聖女無双。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
8 / 11

聖女無双。(ぱーとふぉうー)

しおりを挟む
「ごめんなさい、ごめんなさい、アイシア様!! アンネが、アンネが、ガリオン様を愛してしまったばかりに!! 」
アイシアに地に押さえつけられているガリオンに縋りつきながら、騒ぐアンネ。

「アイシア様。アンネは体が弱く、僕が付いていてあげないと駄目なんです。」
「ごめんなさい、ガリオン様。アンネが、アンネが、か弱いばかりに婚約解消をさせてしまって~~ 」
アイシアに押さえつけられなからも、アンネを気づかうガリオン。

様なら、分かってもらえますよね。だって、アンネとガリオン様は『真実の愛』で結ばれてしまったんだから~~ 」
祈るように陶酔した顔をアイシアに向けるアンネ。

アンネはアイシアに『女神』の姿を重ねる。

「女神様は『真実の愛』をきっとお許しになってくださいますわ~~ だって『真実の愛』は尊いですもの~~ 」

「ぬかせ!! 」

ぱぁああん!!

アイシアはガリオンを押さえているのとは違う手でアンネに『聖女の嘆き』の平手打ち(強)を食らわす。

アンネは鼻からミミズのように血が這い出し、体は見事に弾き飛びコロコロと地を転がった。

「アンネ!? 」
地べたに顔を付けながら、ガリオンがアンネに叫ぶ。

コロコロと転がったアンネは、何故かコロコロと転がって戻ってくる。アイシアは風魔法で、アンネを手元に引き戻す。

「「「おおっーー!! 」」」
と、周りの生徒達が声を上げる。

「『愛』は、尊いですわ。」
がっしっと、アンネの頭を押さえて地に這わせながら聖母のようにアイシアは瞳を閉じた。

「だがな『愛』が総ての免罪符なるわけ、ないやろ。
われも、脳みそわいてんか? 」

「ご、ごめんなさい!! 調子こいてました!! 」

アイシアの開かれたその目は、三白眼である。

回復魔法で既に怪我がないアンネだが、制服はコロコロ転がって土と芝生まみれだ。

「われ、か弱いんだってな? 」
アイシアの声が凄む。

「そうだ、アイシア様!! アンネの体を癒やしてあげて下さい!! 」
ガリオンは思い出したようにアイシアに懇願する。

ふっと、アイシアは優しく微笑んだ。
その微笑みは聖母の微笑みだ。
だが、

「留学生に、体の弱い者が選ばれるはずないやろ。われ、あほやろ。」

「そうだよな。」
「そうですわ。」
周りのこの国の生徒達もアイシアの言葉に頷く。

そう、留学生に体の弱い者が選ばれるはずはない。
もし、他国で倒れでもしたら国際問題である。

「どういう事か? 」
と送り出し国が講義すれば、体の弱い留学生を送り出した国に受け入れた国が
「倒れるような者を送り出したのか、どういう事だ? 」
講義を言うに違いない。

「ご、ごめんなさい!! ガリオン様の気を引きたくて、か弱いをしてました!! 」
「「「えっ、そうなの!? 」」」
覚醒しているアンネは、素直に真実を話し謝った。ガリオンと周りの男子生徒は、驚くばかりだ。

「「「あ、やっぱり。」」」
女生徒は、白けた声を上げる。
見事なか弱いに、騙されたのは男子である。

「アイシア様…… 」

二人を押さえつけている後ろから声が聞こえてきてアイシアは振り返った。

銀の髪と緑の瞳、アイシアの義理姉ミスティアに良く似た令嬢が立っていた。

彼女はアンジュ。ミスティアの母方の妹の娘にして、アイシアにとっても従姉妹になる。

共にで留学生として勉学を励み友情を育んできた。

「アンジュ。私、ついときてしまって…… 」
アイシアは立ち上がり、手を胸で組んで目を逸らした。
ふわふわとした茶色の髪が風に揺れる。アイシアの立ち姿はどう見ても、庇護欲をそそる可憐な少女だ。
 
「「「はーーっ…… 」」」
アイシアの可憐な姿に、見ていた周りの生徒達は息を吐く。

「ありがとう、アイシア。」
アンジュはアイシアに心からの礼をする。そして地に這いつくばっている、二人に目を向ける。

「ガリオン様、婚約解消は受け入れますわ。アンネ様とお幸せに。」
アンジュは寂しそうに言った。

そう、ガリオンはアンジュのである。
だが、ガリオンの余りにもにアイシアは切れてしまったのだ。

「アンジュ、すまない。」
「ごめんなさい、アンジュ様。」
二人は這いつくばったまま、謝った。

「でも、慰謝料は頂きますから。2人とも。」
しれっとした、真面目顔でアンジュは言う。

「アンジュ、君のそう言うところだよ~~ 」

其れは其れ、此れは此れの切り返しの心の強いアンジュがいた。  

何処からともなく拍手がわく。


「アンジュ様…… 」 
アイシアは毅然に立っているアンジュの後ろ姿に、姉のミスティア見た。

「あ、この経緯はミスティア様に報告を入れます。」

振り向いたアンジュは、真面目な顔で言った。何故なら、アンジュはミスティアから頼まれたアイシアのお目付け役であった。

「い、いや~~!! お姉さまには言わないで~~!! お願い、アンジュ様~~ 」
「お目付け役ですから。」
懇願するアイシアの言葉をアンジュは切って落とした。




後日。

「いや~~ お姉さま、許して~~ 」
学生寮にアイシアの声が木霊する。


【直ぐ 帰郷せよ。 再教育。】

短い、電報がミスティアからアイシアに届いた。



【完】

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから

真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した

無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。  静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……

【完結】何やってるんですか!って婚約者と過ごしているだけですが。どなたですか?

BBやっこ
恋愛
学園生活において勉学は大事だ。ここは女神を奉る神学校であるからして、風紀が乱れる事は厳しい。 しかし、貴族の学園での過ごし方とは。婚約相手を探し、親交を深める時期でもある。 私は婚約者とは1学年上であり、学科も異なる。会える時間が限定されているのは寂しが。 その分甘えると思えば、それも学園生活の醍醐味。 そう、女神様を敬っているけど、信仰を深めるために学園で過ごしているわけではないのよ? そこに聖女科の女子学生が。知らない子、よね?

婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く

基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」 王太子は女を突き飛ばした。 「その恩も忘れて、お前は何をした!」 突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。 その姿に王太子は更に苛立った。 「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」 「ソル…?」 「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」 王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...