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11.七不思議編
54正体ショータイム ⑤
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***
ミストがせつなの鬼才ぶりを知ったのは、彼女と言葉を交わすより前だった。
この研究科にヤバいやつが入ってきた。そんな噂を、二つ上の先輩から聞いた。
筆記試験は満点。それどころか、十二歳という年齢からは考えられないほど強力な氷術と、専門家ですら唸る小論文で、文句なしの進学成績だったという。
義務教育である普通科を卒業した後の、人間界でいう大学や大学院に相当する、学院の応用科への進学率は、約一割だ。そんな小規模コミュニティなので、ミストがせつなと知り合うのもそう遅くなってからではなかった。
ミストから見たせつなは、明るくてイタズラ好きのお転婆少女だった。明晰すぎる頭脳も、強大すぎる猫力も、微塵も感じさせないあっけらかんさ。それが逆に、ミストの胸に悔しさをにじませた。
自分と同い年の、普通の女の子だ。クールで無口でも、尊大な天狗でもない。いっそそんなひとであれば、嫌いになれたかもしれないのに、そうではないから、悔しいという気持ちが平凡な自分の中に積もっていく。
唯一、せつなが遅れをとっている部分があるとすれば、十二歳で応用科に進学したということだ。
通常、飛び級なしのストレート進学なら、十歳で普通科を卒業すると同時に、学界に飛び込むことになる。彼女なら飛び級していてもおかしくはないはずなのに、あろうことか二年遅れているのだ。
そのことを考えると、ミストの胸は少し休まり、けれど安らぎを覚えていることに、嫌悪感を禁じえなかった。
***
それは、学期末の試験論文の提出日最終日のことだった。
早め早めから着手していたものの、手間取り、ミスに気付き、書き足し書き直ししているうちに、一週間も設けられていた提出期間の、最終日になっていた。
ミストはようやく書きあがったものを、プリンターよ壊れるなと念じながら印刷し、教務課に走った。締め切りは午後五時。そして、ミストが提出を完了させたのは午後四時だった。
受領印をもらった時はホッとしたものの、すぐにその安堵に水が差される。
きっと、彼女は初日にでも提出して、一足も二足も早い長期休暇を迎えているのだろう――そんな考えが浮かんできてしまう。
重要案件はクリアしたというのに、これから楽しい夏休みだというのに、知らず出てくるため息を吐き出し、共同研究スペースの個別ブースに戻ろうとした時だった。
プリンターのある廊下を、壁伝いによろよろと歩いてくるせつなの姿があった。
一瞬、せつなかどうかも疑った。いつも溌溂としている彼女が、手をついた壁に体重を預け、一歩一歩をやっとの思いで進めているなど、何かの間違いではないかと思った。
けれど、うつむいた顔は見えずとも、背格好も、髪型も、彼女に他ならなかった。
さすがのミストも、苦手意識など吹き飛ばして駆け寄った。
「ちょ、ちょっと、天河さん……どうしたの?」
「……ああ」
顔を上げたせつなは、顔見知りとわかると、ひどい顔色のまま薄く笑って見せた。名前を呼ぶには息が足りなかったようだった。
「だ、大丈夫? 具合悪いなら、保健室に……」
「……ダメよ……これを」
かすれた声で「これ」と呼んだもの。手にしていた、先ほどミストが提出したものと同じ厚さの紙束だ。
最終締切日の午後四時二十分、天河せつなはまだ試験論文を提出していなかった。
「もう仕上がってたのに……一週間寝込んで、落第なんて、ありえないでしょ」
「で、でも」
自分が代わりに提出しに行くという手も考えたが、すぐに却下した。提出には、本人が身分証明とともに出向かなければならない決まりなのだ。
うろたえるミストの前で、せつなは小さくえずいた。出てくるのは乾いた咳だけだ。
何度も吐いた末の脱水状態。想像に難くなかった。
「早く保健室……っていうか、救急隊呼んだほうがいいよ。こんな……」
