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第19話 不毛大作戦!2
テロだか何だか、かなりヒドイかんじ(2)
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「ハイッ!」
持っていた小袋を開けて、中身を窓から竹林に放り投げる。
豆だ。あと、かぼちゃの種。
瞬間──カサカサと、異様な格好で小屋から這い出てきたかぐやちゃん。
キョロキョロ周囲を見回してから豆と種拾って、急いで口に入れている。
こんな人のどこがいいんやろ、うちの姉は。
「かぐやちゃん、アタシに付いて来てくれたら豆と種、もっとあげます!」
言うと彼はハッとしたように顔を上げた。
ヨダレが……。
こうしてアタシらは、かぐやちゃんを連れ出すことに成功した。
アタシとうらしまはオールド・ストーリーJ館玄関前で、こそこそと周囲の様子を窺っていた。
両手で種を持ってかじっているかぐやちゃんと、姉が合流した様を見守っていたのだ。
そこへ「勝訴」の旗しょって桃太郎が帰ってきた。
いつもの散歩──いや、世直しの旅(日帰り)から帰還したのだ。
とっさに身を隠そうとしたアタシを、目ざとく見つけて駆けてくる。
「コレ、リカ殿。コレ、余はこっちじゃ」
大声で叫んでくれる。
「しーっ! 桃太郎、大声出すな」
お姉の耳に届いてない筈がない。
しかしさすがの姉もかぐやちゃんとのデート(?)の予感にテンパっているらしい。
こちらに気付く気配はなかった。
「桃太郎。アンタ、目立ちすぎるねん!」
馴れ馴れしく近付いて来た桃太郎をキッと睨む。
ドサマギで仲直りしたみたいな雰囲気になってるけど、アタシはアンタの存在に対して抱いていた違和感は拭えてへんからな!
そこへコソコソ。
ワンちゃんもやって来た。
桃太郎を見て「ハウァッ!」と息を呑む。
「ああああたしも見守り隊参加希望ですぅぅ」
桃太郎をガン見しながらも、右手が指しているのはお姉とかぐやちゃんの後姿だ。
異質な二人のデートの噂を聞きつけて、ワンちゃんは怖いもの見たさにやって来たらしい。
「デデデートってどこに行くんでしょう?」
ワンちゃんがアタシの手をギュッとつかんだ。
「痛てて!」
「ススススミマセン。ススススミマセン。肩が外れてスミマセン。こんなあたしでスミマセン」
「い、いや、ワンちゃん? そんなこと言ってへんし。こっちこそスミマセン。こんなアタシでスミマセン」
何でアタシが謝らんといかんねん。
ワンちゃんも他人の恋模様に少し興奮気味らしい。
「でもデートって言うてもこの辺、駅前商店街しかないやん」
あとは荒地と建設予定地ばっかり。
ちょっと歩けば川が流れてるけど、ひどいドブ川って話やし。
そりゃ40分歩けば大ハナってショッピングモールがあるけど……お姉がそこに行くとは思えんし。
第一、かぐやちゃんは無心に種食べてるだけやもんなぁ。
不毛やわ。
隣りに誰がいるか、自分がどこ歩いてるかなんて意識、絶対ないと思う。
不審な二人連れやで、コレは。
通行人が避けて通っていくのが分かるもん。
嬉々として後を付けてるアタシら(桃太郎とうらしま、ワンちゃん、あとアタシ)も考えたら濃い顔ぶれやもん。
不毛ワールドの局地やで、コレ。
せめてカメさんいないのが救いか?
