1 / 8
婚約解消。(王太子)
しおりを挟む
広い舞踏会会場を彼女ミスティア・フォン・ノートン公爵令嬢は、一人歩いていた。流れる銀髪を靡かせながら、美しい肌を真紅のドレスに包み。背筋を伸ばし緑の瞳を前に向け凛とした姿で、会場の真ん中を国王陛下の座する前へと。
婚約者であるこの国の王太子アルフィノ・フォン・ブックスのエスコート無しで。
紳士淑女の見守るなか、ミスティアは国王陛下の前まで進み出る。数段上の玉座に座る王と王妃、その一段下に金髪碧眼の王太子のアルフィノが立っていた。彼の横には、庇護欲をそそる柔らかい茶髪の可愛らしい令嬢が立っている。王太子の側近たちも彼女を守るように立っていた。
彼女の名はアイシア・フォン・ノートン。ミスティアの義理の妹である。彼女の存在が、ミスティアの総てを奪って行ったのだ。
ミスティアは悲しそうに、王太子のアルフィノを見つめた。アルフィノも目を逸らさす、ミスティア見つめる。
「ミスティアよ、そなたとアルフィノとの婚約を此処に解消する。」
「仰せのままに。」
威厳ある国王陛下のお言葉を聞き、ミスティアは静かに頭を下げた。
此れは分かっていたことだ、彼女アイシアが現れた時点で。祝福の儀で、アイシアが『聖女』として女神に選ばれた時点で。
『聖女』となれば高位の貴族の養女となる、それは庶民であっても変わらない。王族との婚姻をスムーズにするために、高位の貴族の養女となり王家と婚姻するのだ。
『聖女』は王家へ嫁ぐ、それは国の昔からの方針であった。故に誰も意義を唱えない。そして『聖女』に年が近く、王家でも一番地位のある王子が婚約者として選ばれる。例え婚約者がいても婚姻していない王子なら、婚約を解消し『聖女』の相手として選ばれる。高位の王子を選ぶのは、王家の『聖女』への敬意の表しでもあった。
アイシアが『聖女』となった時点で、ノートン公爵家への養女は決まり王子の中で一番地位の高い王太子と婚姻をするのは当たり前の事であった。
それ故、ミスティアと王太子アルフィノとの婚約解消は当然であった。貴族であるミスティアが、婚約解消を受け入れるのは仕方がない事である。
王太子は静かにミスティアに近づき、話しかける。
「すまない、ミスティア。国の定めだ、許してくれ。私は王太子としてアイシアと婚姻する。」
「はい、アルフィノ様。分かっておりますわ、此れは国の定め。致し方ないことでございます。」
「ミスティア。」
「アルフィノ様。」
二人は悲しそうに見詰めった。
「此処に余は宣言する。『聖女』アイシアと、王太子アルフィノとの婚約を!! 」
国王陛下が声高らかに、『聖女』と王太子の婚約を宣言した。
「アルフィノさま!! 」
アイシアが声をあげた。
アルフィノはミスティアに哀しい笑顔を残し、アイシアに顔を向ける。
王太子の瞳の色のドレスを左手で掴み、階段を転げるように降りてくる。
その危なっかしさに王太子アルフィノは手を広げた。その腕に吸い込まれるようにアイシアは近寄ってくる。
抱き合う二人を見たくなかったミスティアは顔を逸し、瞳を閉じた。
「アルフィノさま!! 」
「危ないアイシア!! 」
ドゴッ!!
ぎゅるるん!!
ガッ!!
ガッ!!
ガッ!!
ガガガガガガ、ガッ!!
何が、ミスティアの横をすり抜けて行った。
静まり返る会場。
ミスティアは、ゆっくりと目を開けた。
「きゃあぁぁぁぁああ!! 」
ミスティアはすり抜けて行ったものを見て悲鳴をあげた。
婚約者であるこの国の王太子アルフィノ・フォン・ブックスのエスコート無しで。
紳士淑女の見守るなか、ミスティアは国王陛下の前まで進み出る。数段上の玉座に座る王と王妃、その一段下に金髪碧眼の王太子のアルフィノが立っていた。彼の横には、庇護欲をそそる柔らかい茶髪の可愛らしい令嬢が立っている。王太子の側近たちも彼女を守るように立っていた。
彼女の名はアイシア・フォン・ノートン。ミスティアの義理の妹である。彼女の存在が、ミスティアの総てを奪って行ったのだ。
ミスティアは悲しそうに、王太子のアルフィノを見つめた。アルフィノも目を逸らさす、ミスティア見つめる。
「ミスティアよ、そなたとアルフィノとの婚約を此処に解消する。」
「仰せのままに。」
威厳ある国王陛下のお言葉を聞き、ミスティアは静かに頭を下げた。
此れは分かっていたことだ、彼女アイシアが現れた時点で。祝福の儀で、アイシアが『聖女』として女神に選ばれた時点で。
『聖女』となれば高位の貴族の養女となる、それは庶民であっても変わらない。王族との婚姻をスムーズにするために、高位の貴族の養女となり王家と婚姻するのだ。
『聖女』は王家へ嫁ぐ、それは国の昔からの方針であった。故に誰も意義を唱えない。そして『聖女』に年が近く、王家でも一番地位のある王子が婚約者として選ばれる。例え婚約者がいても婚姻していない王子なら、婚約を解消し『聖女』の相手として選ばれる。高位の王子を選ぶのは、王家の『聖女』への敬意の表しでもあった。
アイシアが『聖女』となった時点で、ノートン公爵家への養女は決まり王子の中で一番地位の高い王太子と婚姻をするのは当たり前の事であった。
それ故、ミスティアと王太子アルフィノとの婚約解消は当然であった。貴族であるミスティアが、婚約解消を受け入れるのは仕方がない事である。
王太子は静かにミスティアに近づき、話しかける。
「すまない、ミスティア。国の定めだ、許してくれ。私は王太子としてアイシアと婚姻する。」
「はい、アルフィノ様。分かっておりますわ、此れは国の定め。致し方ないことでございます。」
「ミスティア。」
「アルフィノ様。」
二人は悲しそうに見詰めった。
「此処に余は宣言する。『聖女』アイシアと、王太子アルフィノとの婚約を!! 」
国王陛下が声高らかに、『聖女』と王太子の婚約を宣言した。
「アルフィノさま!! 」
アイシアが声をあげた。
アルフィノはミスティアに哀しい笑顔を残し、アイシアに顔を向ける。
王太子の瞳の色のドレスを左手で掴み、階段を転げるように降りてくる。
その危なっかしさに王太子アルフィノは手を広げた。その腕に吸い込まれるようにアイシアは近寄ってくる。
抱き合う二人を見たくなかったミスティアは顔を逸し、瞳を閉じた。
「アルフィノさま!! 」
「危ないアイシア!! 」
ドゴッ!!
ぎゅるるん!!
ガッ!!
ガッ!!
ガッ!!
ガガガガガガ、ガッ!!
何が、ミスティアの横をすり抜けて行った。
静まり返る会場。
ミスティアは、ゆっくりと目を開けた。
「きゃあぁぁぁぁああ!! 」
ミスティアはすり抜けて行ったものを見て悲鳴をあげた。
53
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。

帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む
リオール
恋愛
言いがかりともとれる事で王太子から婚約破棄・国外追放を言い渡された公爵令嬢。
悔しさを胸に立ち去ろうとした令嬢に聖女が言葉をかけるのだった。
そのとんでもない発言に、ショックを受ける公爵令嬢。
果たして最後にほくそ笑むのは誰なのか──
※全4話

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる