変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日

コダーマ

文字の大きさ
37 / 54
第25話 パンツを盗まれた!

桃太郎が指揮る不毛捜査(2)

しおりを挟む
「リリリカさん、がんばって」

「はっ!」
 ワンちゃんの絶妙な応援に、アタシは我に返った。
 そうや、桃太郎の言うことをいちいち真に受けてたらアカン。
「桃太郎、アンタは黙っといて。捜査なんて必要ない。犯人はもう分かってんねん。うらしま、アンタやろ? アタシのパンツ返して!」

 パンツドロボウなんて、変態のコイツしかいない。
 しかしうらしまはグッと眉間にしわを寄せ、心外だというようにアタシを見る。

 こ、これは初めて見る表情や。
 疑われたことに対して、ちょっと怒ってる?

 アタシのパンツに興味はないって?
 アタシのパンツを盗ることは絶対にないって?

 そ、それでいいねん。間違ってない。
 けど、何かちょっと……アタシなりにショックなのは何でや?

「ま、まぁいいわ。容疑者は他にもいるからな」

 うらしまに向けていた疑いの目を、今度はオキナに。

「な、何さ。ボクはパンツそのものに興味がないんだよ? 根っからのノーパン主義なんだから! パンツなんて、一枚たりとも必要としてないよ。第一、キミのパンツなんて……」
 上唇をめくりあげてブフッと笑う。
 アタシ、完全に見下されてる。
「かぐやちゃんのかぐわしいパンツならともかく、キミの黄ばんだパンツなんて素手で持つことすら躊躇われるよ」

「だから黄ばんでない……って、何でそこまで言われんとアカンねん。アタシは被害者やで!」

 悲しいったらない。
 こっちは突然パンツを盗まれ、不便やし腹立つし。
 加えて言い知れぬショックと恥ずかしさに耐えてるのに、みんな好き勝手に言い出した。

 以下、容疑者たちの証言だ。まずはワンちゃん。

「あああたしの下着は大丈夫でした。いざという時の為の勝負パンツもまっさらのまま残ってました。はは犯人は何故、リカさんのパンツのみを狙ったんでしょうか?」

 ワンちゃん、大胆なことをサラッと言った。

「わわわ若いからでしょうか?」

「ガードの緩い女を狙ったのよ」

 お姉、ソレは妹に言うセリフ違うで?

「関西の田舎と違って、ここはトーキョーよ。出かける時はちゃんと鍵をかけなくちゃ」

「鍵はかけたって。関西バカにすんのやめてぇな、お姉。言っとくけどアタシらの実家、ここよりずっと都会やで。知ってるやろ?」

 第一、東京を『トーキョー』って言ってる時点で首都圏に対する劣等感丸出しやわ。

 お姉はオホホと笑った。
 アカン。この人はアタシが困ってる様を見て楽しんでるだけや。
 根っからのSや。関わったらアカン。

「ほ、法師は?」
 まさかと思ってガラリと押入れを開ける。
「法師、違いますよね? アタシのパンツ盗ったんは」

 弁当箱の中でぐっすり寝ていたらしい小人は、目を擦りながら「違うでゴザル」と言う。

 うん、嘘はついてないみたい。
 これだけ大騒ぎしといて、まさかうちの押入れに住んでる小人が犯人でしたってことになれば、何故だかアタシもいたたまれないもん。

「も、桃太郎、アンタは? アタシのパンツ盗ってない?」

 念の為に問うと、桃太郎は血の気の引いた壮絶な表情をした。
 参考までにカメさんにも聞くと、こちらも顔を引き攣らせている。
 何やねん! みんな、アタシのパンツに対して不快感出しすぎや。

「これからアパート中を捜索するぞ!」

 元より人の話を聞きもしないかぐやちゃんが突然、ヘンな方向見て気合いを入れてる。

 ちょっと待って。
 何でアンタが突然指揮りだすの?
 非常事態勃発でこの人、突然イキイキし始めたようだ。

 そんなわけで、アタシらはここにいるみんなの部屋の捜索を始めた。
 つまり1─1、1─4、2─2、それからかぐや小屋(ハウス)。

 みんなでゾロゾロ各部屋を回ったところで、アタシのパンツが見付かるわけもなく、第一どこを探していいかも分からない。
 もしこの中に犯人がいるなら、もうちょっとマシな所に隠してる筈や。

 みんなに「♪リカのパンツっ、黄ばんだパンツっ」「♪いや、そんなに黄ばんでないらしい」とか言われながらの行軍は、アタシにとっては逆に拷問になった。

「アタシのパンツ、そんなに魅力ないかなぁ。大して黄ばんでないけどなぁ」
 何故だかアタシが落ち込むハメになった。
「もういいわ。アタシ、パンツあきらめる。むしろ、いたたまれない気分や……」

 段々と気が滅入ってきた。
 うらしまなら、自分のパンツが盗まれたら逆に喜々とするんやろうな、
 こんな状況を喜びに変えられるうらしまは逆にすごいな──とか、つまらない考えが浮かんでは消える。

「リカちゃん、泣き寝入りはダメだよ。ププッ。警察に届けようよ」

「もう放っといてぇな……」

 オキナがアタシの背を叩く。

「負けちゃダメ。戦わなきゃ。ボクたちも応援するから、ブフッ!」

 クソゥ、腹立つわ!
 オキナはプッと笑いながら更に続ける。

「感電少女、パンツを盗まれる! なんてネット上で嘲られても気にすることないさ。プッ!」

「クッ……!」

 コイツが困ったり落ち込んだりした時、絶対に笑ってやろう。
 アタシは固く心に誓った。

 何となく自然に足が止まったのは、オキナの笑い声が途切れたからというわけでもないだろう。
 そこはある部屋の前。
 表札はない。1─3とひび割れたプレートが貼られているだけだ。

「こ、この家は……!」

 オキナが悲鳴に近い叫びをあげた。
 ひどく怯えている。

「ダ、ダメだよ、ここは……。ここは……っ!」

 1─3号室──そういえばこの部屋、良くないモノが住んでるって噂が……。
 何ともキナ臭い、嫌な空気をアタシは感じた。



「26.霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?」につづく
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...