然、魔法を詠唱した。
 
 リリィさんの両手から、白い湯気が立ち上った。
 それは、大きな小籠包を包み込むように、熱い蒸気が広がっていく。

 
 やがて蒸気が晴れると、小籠包は湯気を立てて美味しそうに蒸されていた。

 「どうぞ、行宗ゆきむねさんも食べてください。心配は大切ですが、焦りは禁物ですよ。腹が減ってはいくさは出来ません。」

 リリィさんは、小籠包しょうろんぽうの欠片を千切って、俺に手渡してきた。
 

「ああ、ありがとう。…熱っ!!」

 俺は、リリィさんが温めてくれた、ホカホカの小籠包しょうろんぽうを、フーフーと冷ましながら頬張った。
 蒸したての小籠包しょうろんぽうは、口の中で蕩けて、疲れた体に染み込んでいく。

 俺ってこんなに疲れてたんだな。
 思えば俺は、朝起きてから歩きっぱなしだった。
 ずっと極限状態のサバイバルで、新崎にいざきさんと浅尾あさおさんを失って、絶望状態だった。

 美味い、美味すぎる……
 この味を、新崎にいざきさんと浅尾あさおさんと一緒に、お風呂上りに食べたかったなぁ……

「う…うぅうぅ……っぅ……美味いよリリィさん……ありがとうっ……」

 俺は涙ながらに、小籠包しょうろんぽうの美味しさを噛み締めた。

 この世界に来てから泣いてばかりだ。死ぬほど辛い事ばかりなのだ。
 クラスメイトと離れ離れになって、ギリギリのサバイバルを強制させられて…

 だが俺は、同じぐらいの幸せを知った。友達や好きな人もできた。
 俺は、新崎にいざきさんと浅尾あさおさん、そしてリリィ姉妹と一緒にご飯を食べたい。
 まだ俺は、みんなと一緒に生きたいのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の××、狙われてます?!

みずいろ
BL
幼馴染でルームシェアしてる二人がくっつく話 ハッピーエンド、でろ甘です 性癖を詰め込んでます 「陸斗!お前の乳首いじらせて!!」 「……は?」 一応、美形×平凡 蒼真(そうま) 陸斗(りくと) もともと完結した話だったのを、続きを書きたかったので加筆修正しました。  こういう開発系、受けがめっちゃどろどろにされる話好きなんですけど、あんまなかったんで自給自足です!  甘い。(当社比)  一応開発系が書きたかったので話はゆっくり進めていきます。乳首開発/前立腺開発/玩具責め/結腸責め   とりあえず時間のある時に書き足していきます!

【完結】本当に愛していました。さようなら

梅干しおにぎり
恋愛
本当に愛していた彼の隣には、彼女がいました。 2話完結です。よろしくお願いします。

【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku
恋愛
婚約者ディオス様は私といるのが嫌な様子。いつもしかめっ面をしています。 ある時気付いてしまったの…私ってもしかして嫌われてる!? それなのに会いに行ったりして…私ってなんてキモいのでしょう…! もう自分から会いに行くのはやめよう…! そんなこんなで悩んでいたら職場の先輩にディオス様が美しい女性兵士と恋人同士なのでは?と笑われちゃった! なんだ!私は隠れ蓑なのね! このなんだか身に覚えも、釣り合いも取れていない婚約は隠れ蓑に使われてるからだったんだ!と盛大に勘違いした主人公ハルヴァとディオスのすれ違いラブコメディです。 ハッピーエンド♡

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

「悲劇の悪役令嬢」と呼ばれるはずだった少女は王太子妃に望まれる

冬野月子
恋愛
家族による虐待から救い出された少女は、前世の記憶を思い出しここがゲームの世界だと知った。 王太子妃を選ぶために貴族令嬢達が競い合うゲームの中で、自分は『悲劇の悪役令嬢』と呼ばれる、実の妹に陥れられ最後は自害するという不幸な結末を迎えるキャラクター、リナだったのだ。 悲劇の悪役令嬢にはならない、そう決意したリナが招集された王太子妃選考会は、ゲームとは異なる思惑が入り交わっていた。 お妃になるつもりがなかったリナだったが、王太子や周囲からはお妃として認められ、望まれていく。 ※小説家になろうにも掲載しています。

うちのワンコ書記が狙われてます

葉津緒
BL
「早く助けに行かないと、くうちゃんが風紀委員長に食べられる――」 怖がりで甘えたがりなワンコ書記が、風紀室へのおつかいに行ったことから始まる救出劇。 ワンコ書記総狙われ(総愛され?) 無理やり、お下品、やや鬼畜。

おさがしの方は、誰でしょう?~心と髪色は、うつろいやすいのです~

ハル*
ファンタジー
今日も今日とて、社畜として生きて日付をまたいでの帰路の途中。 高校の時に両親を事故で亡くして以降、何かとお世話になっている叔母の深夜食堂に寄ろうとした俺。 いつものようにドアに手をかけて、暖簾をぐぐりかけた瞬間のこと。 足元に目を開けていられないほどの眩しい光とともに、見たことがない円形の文様が現れる。 声をあげる間もなく、ぎゅっと閉じていた目を開けば、目の前にはさっきまであった叔母さんの食堂の入り口などない。 代わりにあったのは、洞窟の入り口。 手にしていたはずの鞄もなく、近くにあった泉を覗きこむとさっきまで見知っていた自分の姿はそこになかった。 泉の近くには、一冊の本なのか日記なのかわからないものが落ちている。 降り出した雨をよけて、ひとまずこの場にたどり着いた時に目の前にあった洞窟へとそれを胸に抱えながら雨宿りをすることにした主人公・水兎(ミト) 『ようこそ、社畜さん。アナタの心と体を癒す世界へ』 表紙に書かれている文字は、日本語だ。 それを開くと見たことがない文字の羅列に戸惑い、本を閉じる。 その後、その物の背表紙側から出てきた文字表を見つつ、文字を認識していく。 時が過ぎ、日記らしきそれが淡く光り出す。 警戒しつつ開いた日記らしきそれから文字たちが浮かび上がって、光の中へ。そして、その光は自分の中へと吸い込まれていった。 急に脳内にいろんな情報が増えてきて、知恵熱のように頭が熱くなってきて。 自分には名字があったはずなのに、ここに来てからなぜか思い出せない。 そしてさっき泉で見た自分の姿は、自分が知っている姿ではなかった。 25の姿ではなく、どう見ても10代半ばにしか見えず。 熱にうなされながら、一晩を過ごし、目を覚ました目の前にはやたらとおしゃべりな猫が二本足で立っていた。 異世界転移をした水兎。 その世界で、元の世界では得られずにいた時間や人との関わりあう時間を楽しみながら、ちょいちょいやらかしつつ旅に出る…までが長いのですが、いずれ旅に出てのんびり過ごすお話です。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...