「嫌よ!」
びく、とミストはわずかに身を引いた。初めて、せつなの口から激しい叫びがほとばしった。
目を見開くミストのそばで、せつなは壁にもたれかかりながら、打って変わって細い声をこぼした。
「ここでなら……って、思ったのよ。ここでなら、咲き誇れるって……私は」
「天河さん」
彼女の言葉の脈絡はわからなかった。だが、ふいに、遠くにいたはずの、高みに立っていたはずの彼女が、すぐ隣で自分と同じ地を踏んでいるように感じられた。
その言葉、そして次に聞こえた、息絶え絶えの叫びが、込められた想いが、ミストの中のせつなの像を塗り替えた。
「死んでも出す……もう、私は置いてかれたくない……!」
下手をすれば命に係わる容体で口にしたその言葉に込められていたのは、百パーセントの本気。一パーセントの冗談も挟む余地のない執念。
それを耳にしたから、ついに倒れこみ、なおも這って進もうとするせつなの傍らに膝をついて、その手を取り、ミストは言った。
「――その言葉、信じてもいいのね?」
***
「で、あの子は共同研究スペースのわたしの個別ブースに、備蓄してあった経口補水液と一緒に押し込んどきました。午後六時に回復するまでね」
「え、じゃあ」
雷奈がその先をためらう。試験論文は午後四時までの締切だったのだ。
すると、ミストはいたずらっぽく笑って――その姿を霞ませて、言った。
「わたしが出した。この姿で」
霧が一瞬目をくらませるような動きをしたかと思うと、次の瞬間、縁側に座る彼女は黒髪の少女の姿になっていた。
「せつなに……化けた!?」
「そっか、霧術ね!」
「正解」
変化を解きながら、ミストがにっこり笑う。
霞冴も、人間界にやってくるときは、アリスブルーの髪を黒髪に化かしているらしい。霧猫には、そういった技があるのだという。
「教務課のひとって、学院の職員ではあるけど、猫力学に精通しているわけではないからね。あの子から受け取った身分証明を見せれば、十分だませたわ。ただ、その間、ユキナを保健室に預けちゃったら、整合性がとれない。だからわたししか入らない、扉付きのわたしの個別ブース内に隠したってわけ」
経口補水液を渡しておいたとはいえ、その間、せつなは適切な治療を受けられないことになる。最悪、死につながる可能性もあった。
だから、ミストは確認をとったのだ。本当に、死んでも提出したいのか、と。
「それを機会に、わたしたちはすっかり打ち解けてね。夏休みもあの子と満喫したわ」
「えらい急転直下だな。嫉妬はどこ行ったんだよ」
「それが間違いだったのよ。ユキナはただの才能のひとじゃなかった。病弱ゆえに留年も挫折も経験して、努力の末に自身の居場所をつかみ取った、がんばりやさんだったの。ユキナのチョーカーのチャームがオナモミなのも、花言葉である『怠惰』を常に意識して自戒するためなのよ。それを知って、わたし、あの子を守ってあげなくちゃと思ってね」
「……え?」
雷奈たちは、うっとりと語るミストの言葉の中に信じがたい単語を発見して、固まった。
一方のミストは、雷奈たちを見て不思議そうに動きを止めた。
「……どうしたの?」
「病弱、って言った?」
「その一週間だけ体調悪かったわけじゃなくって?」
「そうよ。今日だって定期的な通院でいないから、道案内をあなたたちに頼んだのよ」
雷奈たちは合図もなく目を合わせて、同じ言葉を伝えあった。
――強制コアタイムじゃなかったのか。
「そっかー、知らなかったのか」
呟くミスト。知る由もない。あの茶目っ気たっぷりの元気な少女のどこに、身体の脆弱性を見出せたことやら。
「だいぶ悪いの? どこが悪いのかしら」
「んー……さすがにこの先は個人情報かな。ただ、普段は明るく振る舞ってるけど、もし……あー、これはダメだ、病名がバレる。とにかく、気を遣ってあげてって話!」
きっぱり言い切って、ミストは湯飲みのお茶をくいくい飲み始めた。問いかけられても答えられません、の態度だ。