「……アタシ、帰ろっかな」
急に虚しくなってしまった。
アタシ、一体何やってんねんやろ。
やや挙動不審なお姉を見るのも、カッカッと異様な音をたてて種を齧りまくるかぐやちゃんを見るのも、何か侘しい。
何よりそんな2人の後をコソコソつけている自分らの姿が、傍からどう見えるか考えたら、やりきれない思いや。
己の行動にひどく落ち込んでしまったアタシは、その場に足を止める。
「どうしたんだい、リカちゃん」
「どうしたも何もないわ。何やねん、このデート(?)は」
「お手柄じゃないか。あとで乙姫サマから、ねぎらいのお言葉を頂戴できるぞ?」
「ねぎらいのお言葉て! 頂戴できるて! アタシはな、そんなもん欲しくないねん! そこまでアレちゃうねん」
「アレって何だい……ハウァッ! アレは何だっ!!」
「はぁ? 何言ってんねん」
「ハウアッ!」
すぐ隣りでうらしまが立ち止まった。
「ハウアァッーー!?」
口をカパッと開けて空の一点を凝視しているではないか。
何を聞いても「ハウアーッ」としか言わない。
桃太郎とワンちゃんがメガネを光らせ、奴の視線を追う。
「な、何や、アレは。ハウァッー!?」
数秒遅れて、アタシも空中に光るその存在にようやく気付いた。
白とオレンジの炎をあげて、空を横切るそのカタマリ。
地上から見てもすごい速度や。
光は徐々に眩しく、大きくなっていく。
「ハウァッー! ま、まさか、アレはホンモノのっ……?」
自分が何を叫んでいるか、分からなかった。
謎の光は真っ直ぐアタシらのアパートへ落ちていく。
次の瞬間、ビルが爆破解体される時のような凄まじい音を立てて、建物から砂煙が巻き上がった。
地面がビクビクと振動する。
お姉が「ギャギャーッ!」と悲鳴をあげ、アパートへ駆け戻ろうとするのを、アタシは必死で引き止める。
他の面々は皆、パカッと口を開けたまま砂煙の向こう、アパートの方を凝視していた。
「ミサイルだ! いや、あれは新型のっ…!?」
かぐやちゃんが地面に種をバラまき、ヘンなポーズを決めた。
続けて「ガーッ!」と怪獣のような音が鳴る。
例のアレ──腹の鳴る音だ。
次の瞬間、かぐやちゃんは往来でブッ倒れた。
その様を見てお姉、ギョッとしたように数歩その場を飛び退く。
こうしてお姉、念願のデートは終わった。
色々プランを練っていたようだけど、結局50メートルともたなかったわけだ。
「20.不毛すぎる、アタシの一日~迫る危機感」につづく
持っていた小袋を開けて、中身を窓から竹林に放り投げる。
豆だ。あと、かぼちゃの種。
瞬間──カサカサと、異様な格好で小屋から這い出てきたかぐやちゃん。
キョロキョロ周囲を見回してから豆と種拾って、急いで口に入れている。
こんな人のどこがいいんやろ、うちの姉は。
「かぐやちゃん、アタシに付いて来てくれたら豆と種、もっとあげます!」
言うと彼はハッとしたように顔を上げた。
ヨダレが……。
こうしてアタシらは、かぐやちゃんを連れ出すことに成功した。
アタシとうらしまはオールド・ストーリーJ館玄関前で、こそこそと周囲の様子を窺っていた。
両手で種を持ってかじっているかぐやちゃんと、姉が合流した様を見守っていたのだ。
そこへ「勝訴」の旗しょって桃太郎が帰ってきた。
いつもの散歩──いや、世直しの旅(日帰り)から帰還したのだ。
とっさに身を隠そうとしたアタシを、目ざとく見つけて駆けてくる。
「コレ、リカ殿。コレ、余はこっちじゃ」
大声で叫んでくれる。
「しーっ! 桃太郎、大声出すな」
お姉の耳に届いてない筈がない。
しかしさすがの姉もかぐやちゃんとのデート(?)の予感にテンパっているらしい。
こちらに気付く気配はなかった。
「桃太郎。アンタ、目立ちすぎるねん!」
馴れ馴れしく近付いて来た桃太郎をキッと睨む。
ドサマギで仲直りしたみたいな雰囲気になってるけど、アタシはアンタの存在に対して抱いていた違和感は拭えてへんからな!
