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第一膜 クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 編
十七射目「俺は〇〇を失い賢者となる」
しおりを挟む俺は、絶望と快感を同時に味わった。
新崎さんが、死んだ……
俺は、何も考えられなかった……
何も感覚がしなくなった…
世界から、色が消え、味が消え、匂いが消えた…
俺の身体に溢れ落ちる、新崎さんの血の温もりも、全く感じる事が出来ない……
俺は、君を守りたかった…。君だけを守りたかったのに…。
これじゃあ、何の為に賢者になったのか、分からないじゃないか…
何が賢者だ、何がっ…!
一番大切なものを、守れていないじゃないか…
新崎さん、新崎さんっ……!
俺はまだ、君と居たい。君と一緒に過ごしたい。
話したいこと、遊びたいこと、行きたい場所、沢山あるのだ。
中学以来、諦めてばかりで、本当の幸せがわからなくなっていたけど…。
でも俺、やっぱり!新崎さんが大好きなんだ!!
いや、まだだ、まだ終わってない…。
【ネザーストーン】に願うんだ。
俺は知っている。理解っている。
あのボス、【スイーツ阿修羅】の頭の中には、三つの【ネザーストーン】が入っている。
俺は、あれを手に入れて、三つの願いを叶えるのだ。
一つ、「ハルハブシの猛毒」を解毒してくれ。
一つ、浅尾和奈と新崎直穂を生き返えらせてくれ。
一つ、俺達を元の世界へ帰してくれ
この三つの願いを、叶えてもらうのだ。
気合いを入れろ!!戦え!!戦え!!
俺がみんなを救うんだ!!
身体の奥底から力が湧いてくる…!失われた五感が蘇ってくる…
俺の上に崩れ落ちた、新崎さんのすべてを感じる、分かる。
まだ温かくて、ドロドロとして、冷たい響き…
新崎さんの冷たいぬくもりは、俺を優しく包み込む、
新崎さんの匂いだ…優しさだ…笑顔だ…可愛さだ…
全て見える、全て聞こえる、全て感じる、全て理解かる、全て知ってる…
俺は、賢者だ。
新崎さんを!クラスメイトを!、酷い目に合わせたアイツらを、俺は絶対に許さない!
★★★
「なんだ?アイツ…気配が変わったねぇ」
「あれは賢者!?しかも賢者のクセに、なんだ、あの化け物じみた魔力は!?」
「こ、怖いよぉお!私達、殺されないよね??」
ラストボス【スイーツ阿修羅】の三つの頭、エクレア、マドレーヌ、ワッフルは、そんな会話をする。
★★★
「シルヴァ様、奴は一体、何者なのですか!?あの莫大な魔力量は…!!」
赤い結界の中、仮面の男ギャベルは、
もう一人の小柄な仮面「シルヴァ様」に、焦った様子で問いかけた。
「シルヴァ様」は、少し顔を傾ける動作をしてから、幼くも大人びた声で答えた。
「知らぬのかギャべル?特殊スキル【自慰】じゃ。惜しいのぉ、二分の一を外したか」
「あれが【自慰】ですか!?それならば……!」
「いや、アレは使えぬ。しかし奴は強い。ギャベルよ、戦闘準備をしておけ」
「は、はっ!!」
★★★
俺は、立ち上がった。
ラストボス【スイーツ阿修羅】から、無数の攻撃が、俺に対して飛んでくる。
でも、俺には全て見えている。
どう動けば、効率的にアイツの側にたどり着けるのか、分かるのだ。
ビュゥゥン!!
俺は攻撃を掻き分けて、ボスの懐に入り込む。
そうして、魔力で生成した、巨大な白い聖剣で、ボスの肉体を思いっきり切り裂いた。
ズバァァァァン!!
ボスのHPが、目に見えて減少する。
このボスには、弱点が存在する。
魔力の集まった部分を攻撃すれば、大きなダメージを与えられる。
その位置は絶えず入れ替わっているが、俺には全て見えている。
ズバッ!ズバッ!!ズバッ!!ズバッ!!
あと57発、56発、55発当てれば倒せる。
急がないといけない、この状態は10分しかもたない。
もっと早く、効率的に、攻撃を避けつつ弱点を狙うんだ。
俺は、もの凄い集中力で、ラスボスを一対一で圧倒していく。
★★★
「なんだよ?あの強さ…」
「強すぎだろ、あり得ない」
「ふざけんな…なんでだよ…」
クラスメイトは皆、俺のあり得ない強さに、唖然としている。
それはそうだろう。
今の俺のレベルは「ハルハブシの猛毒」によって三倍、賢者タイムによって更に三倍、合わせて9倍となり。
Lv287となっている。
さらに、真理を見抜く【賢者の力】が加わる。
俺には、この世界の全てが見えている。全て知っている。
だから俺は知っている。
俺は今、紛れもなく世界最強の剣士であると。
「おい!ふざけんなよ!おっぱい野郎!!
そんな強いなら、なんで今まで使わなかった!?なんで 朝尾を、新崎を見殺しにした!?クソ野郎!!
あいつらを元に戻せよ!!」
俺が今まで嫌いだった人物。岡野大吾がそう叫んだ。
泣きそうな声で、俺を非難する。
「ごめん!ごめんっ!ごめんっ!!
でも、あの二人は絶対に生き帰えらせる!!
俺は賢者だから分かるんだ!
あの【ネザーストーン】は、何でも願いを叶えられる石なんだ!!」
俺は全力で、謝罪の言葉を叫んだ。
岡野の言う通りである。
俺が【自慰】スキルを最初から使っていれば、二人が死ぬことも無かったのだ。
でも、時は戻らない。
だから俺は前へと進む、絶対に全員を助け出すのだ。
★★★
「そうはさせるか、【ネザーストーン】は一つも渡さぬ。
ギャベル、ボスのHPが削り切れた瞬間じゃ。一つとして奴に渡すな」
赤い結界の中で、仮面の人物「シルヴァ様」が、仮面の男ギャベルに声をかけた。
「で、ですが、アレは化け物です。私には勝てませぬ」
「やれ。絶対命令じゃ」
★★★
ズバァァァァン!!
俺は、一撃も攻撃を喰らうことなく、ボスのHPを削りきった。
ボスの頭上のHPバーが消滅し、ボスの三つの頭部を守っていた、神の結界が消滅した。
よし、あとは三つの頭を倒すだけだ。
★★★
「へぇ…強いねぇ、やるじゃないか」
「ここまでみたいだな!さあ、俺らを殺して願いを叶えるがいい」
「えぇっ! なんで二人とも冷静なの?嫌だよぉ、死にたくないよぉ……」
ラストボス、【スイーツ阿修羅】の三人が、そんな会話をした。
★★★
ビュン!!
同時に、俺の後方から、
仮面の男ギャベルが、凄い勢いで、こちらへと突っ込んでくる。
やっと殻から出て来たか、クソ仮面。
「さあ、ラストバトルと行こうじゃないか!」
俺は賢者タイムのハイテンションから、悪役のようなセリフを叫びつつ。
三つの頭、エクレア、マドレーヌ、ワッフルへと、向かっていった。
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