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第8章
08-199 ゴンダール湾海戦
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高速哨戒艇は、衝撃的な事実を携えて帰還した。
「ソコトラ島には、ヒトがいた。
ヒトの文字で書かれた文書がたくさん見つかった。一部は俺でも読めるよ」
クスタヴィ艇長が持ち帰った資料は、木箱3つ分あった。
「日記ね。
英語で書かれている。
どこの英語なのかはわからないけれど……」
里崎杏提督は、日記をめくる。
クスタヴィ艇長が内容を知りたがる。
「提督、何て書いてある」
「誰かに襲われたみたいね。
ヒト食いではないみたい」
「あぁ、ヒト食いはいなかった。
ティターンか?」
「違うようね。
爆撃されたって書いてある」
「爆撃?
ヒト同士の争いか、あとは手長族か」
「よく調べないと。
ここには飛行機とも、飛行船とも書かれていない」
西ユーラシアから、アフリカ各地への移住が一段落すると、大量に建造した輸送船に余剰が生まれる。
大半は解体されて、街の建設に必要な鉄材になるのだが、王冠湾では違っていた。
長宗元親には個人的な野望があった。
「一度でいいから、豪華客船を造ってみたい」
彼の願望を聞いた加賀谷真梨は「バカじゃないの」と思ったが、そうは言わなかった。
理由はこのフレーズが花山真弓が香野木恵一郎に向けるものだからだ。
「豪華客船?
乗るヒト、いるのかな?」
「いや、クイーン・エリザベスのようなものは無理だが、フェリーよりはずっと快適な船は造れるんだ。
これからは、インド洋の時代だし……」
「インド洋?」
「大西洋は手長族に支配されている。ヒトはアフリカの沿岸をウロチョロするだけ。
だけど、インド洋は違う。
ヒトの海にできる」
「でも、豪華客船はいらないでしょ」
「いや、そのぅ。
小笠原に行ったことある?」
「学生の頃に……」
「おがさわら丸の特等や1等船室くらいの快適さなら……」
「それって、豪華客船じゃないでしょ」
「いや、その~」
「貨客船なら需要があるんじゃない。
里崎さんみたいなヒトばかりじゃないから」
長宗元親は、王冠湾で建造した90メートル級輸送船2隻を買い戻す計画を立てていた。
予算を握るミューズの許可があれば、買い取って、船内を大改装するつもりだ。
90メートル級を選んだ理由は、動力がディーゼル・エレクトリックだからだ。移住における輸送の主力を担った100メートル級は、タービン・エレクトリックだった。
香野木恵一郎は、カルタゴとズラ湾間の輸送力増強を思案していた。
彼は長宗元親の“願望”を渡りに船だと考えた。高速の貨客船は、好都合だ。
ドミヤート地区は半田千早からの報告から、装甲車輌の派遣を検討している。他のヒト属動物と争う意志はないが、友好関係にある現地勢力への支援が必要だと考えていた。
井澤貞之は迷っていた。ドミヤート地区のデュランダル区長から、自走105ミリ榴弾砲2輌の貸与を申し込まれたからだ。
彼の娘からは何も連絡がない。現地勢力と友好関係を結ぶ一方、別の集団との戦闘も発生している。だが、詳細がわからない。
実の娘からも義理の娘からも何も連絡がない。
補給船で帰還したミエリキは、ヴルマンの最高指導者ベアーテにレムリア北部の情勢を詳細に説明していた。
加えて、クレタ島に飛行場跡を発見し、滑走路は整備すれば使えることを報告する。
ベアーテはミエリキの助言に従い、クレタ島への上陸および調査と、ズラ湾との空路開拓に乗り出すことを決める。
西ユーラシアにいたヒト属動物は、北アフリカと西アフリカに移住した。ヒトは、サハラの南端やアトラス山脈東方にもいる。