そこへコソコソ。
ワンちゃんもやって来た。
桃太郎を見て「ハウァッ!」と息を呑む。
「ああああたしも見守り隊参加希望ですぅぅ」
桃太郎をガン見しながらも、右手が指しているのはお姉とかぐやちゃんの後姿だ。
異質な二人のデートの噂を聞きつけて、ワンちゃんは怖いもの見たさにやって来たらしい。
「デデデートってどこに行くんでしょう?」
ワンちゃんがアタシの手をギュッとつかんだ。
「痛てて!」
「ススススミマセン。ススススミマセン。肩が外れてスミマセン。こんなあたしでスミマセン」
「い、いや、ワンちゃん? そんなこと言ってへんし。こっちこそスミマセン。こんなアタシでスミマセン」
何でアタシが謝らんといかんねん。
ワンちゃんも他人の恋模様に少し興奮気味らしい。
「でもデートって言うてもこの辺、駅前商店街しかないやん」
あとは荒地と建設予定地ばっかり。
ちょっと歩けば川が流れてるけど、ひどいドブ川って話やし。
そりゃ40分歩けば大ハナってショッピングモールがあるけど……お姉がそこに行くとは思えんし。
第一、かぐやちゃんは無心に種食べてるだけやもんなぁ。
不毛やわ。
隣りに誰がいるか、自分がどこ歩いてるかなんて意識、絶対ないと思う。
不審な二人連れやで、コレは。
通行人が避けて通っていくのが分かるもん。
嬉々として後を付けてるアタシら(桃太郎とうらしま、ワンちゃん、あとアタシ)も考えたら濃い顔ぶれやもん。
不毛ワールドの局地やで、コレ。
せめてカメさんいないのが救いか?
「……アタシ、帰ろっかな」
急に虚しくなってしまった。
アタシ、一体何やってんねんやろ。
やや挙動不審なお姉を見るのも、カッカッと異様な音をたてて種を齧りまくるかぐやちゃんを見るのも、何か侘しい。
何よりそんな2人の後をコソコソつけている自分らの姿が、傍からどう見えるか考えたら、やりきれない思いや。
己の行動にひどく落ち込んでしまったアタシは、その場に足を止める。
「どうしたんだい、リカちゃん」
「どうしたも何もないわ。何やねん、このデート(?)は」
「お手柄じゃないか。あとで乙姫サマから、ねぎらいのお言葉を頂戴できるぞ?」
「ねぎらいのお言葉て! 頂戴できるて! アタシはな、そんなもん欲しくないねん! そこまでアレちゃうねん」
「アレって何だい……ハウァッ! アレは何だっ!!」
「はぁ? 何言ってんねん」
「ハウアッ!」
すぐ隣りでうらしまが立ち止まった。
「ハウアァッーー!?」
口をカパッと開けて空の一点を凝視しているではないか。
何を聞いても「ハウアーッ」としか言わない。
桃太郎とワンちゃんがメガネを光らせ、奴の視線を追う。
「な、何や、アレは。ハウァッー!?」
数秒遅れて、アタシも空中に光るその存在にようやく気付いた。
白とオレンジの炎をあげて、空を横切るそのカタマリ。
地上から見てもすごい速度や。
光は徐々に眩しく、大きくなっていく。
「ハウァッー! ま、まさか、アレはホンモノのっ……?」
自分が何を叫んでいるか、分からなかった。
謎の光は真っ直ぐアタシらのアパートへ落ちていく。
次の瞬間、ビルが爆破解体される時のような凄まじい音を立てて、建物から砂煙が巻き上がった。
地面がビクビクと振動する。
お姉が「ギャギャーッ!」と悲鳴をあげ、アパートへ駆け戻ろうとするのを、アタシは必死で引き止める。
他の面々は皆、パカッと口を開けたまま砂煙の向こう、アパートの方を凝視していた。
「ミサイルだ! いや、あれは新型のっ…!?」
かぐやちゃんが地面に種をバラまき、ヘンなポーズを決めた。
続けて「ガーッ!」と怪獣のような音が鳴る。
例のアレ──腹の鳴る音だ。
次の瞬間、かぐやちゃんは往来でブッ倒れた。
その様を見てお姉、ギョッとしたように数歩その場を飛び退く。
こうしてお姉、念願のデートは終わった。
色々プランを練っていたようだけど、結局50メートルともたなかったわけだ。
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