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20 クリス視点(一度目)
しおりを挟むどれだけ悲しくてもいつまでも泣き続けることはできない。私は日が暮れる頃には涙も止まり、ただただアンゼリーヌ様の亡骸を抱き締めていた。
そして思うのだ。
もしも時間が戻せるのであればその時は自分の命を犠牲にしてでもアンゼリーヌ様を守るのにと。ふとその時一つの可能性が頭を過った。
「時間回帰…」
たしか城の図書室で見たことがある。
誰も来ないような図書室の端の端にその本はあった。私は本を読む静かな場所を探していた時にたまたまその本を見つけ手に取ったのだ。そこにはにわかに信じがたいが時間を戻すことができる『時間回帰の魔法』なるものが記されていた。私はそんな魔法など信じていなかったがなんだか気になり結局最後まで読んでしまった。
時間回帰に必要なのは基準となる人の肉体と血。代償は術者の命だ。術式は覚えている。それなら試してみる価値はあるのではないか。
私にはアンゼリーヌ様がいない世界など生きる意味はない。代償が自分の命であることがむしろ好都合だ。成功であればそれでいいし、失敗してもアンゼリーヌ様の後を追うことができる。
迷いはなかった。私は術式を構築していく。そして祈りながら魔法を発動した。
(本当に時が戻るのであれば…アンゼリーヌ様が幸せに生きていけますように)
「時間回帰!…っ!」
魔法を発動した瞬間、身体から魔力が一気に抜けていくのが分かったが、そこで私の意識は途切れたのであった。
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