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第19話 不毛大作戦!2

テロだか何だか、かなりヒドイかんじ(1)

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 ゴゴゴ……地鳴りのような音が響く。
 かぐやちゃんの腹が鳴る音だ。
 もうイヤや、この音。

 そんな中、お姉はこう宣言した──是が非でも! かぐや様とのデートにこぎつけるわ!

 2人でゲームセンターに行くと言い張るのだ。

「やめとき! 特にゲーセンなんてやめとき! 格ゲーなんてやってみ? お姉のディープな一面見られて、不審がられるのがオチや」

「大丈夫。我を失うようなゲームには手を出さないわ! 格ゲーも、クレーンゲーにもね! ただ、一緒にプリクラ撮るのが夢なのよ」

 悲しい夢やで、それ……。

「それもアカンって。プリクラが光った瞬間、テロだーって騒ぎ出すわ。目に見えるようや」

 しかし案の定、お姉はアタシの言うことなんて聞いちゃいない。

「かかかぐや様とのデデートのお膳立てをなさい。そしたら家賃1年分、無料(タダ)にしてあげるわ」

 ワンちゃん、伝染ったん?
 お姉の声はワナワナ震えている。

「ム! 家賃1年タダ? い、いや、だからアカンって。いくらお姉でも、あの人に関わったらアカン! そもそもお姉には旦那さんいるやん!」

 残念ながら変態のうらしまやけど……。

「何でよ。桃太郎とワンのは見守り隊まで組織したくせに。わたしとかぐや様は真っ向から反対するなんて。さてはあなた、かぐや様の美貌に……!」

「ち、違う! 何て目つきしてんの、お姉。言っとくけどアタシ、かぐやちゃんなんてイヤや! 悪いけどイヤや! いろんな意味でイヤや!」

 抵抗空しく、遂にアタシは家賃タダの誘惑に屈した──って、今1円も家賃払ってへんけどな?
 払う資力もないけどな?

 何にせよ、お姉は怖い。絶対逆らえへん。


   ※  ※  ※

「知ってるかい、リカちゃん。かぐや様は殺人マシーンで、目から光線が出るらしいぞ」

 何故かアタシに付いてきたうらしま、変なこと言って本気で怯えている。

「アンタが一番分からんわ。ていうか、情けないで? 何で恋敵(?)を様付けで呼ぶねん。かぐや様て…!」

 こき下ろしてもうらしまは平気な顔してる。

「何とかデートのお膳立てをして、乙姫サマのお役に立ちたいんだ!」

 まるで忠犬や。
 なんでこの人とあの人が夫婦なのかが不思議でしょうがない。
 SとMの相性がピッタリだって、神様が巡り合わせてくれたとしか思えへん。

 むなしいことこの上なしや。
 それに付き合わされるアタシの身にもなってみて?

 どんよりした気分のまま、アタシたちは1―4号室前までやってきた。
 中で人の気配がする。
 さっきまで廊下にうずくまっていたオキナも、さすがに室内に戻ったのだろう。

 そもそもお姉がかぐやちゃんとのデートを焦るのは、オキナに対抗してのことらしい。
 悲しいし、何か間違っている。
 まさしく不毛な恋愛バトルや。

「邪魔すんで、オキナ」

 カギが開いていたので中に入る。
 ピューっと心地良い風がアタシの顔を撫でた。

「涼しいなぁ。あ、この部屋角部屋だから窓2つあるんや。いいなぁ」

「あ、リカちゃん? いらっしゃーい」

「アタシの部屋は2-1やけど、壁の向こうに倉庫と階段があるから建物の端っことは違うねん。窓も1こや。やっぱり明るさも違(ちゃ)うな」

「あー、そうなんだー?」

 言いながらアタシの前をウロウロする赤毛男。
 激しい落込みからは一応脱したように見える。

「──ちょっと待ってや」

「何か?」

 オキナは水色パンツ(ブリーフの方)一丁だったのだ。

「オキナ……アンタ、決してパンツをはかないという主義を捨てたんか?」

 いや、あんなことがあったんや。
 無理もない。
 でも、だからって見せ付けるように水色ブリーフってのは……。

「ヤだなぁ、コレは見せパンだよ」

 シレッとした顔で言いやがる。

「いや、見せパンってのはチラッと見える的な……なぁ?」

 何て言っていいか分からず、アタシは隣りのうらしまの腕をつついた。

「そうだ。君は微妙なチラリズムの極意を分かってない!」

「………………」

 あぁ、アホが語りだした。
 アタシにフォローはできんわ。

 オキナはパンツ一丁でせっせと鼻をかんでいる。
 すごく矛盾した行動だと、アタシは思った。

「それにしてもアンタ、16歳のうら若い乙女の前でよくそんな格好できんな」

 精一杯の皮肉を込めてそう言うと、奴はチラッとアタシを見て「ハハッ」と低い笑い声をあげた。

 ムカツク奴だ。
 水色パンツを恥ずかしがるでもなく、更に左右に引っ張って「スズシイ~」と風を送り込んでいる。

「で、何の用なの? 珍しい組み合わせだけど」

 アタシとうらしまを交互に見比べている。

「いや、あの……まぁな」

 裏庭へ行く通路が電化製品に埋まっていて通りにくい上に、正面からあの人に会いに行くのも恐ろしい気がしてな。

「?」

 ちょっとゴメンな、とアタシは裏庭に面した窓辺へ寄った。
 目の前が竹やぶ。
 涼しげでいい感じや──うず高く積みあがる電化製品の山がなければ、の話だが。
 それらの向こうにかぐやちゃんの住処が見える。

「何であの人、こんなに家電ゴミ集めてんのやろ」
 お姉の部屋も大概汚いけど、レベルが違う。
 いや、質が違う。
「まぁいいわ。うらしま、例の」

 目で合図をする。

「ハイッ!」

 うらしまは窓辺に走ってきた。
 コイツ、慣れれば忠実や。
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