アフリカに住むヒトの支援だけでは、食料が足りない。移住者による食料生産は、当初計画よりも遅れている。農地の開墾は、簡単ではないのだ。
ベアーテは、半田隼人の言葉を思い出していた。
「緻密な計画は失敗する確率が高い。一歩間違えば、餓死者が出る」
香野木恵一郎の言葉も思い出す。
「東方フルギアは、シルクをどこから手に入れていたんだ。
その謎が解けば、活路が開けるかもしれない」
香野木恵一郎は、補給船が持ち帰った荷に満足していた。
絹などどうでもよかった。コムギ、トウモロコシ、ソルガム、大豆、小豆。
食料がほしかった。当初推定よりも何倍もヒトがいた。結果、食料生産計画が破綻してしまった。
精霊族、鬼神族、トーカ(半龍族)、ギガス(黒魔族)の食料も必要だ。
食料を求めて争いが起こる前に、香野木恵一郎は“実績”を見せなければならない。
絹は無意味ではない。
現在、移住組で最も裕福なグループはフルギアだ。湖水地域は救世主との戦いから立ち直ったばかり、クマンはセロとの戦いの渦中にある。
どことも戦争していないフルギアは裕福だ。絹の買い手はフルギア。フルギア金貨は交易の決め手だ。フルギアに絹を買ってもらい、その収入でレムリアから穀物を買う。
半田隼人が計画したアフリカ移住計画は、香野木恵一郎によって実施された。そして、計画最大の誤算を修正するため、香野木恵一郎は奔走していた。
アルベルティーナは、百瀬未咲によって強制的に帰還させられた。
彼女にとっても、義父であり同時に愛人でもあるブリッドモア辺境伯の容体が気になっていたので、好都合ではあった。
だが、百瀬未咲に妊娠が知られたことは誤算だった。彼女がレムリアに渡った理由は、自身の妊娠を知っていたからだ。
このことが夫である救世主最大の権力者カリーに知られれば、時間と場所を選ばずに殺害しようとするはず。
彼女はレムリアに逃れたのだ。
バンジェル島に滞在し、ブリッドモア辺境伯の看病に明け暮れ、その身は常に監視されていた。
「花山さん、どうする?」
数人での内々の会議は、情報が少なすぎて結論を出せないでいた。
井澤貞之の問いに花山真弓は答えられない。
「105SPを2輌かぁ……。
貸し出しはできるけど、貸し出すだけでいいの?」
長宗元親は、花山真弓の心の内を知っていた。
「出したくても、そんな人手はない」
花山には、出せる人手に心当たりがあった。
「私は?
私は技術系ではないから、セロが動くまでは基本的に暇なんだけど」
長宗が慌てる。
「里崎さんがいないいま、花山さんまでいなくなったら、不安なんて表現じゃなくなる!」
「大丈夫、何かあればすぐに戻ってくるし、奥宮さんと畠野さんもいるから……」
井澤が深く考える。
「香野木さんは、人口が想定よりも数倍多かったことがわかった瞬間から、次の一手を考えていたのだろう。
食料が足りなくなる。
それも、決定的に。
それで、食料の生産高が多そうな土地はどこか探したんだ」
花山はその見方には反対だった。
「それは違うと思うよ。
単純にフルギアがどこからシルクを手に入れたのか、気になっただけだよ。
そもそも、複雑な思考のできるヒトじゃない。興味を持ったら、しつこく探るだけで、その先のことなんて考えていない」
井澤は花山の意見には同意しかねた。だが、それを口に出すほどの確信はなかった。それでも、香野木恵一郎の慧眼であろうことに、疑いはなかった。
「花山さん、どちらにしてもレムリアの情勢は、これからの数年、我々の死活に関わる問題になる」
「だよね。
だから、私が行こうかなって。香野木さんに任せておけないでしょ。頼りないし、いい加減だし、行き当たりばったりだし……」
夏見智子は、少し心配になった。
「子供は?
