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婚約解消。(公爵令息編)
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昼の中庭でそれはおこった。
「君との婚約を解消する。」
「そんな…… 」
婚約を解消を聞いたアイシアは、両手を口元にかざした。可愛らしい顔の大きな褐色の瞳が、より大きく開く。
さわさわと、春の風が彩り始めた若葉を揺らす。柔らかいアイシアの茶色の髪をも、揺らした。
昼休みのさなか、中庭には沢山の学生達が遠巻きに彼らを見ている。
「彼女は僕がいないと駄目なんだ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
男に寄り添う女は、泣きながら男の腕に縋り付いている。
「君は、僕がいなくても強いから1人でも大丈夫だよね。」
心無い言葉。
彼はガリオン。金の髪・青い目の優男、ブックス国の王族の血を引く公爵家の者だ。そして隣に縋り付いている彼女は共に勉学に勤しんできた、侯爵家のアンネ。柔らかい赤毛のか弱い令嬢だ。
アイシアは今、隣の国ペンシルに彼等共々留学に来ている。仲睦まじかった二人は、今別れの時を迎えようとしている。
ゴッ!!
「ぐっバァ!! 」
「大丈夫なわけ、ないわーー!! 」
口から白いものを吐き出しながら、ガリオンが其の場から飛んだ。アイシアの右ストレート『聖女の鉄槌』が、ガリオンの左頬に炸裂したのだ。
「キャあぁああーー!! ガリオン様!! 」
アンネが悲鳴をあげる。
「言うにことかいて、なに抜かしてやがる!! このぼけぇがっ!! 」
近くの木に打ち付けられたガリオンに向かってずんずんとアイシアは歩く。
「強い? 強がって見せるに決まってるやろ!! それが分からんのかぁ、このあほがっ!! 」
アイシアはガリオンの胸ぐらを掴んで引き寄せた。小柄のアイシアの筋力強化で引き上げられたガリオンは地に膝を付くかつかないかの微妙なぶら下がり方をしていた。
既にガリオン怪我は治っている。聖女アイシア回復魔法だ。
「浮気したのは己やろ? 何、人様の所為にしてんや。このくずがっ。」
可愛らしい見た目のアイシアから、どすの利いた声が其の場に木霊する。その大きくて憂いを帯びたアイシアの瞳が、細められている。
「人様のいるところで何言ってんやわれ、脳みそうじでもわいてんか? ああん? 」
ぶら下がったガリオンに、アイシアの小顔な顔が近づけられる。
「こ、このような場所で、言ってしまってす、すみません!! 」
ガリオンは震えながら謝った。
「『人の心はままならない』其れは分かるわ。婚約者がいても、恋人がいても、他の人を好きになってしまうこともあるやろう。其れは否定せんわ。」
アイシアは少し寂しそうに微笑んだ。
「だがな、そう言う時はな。道理を通して、誠心誠意謝るもんや。」
アイシアはそのままガリオンの頭を地に押さえつけた。
「地べた這いつくばって、誠心誠意コメツキバッタのようにあたま下げな!! 」
「すみません!! 」
アイシアに手で押さえつけられ地に顔を埋めながら、ガリオンは謝る。
「うん、うん」と、その場で見守っていた野次馬たちはアイシアの言葉にもっともだと頷きながら見ている。
どう考えても、浮気した方が悪い。なのに浮気した者が相手を悪いように言うのはいかがなものか。浮気した者が『誠心誠意謝る』アイシアの言う事はもっともであった。
これが噂に聞いた『聖女の道理』かと、其の場にいる学生達は思った。
「君との婚約を解消する。」
「そんな…… 」
婚約を解消を聞いたアイシアは、両手を口元にかざした。可愛らしい顔の大きな褐色の瞳が、より大きく開く。
さわさわと、春の風が彩り始めた若葉を揺らす。柔らかいアイシアの茶色の髪をも、揺らした。
昼休みのさなか、中庭には沢山の学生達が遠巻きに彼らを見ている。
「彼女は僕がいないと駄目なんだ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
男に寄り添う女は、泣きながら男の腕に縋り付いている。
「君は、僕がいなくても強いから1人でも大丈夫だよね。」
心無い言葉。
彼はガリオン。金の髪・青い目の優男、ブックス国の王族の血を引く公爵家の者だ。そして隣に縋り付いている彼女は共に勉学に勤しんできた、侯爵家のアンネ。柔らかい赤毛のか弱い令嬢だ。
アイシアは今、隣の国ペンシルに彼等共々留学に来ている。仲睦まじかった二人は、今別れの時を迎えようとしている。
ゴッ!!
「ぐっバァ!! 」
「大丈夫なわけ、ないわーー!! 」
口から白いものを吐き出しながら、ガリオンが其の場から飛んだ。アイシアの右ストレート『聖女の鉄槌』が、ガリオンの左頬に炸裂したのだ。
「キャあぁああーー!! ガリオン様!! 」
アンネが悲鳴をあげる。
「言うにことかいて、なに抜かしてやがる!! このぼけぇがっ!! 」
近くの木に打ち付けられたガリオンに向かってずんずんとアイシアは歩く。
「強い? 強がって見せるに決まってるやろ!! それが分からんのかぁ、このあほがっ!! 」
アイシアはガリオンの胸ぐらを掴んで引き寄せた。小柄のアイシアの筋力強化で引き上げられたガリオンは地に膝を付くかつかないかの微妙なぶら下がり方をしていた。
既にガリオン怪我は治っている。聖女アイシア回復魔法だ。
「浮気したのは己やろ? 何、人様の所為にしてんや。このくずがっ。」
可愛らしい見た目のアイシアから、どすの利いた声が其の場に木霊する。その大きくて憂いを帯びたアイシアの瞳が、細められている。
「人様のいるところで何言ってんやわれ、脳みそうじでもわいてんか? ああん? 」
ぶら下がったガリオンに、アイシアの小顔な顔が近づけられる。
「こ、このような場所で、言ってしまってす、すみません!! 」
ガリオンは震えながら謝った。
「『人の心はままならない』其れは分かるわ。婚約者がいても、恋人がいても、他の人を好きになってしまうこともあるやろう。其れは否定せんわ。」
アイシアは少し寂しそうに微笑んだ。
「だがな、そう言う時はな。道理を通して、誠心誠意謝るもんや。」
アイシアはそのままガリオンの頭を地に押さえつけた。
「地べた這いつくばって、誠心誠意コメツキバッタのようにあたま下げな!! 」
「すみません!! 」
アイシアに手で押さえつけられ地に顔を埋めながら、ガリオンは謝る。
「うん、うん」と、その場で見守っていた野次馬たちはアイシアの言葉にもっともだと頷きながら見ている。
どう考えても、浮気した方が悪い。なのに浮気した者が相手を悪いように言うのはいかがなものか。浮気した者が『誠心誠意謝る』アイシアの言う事はもっともであった。
これが噂に聞いた『聖女の道理』かと、其の場にいる学生達は思った。
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