変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日

コダーマ

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第26話 霊感少年G登場

不毛か呪いか、右足は骨折か?(1)

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 ゆっくりと室内に入っていく。

「ちょっと待って。何でアタシが先頭やねん」

 アタシの背に隠れるようにして桃太郎。
 その後にカメさん、ワンちゃん、うらしまと続く。

 怖いもの知らずである筈のお姉は、廊下から笑いながらこっち見てるだけ。
 その向こうでオキナが早くも腰を抜かしてた。
 更に向こうでかぐやちゃん、ボケッと余所を向いてる。


 そこは噂の1─3号室。
 8畳の板間。手前に小さな台所。向こうに押し入れ、奥に窓。そこには暗い色したカーテンが下がっている。
 室内の造りは、アタシの住む部屋と変わらない。

 ただ、空気が重い……。
 ズシッと重い。
 異様な感じや。

 ず、ずっと閉め切ってたんやもん。それは無理ないで?

 昼間なのに薄暗い室内。
 足元も覚束ないのにみんながグイグイ背中を押してくる。

「押さんといて。痛いって! 肩のダメージと、アタシ足も痛いねん!」

 とにかくカーテンを開ける。
 パッと光が差した瞬間、みんなの悲鳴が背後にあがった。
 振り返って、アタシも絶句する。

「パ、パンツっ!」
 室内には見覚えあるパンツがきれいに並べられていたのだ。
 知らずに踏んでいたみんなが、慌てて足をのける。
「ぜ、全部アタシのパンツや……」

 何が起こった? この事態は何や?

「はっ、余のズボンもここに!」

 パンツの海から桃太郎が引っ張り出したのは、失くしていたズボンや。

「幽霊だよ! 幽霊の仕業だよーッ!」

 オキナの金切り声。

「ゆ、幽霊か?」

 ちょっと待って。
 怖いのか滑稽なのか分からん。
 何で幽霊が人のパンツ盗んで、部屋中に並べるんや?
 混乱するやん。
 これはホラーなのか? それとも笑いなのか? 

「こ、この話は、ホノボノジャパニーズメルヘンギャグ路線ちゃうんか!」

 何じゃそれは、と桃太郎がズボンはきながらこっちを見る。

 その時だ。
 異様な空気が室内を包んだ。
 ヒタヒタと静かな足音が近付いて来る。

「ここにはれいどうがとおっているよ」

 抑揚のない陰気な低い声。
 突然背後から投げられたその言葉に、アタシらは肝を冷やした。
 桃太郎が「キャッ!」と悲鳴をあげて、アタシの腕に取りすがる。

「だ、大丈夫や。アタシがついてる」

 言いながらアタシら、変な関係やなと思った。

 1─3号室玄関前。
 小柄な少年──よく見れば年いってる?──が陰気に立ち尽くしている。
 大きな目でじーっとこっちを見て、ゆっくりボソボソ喋りだした。

「ここにはれいどうがとおっているよ」

 え、何や? ここにはれいど…れいどう…霊道!?

 霊道が通っているよって言った!?

 霊道って何や!
 一気に室温が下がった。

 今回に関しては、アタシもさすがに宇宙人とは思わない。
 むしろ幽霊か何かかと…。

「アンタ……誰?」

 少年の大きな目がクルリとこちらを向く。
 ひぃ、怖い。

「れいどうとは……」

「やっぱり! ホラ、やっぱりね!」

 少年が口を開きかけた直前、オキナが突然割って入ってきた。

「ボク、霊感あるって言ってんじゃん。霊的なモノが近くにいると、すごく身体がダルめになって眠くなっちゃうんだ。朝になってもぉ、昼になってもぉ、夜になってもぉ、目覚めなかったりするんだよぉ。体力とぉ、精神力をぉ削り取られてくかんじ?」

 何やその喋り方。ウザイな。

「それはアンタが怠け者なだけ違(ちゃ)うんか?」

 そう言うとオキナは、アタシを見下すように「ハッ!」と笑った。

「霊感のない人には、何言ってもムダだって分かってるけどね~。要は感覚?ってやつ~?」

「ふ、ふーん」

 オキナはものすごく得意気だ。
 アンタに霊感があるのはいいけど、何でアタシがそのことに関して蔑まれんとアカンねん。腑に落ちない。

「こここの人の言うとおりです。れれれ霊道が通ってますぅ」

 ワンちゃんまで言い出した。
 アカン。みんな変な目つきになってきたで。

「あの……こ、こちらさんはどなたで?」

 瞬きすらせずにじーっとこっちを見詰める大きな目。
 アタシが視線を逸らせたのは恥ずかしいのと恐ろしいの、二つの思いからだった。

「この子? ホラ、アレよ。あそこの子。アレだってば」

 お姉が近所のオバチャンみたいな話し方した。

「アレじゃ分からん。あそこじゃ分からんって」

 すると少年本人がクルリとアタシの方に向き直った。
 こっちを凝視しながら、身体ごと向かってくるので怖いったらない。
 サラッサラの髪が優雅に揺れてる。

「じぃです」

「は? 爺?」

「じぃはねぇきみにあったことあるよ。ぱちんこいくときみかけた。でもきづいてなかったね」

 こ、怖いねん!

 爺は君(=アタシ)に会ったことがあるよ。パチンコに行く時に見かけたよ。でも(アタシは)気付いてなかった──そういうことか? そう言ってるのか?
 いや、だから怖いねん!

「はなさかじぃです」

「お隣りの2─4の花阪さんよ。花阪Gさん」

 はなさかじいさん……花咲爺さん?
 あぁ、今度はそのパターンできたか!
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