変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日

コダーマ

文字の大きさ
6 / 54
第4話 不毛なまでの怯え方

初めて会った義兄はヘンタイでした(2)

しおりを挟む
「いやや! 1人でしろや! アタシは共犯にはなりたくないわ。お姉はアンタが思ってる以上に恐ろしい人やで。羊の皮被った悪魔や! 住家は魔界や! 赤い血なんて1滴も流れてへん! アタシは幼い頃から、どれだけあの人に怯えてきたか……」

 じんわりと涙が溢れてきた。

「肩、外れたのも乙姫サマの仕業なの……?」

 うらしまの目つきが嫌だ。
 コイツの頭の中で、今アタシは自分と同じ種類の人間として区分されているに違いない。

「ちょっとその目……。その目、やめろ! アタシは、少なくともアンタに蔑まれるいわれはないで。肩外れたのだってお姉は関係なくて……」

 その時だ。
 意外と律儀な桃太郎がゴミの山から顔を出した。

「声が高いぞよ。隣近所に知れてはコトが面倒になろう。して、うらしま、大家殿は入浴中ということじゃが、そろそろ出てまいられるのではないか?」

「ハッ!」

 お姉の話になると、うらしまは明かに動揺して周囲をキョロキョロ見回している。

「あ、あの人はお風呂が長いんだ。特に今日はお気に入りのユーカリの入浴剤を入れておいたから、あと20分は出てこないはず」

 ほぅ、と桃太郎が声をあげる。

「それだけ時があれば余裕よの。うらしま、そちも知恵を回したの」

「無い脳みそを振り絞って考えたんだ!」

 威張るな!
 桃太郎も実は面白がってるだけなんちゃうか?

「絞るんならお姉との交渉に頭使いや。お姉かて鬼ちゃうで……多分。こんなドロボウみたいなことするより、小遣いちょっと上げてもらったらいいだけやん」

 そう言うと、うらしまは千切れんばかりの勢いで首を横に振った。

「ひぃぃ……」

 心底怯えた目だ。

「……何でアンタ、お姉と結婚したん?」

「……ると、たまら…………」

「え?」

「のの……と、た……なくなっ…………」

「なに?」

 アタシと桃太郎は顔を見合わせた。
 手は一応、金目の物を求めてゴミの中を這い回っている。

「罵られると、たまらなくなるんだ」

「……………………」(アタシ、無言)

「……………………」(桃太郎、無言)

 ──アタシらにどうしろって言うんですかッ?

「うらしまって見下されるように言われるともぅ……ウズウズしちゃう。洗濯ばさみの攻撃を受けると僕は……あ、あふんっ」

 喋り魔のうらしまは自分の恥ずかしい話を勝手にベラベラ語りだした。
 正直、どうリアクションをとっていいか分からない。

 どうでもいいけどお姉、夫を「うらしま」って呼ぶけど、自分だって苗字はうらしまなんじゃ…。
 「うらしま乙姫」か──ゴロ悪い上にアホみたいな名前や。
 それを言ったら「多部乙姫」も大概やけどな。

 部屋中漁りながら廊下で音がするたびにビクビクするが、アタシとコイツのビクつきは根本的に違う筈だ。
 怒られたい感、滲みまくりのうらしま──根っからのドMや、この人。

「……アタシ、なんでこんな酷いストレス感じながらこんなことしてるんやろ」

 お姉に見付かったら、おしおきは今度は洗濯ばさみじゃすまない。
 恐ろしいことこの上ない。
 このゴミの中から果たして何が出てくるのか、純粋に興味はあるけど。

「なぁ、リカちゃん。僕……僕……」

 うらしまが変なこと言い出した。

「うちのカミさんがすごいサディストで……ってブログでも書こうかと思ってて。大ヒットしたら書籍化されて、僕は一気に印税生活に突入だぞっ!」

「ハァ。書いたらいいやん」

「じゃあリカちゃん、パソコン買ってって乙姫サマにお願いしてくれよ」

「何で義妹にアブナイ橋渡らせようとすんの? 自分で頼みぃや!」

「義妹は感電少女だって、リカちゃんのことも書いてあげるよ」

「……遠慮しとくわ」

 コイツ、血ヘド吐くまで張り倒したい。

「買ってもらったパソコンで、えっちなサイトを見ようと思ってるわけじゃないぞッ☆」

「どうでもええわ! 黙れや!」

 うらしまは「あっ!」と叫んでアタシを見た。

「その怒鳴り方ぁ。乙姫サマと同じ血が流れてるぅ」

 この男、すごいムカツク。

「お姉は根っからのいじめっ子やからいいかもしれんけどな、アタシは普通やねん。アンタのそのドMっぷりはウザイだけや!」

 怒鳴るとうらしま、内股になって「あふんっ」と悲鳴をあげた。

「こんなアホには付き合ってられへん。桃太郎、帰るで!」

 桃太郎はおとなしく立ち上がった。
 探せど探せどゴミが出てくるこの部屋に、もう飽きたのかもしれない。

「こんなに部屋荒らしたら、絶対お姉に怒られるわ。1人で怒られろ、ボケ!」

 捨て台詞と共にドアを開けて、アタシは内臓が凍りつくのを自覚した。

 目の前には湯上りでホッペ真っ赤なお姉。
 ご機嫌な様子でニッコリしている。
 但し、目は笑ってない。

「お、お帰りなさい。お姉」

「ただいま。このゴミ娘」

 ひぇぇ、お姉にだけは言われたくない。

 アタシは桃太郎の手をつかんでお姉の脇をすり抜けた。
 その場から一気に逃げ出す。
 背後ではポキポキ指を鳴らす音が。

「ゴメンナサイッ!」
「カンベンしてくださいッ」
「あふんっ! あっふぅん」

 うらしまの悲鳴が聞こえる。
 でもなんか嬉しそう。ハァハァ言ってる。



「5.不毛な新キャラ登場~今度は小人だ!」につづく
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...