健昭くんはどうするの?」
「香野木さんに預ける。
たまには親子でいいんじゃない」
「でも健昭くんは……」
「あのヒトがそんなこと気にするわけないじゃない。自分の子かどうかなんて、考えないよ。大雑把なんだから……」
夏見智子が絶句する。
少しの沈黙のあと、井澤が判断する。
「では、花山さんに行ってもらおう。
その代わり、ムーさんには戻ってもらう」
長宗が賛意を表す。
「あぁ、ムーさんがいれば少しは安心だ。
船は用意する。
買い取った余剰船のうち、使いやすそうな船を準備する。
なるべく早く出発できるようにするよ」
花山真弓は、74式戦車の投入を希望したが、現地ではそれが可能な状況ではなかった。
香野木恵一郎は、イタリア本土とシチリアの間にあるメッシーナ海峡の拡幅に心血を注いでいた。アフリカと地続きのシチリア先端を大きく削って、最短3キロしかないこの海峡を8キロの幅にしようという大工事を行っていた。
ティレニア海と東地中海を結ぶ唯一の航路であるメッシーナ海峡は、ドラキュロがアフリカに進出する可能性がある唯一の通路であった。
海峡幅を8キロに広げれば、その危険はほぼなくなる。海峡の流速が速いこともあり、アフリカは安全な土地になる。
この工事の影響から船体幅の広い船は、メッシーナ海峡の通過が難しく、ベルーガの投入が躊躇われた。
また、百瀬未咲からは、山地の道が狭く、車幅の広い車輌は動きにくい、との報告があった。
さらに、オーク(白魔族、創造主)との戦いとは異なり、戦車では防御性能が過大であることもわかった。
里崎杏からは、榴弾砲と迫撃砲の増備を求める連絡もあった。
加賀谷真理は、イギリス製FV433アボットと自衛隊の64式自走105ミリりゅう弾砲をモデルとした自走榴弾砲を生産させていた。
一方、奥宮要介は、この自走砲が装備する砲身長が異なる3種類の105ミリ榴弾砲を完成させていた。
また、これとは別に、クフラック(カナリア諸島)が開発し、比較的多くが製造されている軽量105ミリ榴弾砲の砲架をコピーしていた。この砲の原型はオート・メラーラMod56で、全重が1.3トン以下なので、軽車輌でも牽引可能な軽便性があった。
最大射程は10キロほどと短いが、セロに対しては十分だ。
ただ、砲身長が14口径しかないため、砲口初速が遅く、飛行船への命中が難しい。このことから、花山が装備することに反対していた。
彼女は、砲身長を45口径に統一するよう求めていた。
戦車型と自走砲型があり、違いは装甲の厚さが異なるだけで、外見はほぼ同じ。
車体と砲塔は均質圧延装甲板の溶接で組み立て、セロとの近接戦闘を考慮して、自走砲型の装甲は最大で25ミリ。戦車ほど厚くはないが、装輪装甲車よりは防御性能に優れる。
花山真弓、奥宮要介、加賀谷真梨の3者会談は、用兵、造兵、車体開発の調整が目的だった。
不足が確実視されている食料について、レムリアが切り札的地域であることは、補給船が持ち帰った農産物の豊富さから大きな期待が持たれていた。
コムギはヒトと精霊族が、豆類とトウモロコシは鬼神族が、ソルガムはトーカとギガスが驚喜した。
その状況は、カルタゴから遠く離れた王冠湾でも知られていた。
ただ、レムリアがどんな世界なのか、それをアフリカのヒトは知らない。
香野木恵一郎は“ギガスと交渉できる都合のいい男”から、人口の読み間違いから早晩食糧事情が逼迫するであろうこの世界における“食料の在処を探してくる都合のいい男”になっていた。
斉木五郎は、香野木恵一郎と半田隼人を重ねていた。だが、少しの時間会話しただけで2人の違いがよくわかった。
半田隼人は“共通の敵”を作り出して協力を迫るが、香野木恵一郎は“損得を押し付けて判断を迫る”のだ。
両人とも嫌らしい男だが、斉木五郎はどちらにも魅力を感じていた。
昨日、斉木五郎は香野木恵一郎と一緒にスパルタカスと面会した。
スパルタカスは「食料の生産は、そう簡単には増えないのですよ」と、香野木の申し入れを断る。
香野木はスパルタカスに対して、食料の輸出を迫っていた。
西サハラ湖東岸は、専制体制であったとしても非常に歪な社会で、貴尊市民という支配層が人口の40パーセントにも達していた。