きれいに飲み切ったミストは、「ごちそうさま」と雷奈に湯飲みを返すと、「今日はありがとう。また明日、もし会えたら」と残して去っていった。
ミストがせつなの鬼才ぶりを知ったのは、彼女と言葉を交わすより前だった。
この研究科にヤバいやつが入ってきた。そんな噂を、二つ上の先輩から聞いた。
筆記試験は満点。それどころか、十二歳という年齢からは考えられないほど強力な氷術と、専門家ですら唸る小論文で、文句なしの進学成績だったという。
義務教育である普通科を卒業した後の、人間界でいう大学や大学院に相当する、学院の応用科への進学率は、約一割だ。そんな小規模コミュニティなので、ミストがせつなと知り合うのもそう遅くなってからではなかった。
ミストから見たせつなは、明るくてイタズラ好きのお転婆少女だった。明晰すぎる頭脳も、強大すぎる猫力も、微塵も感じさせないあっけらかんさ。それが逆に、ミストの胸に悔しさをにじませた。
自分と同い年の、普通の女の子だ。クールで無口でも、尊大な天狗でもない。いっそそんなひとであれば、嫌いになれたかもしれないのに、そうではないから、悔しいという気持ちが平凡な自分の中に積もっていく。
唯一、せつなが遅れをとっている部分があるとすれば、十二歳で応用科に進学したということだ。
通常、飛び級なしのストレート進学なら、十歳で普通科を卒業すると同時に、学界に飛び込むことになる。彼女なら飛び級していてもおかしくはないはずなのに、あろうことか二年遅れているのだ。
そのことを考えると、ミストの胸は少し休まり、けれど安らぎを覚えていることに、嫌悪感を禁じえなかった。
***
それは、学期末の試験論文の提出日最終日のことだった。
早め早めから着手していたものの、手間取り、ミスに気付き、書き足し書き直ししているうちに、一週間も設けられていた提出期間の、最終日になっていた。
ミストはようやく書きあがったものを、プリンターよ壊れるなと念じながら印刷し、教務課に走った。締め切りは午後五時。そして、ミストが提出を完了させたのは午後四時だった。
受領印をもらった時はホッとしたものの、すぐにその安堵に水が差される。
きっと、彼女は初日にでも提出して、一足も二足も早い長期休暇を迎えているのだろう――そんな考えが浮かんできてしまう。
重要案件はクリアしたというのに、これから楽しい夏休みだというのに、知らず出てくるため息を吐き出し、共同研究スペースの個別ブースに戻ろうとした時だった。
プリンターのある廊下を、壁伝いによろよろと歩いてくるせつなの姿があった。
一瞬、せつなかどうかも疑った。いつも溌溂としている彼女が、手をついた壁に体重を預け、一歩一歩をやっとの思いで進めているなど、何かの間違いではないかと思った。
けれど、うつむいた顔は見えずとも、背格好も、髪型も、彼女に他ならなかった。
さすがのミストも、苦手意識など吹き飛ばして駆け寄った。
「ちょ、ちょっと、天河さん……どうしたの?」
「……ああ」
顔を上げたせつなは、顔見知りとわかると、ひどい顔色のまま薄く笑って見せた。名前を呼ぶには息が足りなかったようだった。
「だ、大丈夫? 具合悪いなら、保健室に……」
「……ダメよ……これを」
かすれた声で「これ」と呼んだもの。手にしていた、先ほどミストが提出したものと同じ厚さの紙束だ。
最終締切日の午後四時二十分、天河せつなはまだ試験論文を提出していなかった。
「もう仕上がってたのに……一週間寝込んで、落第なんて、ありえないでしょ」
「で、でも」
自分が代わりに提出しに行くという手も考えたが、すぐに却下した。提出には、本人が身分証明とともに出向かなければならない決まりなのだ。
うろたえるミストの前で、せつなは小さくえずいた。出てくるのは乾いた咳だけだ。
何度も吐いた末の脱水状態。想像に難くなかった。
「早く保健室……っていうか、救急隊呼んだほうがいいよ。こんな……」
「嫌よ!」
びく、とミストはわずかに身を引いた。初めて、せつなの口から激しい叫びがほとばしった。
目を見開くミストのそばで、せつなは壁にもたれかかりながら、打って変わって細い声をこぼした。
「ここでなら……って、思ったのよ。ここでなら、咲き誇れるって……私は」
「天河さん」
彼女の言葉の脈絡はわからなかった。だが、ふいに、遠くにいたはずの、高みに立っていたはずの彼女が、すぐ隣で自分と同じ地を踏んでいるように感じられた。
その言葉、そして次に聞こえた、息絶え絶えの叫びが、込められた想いが、ミストの中のせつなの像を塗り替えた。
「死んでも出す……もう、私は置いてかれたくない……!」
下手をすれば命に係わる容体で口にしたその言葉に込められていたのは、百パーセントの本気。一パーセントの冗談も挟む余地のない執念。
それを耳にしたから、ついに倒れこみ、なおも這って進もうとするせつなの傍らに膝をついて、その手を取り、ミストは言った。
「――その言葉、信じてもいいのね?」
***
「で、あの子は共同研究スペースのわたしの個別ブースに、備蓄してあった経口補水液と一緒に押し込んどきました。午後六時に回復するまでね」
「え、じゃあ」
雷奈がその先をためらう。試験論文は午後四時までの締切だったのだ。
すると、ミストはいたずらっぽく笑って――その姿を霞ませて、言った。
「わたしが出した。この姿で」
霧が一瞬目をくらませるような動きをしたかと思うと、次の瞬間、縁側に座る彼女は黒髪の少女の姿になっていた。
「せつなに……化けた!?」
「そっか、霧術ね!」
「正解」
変化を解きながら、ミストがにっこり笑う。
霞冴も、人間界にやってくるときは、アリスブルーの髪を黒髪に化かしているらしい。霧猫には、そういった技があるのだという。
「教務課のひとって、学院の職員ではあるけど、猫力学に精通しているわけではないからね。あの子から受け取った身分証明を見せれば、十分だませたわ。ただ、その間、ユキナを保健室に預けちゃったら、整合性がとれない。だからわたししか入らない、扉付きのわたしの個別ブース内に隠したってわけ」
経口補水液を渡しておいたとはいえ、その間、せつなは適切な治療を受けられないことになる。最悪、死につながる可能性もあった。
だから、ミストは確認をとったのだ。本当に、死んでも提出したいのか、と。
「それを機会に、わたしたちはすっかり打ち解けてね。夏休みもあの子と満喫したわ」
「えらい急転直下だな。嫉妬はどこ行ったんだよ」
「それが間違いだったのよ。ユキナはただの才能のひとじゃなかった。病弱ゆえに留年も挫折も経験して、努力の末に自身の居場所をつかみ取った、がんばりやさんだったの。ユキナのチョーカーのチャームがオナモミなのも、花言葉である『怠惰』を常に意識して自戒するためなのよ。それを知って、わたし、あの子を守ってあげなくちゃと思ってね」
「……え?」
雷奈たちは、うっとりと語るミストの言葉の中に信じがたい単語を発見して、固まった。
一方のミストは、雷奈たちを見て不思議そうに動きを止めた。
「……どうしたの?」
「病弱、って言った?」
「その一週間だけ体調悪かったわけじゃなくって?」
「そうよ。今日だって定期的な通院でいないから、道案内をあなたたちに頼んだのよ」
雷奈たちは合図もなく目を合わせて、同じ言葉を伝えあった。
――強制コアタイムじゃなかったのか。
「そっかー、知らなかったのか」
呟くミスト。知る由もない。あの茶目っ気たっぷりの元気な少女のどこに、身体の脆弱性を見出せたことやら。
「だいぶ悪いの? どこが悪いのかしら」
「んー……さすがにこの先は個人情報かな。ただ、普段は明るく振る舞ってるけど、もし……あー、これはダメだ、病名がバレる。とにかく、気を遣ってあげてって話!」
きっぱり言い切って、ミストは湯飲みのお茶をくいくい飲み始めた。問いかけられても答えられません、の態度だ。
きれいに飲み切ったミストは、「ごちそうさま」と雷奈に湯飲みを返すと、「今日はありがとう。また明日、もし会えたら」と残して去っていった。
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