貴族的支配層は通常、人口の5パーセントから7パーセント程度が適当とされている。支配層の膨張は富の集中を疎外し、体制崩壊に結びつく。
だが、西サハラ湖東岸では、労働しない40パーセントの人口を、労働する60パーセントの人口で支えていた。結果、被支配層の困窮は極限状態にあった。
被支配層は解放されはしたが、その後の一歩が踏み出せていないのだ。
同時に働く能力がない40パーセントものヒトは、ただ呆然としている。
早晩、彼らがヒト社会のお荷物になることは明かだった。
「スパルタカスさん、食料を輸出すれば現金収入が得られます。
労働市民と呼ばれていたヒトたちは、豊かになるチャンスを目の前にしているんです。
例えばなんですが、余剰の穀物を政府が買い入れてはどうでしょう。買い入れた穀物は、政府が他国の商人に売るのです。
穀物には相場がありますから、買い叩かれることはありません。
たくさん収穫すれば豊かになれることを、政府が示してください。
農業指導は、斉木さんとお弟子さんが担当してくれます。彼は寒冷化していく西ユーラシアの飢饉を食い止めた農学者です」
斉木五郎が提案をする。
「もしよければなのですが、農業政策に詳しいスタッフを派遣しましょう。
現状、すべての農地は政府が接収したことになっているのですよね」
「サイキさん、その通りです。
自由農民が極端に少なかったし、自由農民は耕作地が少なく、困窮していましたから……」
「その政策がうまくいっていない……」
「そうです。
自由農民は土地を奪われたと、小作農は荘園主が代わっただけだと……。
自由農民は生産意欲をなくし、小作農は考える力を奪われており……」
香野木にも名案があるわけではなかった。
「作物は、売れば儲かる。
そのことを教えないと」
スパルタカスは少し考える。
「サイキさんのお弟子さんを受け入れましょう。このままでは、どうにもならないのですから……」
そして、今日はイサイアスとチュールの2人と会議をしている。
香野木の要求は1つだけ。
「アトラス人と接触して欲しい。
できれば、食料の取り引きができるといいのだが……」
イサイアスは否定的。
「接触は可能だし、交易もできる。
しかし、アトラス人は閉鎖的だ。
決まった街、交易用の街でしか我々とは会わない」
斉木五郎は江戸時代の長崎・出島を想像していた。江戸幕府は、この人工島以外では原則として外国人と接触しなかった。
「その街には、誰でも行けるの?」
イサイアスが即答する。
「サイキ先生、その通りなんだ。交易品があれば、誰でも物々交換ができる。
交易はバーターが基本で、金貨や銀貨では取り引きはしない。
アトラス人側も混乱している様子がある。
本来、交易の街は東岸の自由農民との取り引き市場だった。果物ならブドウ、ナツメ、オレンジなどが東岸から、リンゴ、洋ナシ、イチゴなどが西岸から輸出されていた。
ところが、東岸の社会が極端な専制になると、民衆は輸出どころじゃなくなる。飢えが襲ってきたのだから。
それでも、アトラス人は市場を閉じなかった。
理由はいろいろあると思う。消極的な東岸民衆への支援もその1つ。
荘園から逃亡した労働市民の作物を積極的に受け取っている。
東岸の支配層、貴尊市民の上層部はアトラス人を恐れていたから、この取り引きに介入することはなかった。
が、俺たちが来た。
労働市民は解放され、細々と続いていた市場が一気に活気づく。
アトラス人は状況の変化に対応できていないのだと思う」
斉木は少し考える。
「交易の街に指導者、街長みたいなヒトはいるの?
そもそもアトラス人はヒト?」
チュールが答える。
「マーニからアトラス人との接触を“命令”されていた。
で、行ってみた。交易の街に。
アトラス人は、複数のヒトの近縁種との混血だと思う。
どういう経緯の集団なのか、よくわからないけど、単純なヒトの集団ではない」
斉木が考え込む。
「まずは、交易の街からだね」
香野木が案を出す。
「ピックアップを売りに出したら、どういう反応になると思う?」
チュールが驚く。
「1トン積みと農産物との交換?」
「そう」
イサイアスが頭を抱える。
「ここまで、どうやって新車を運ぶかだ。
自走させたら、立派な中古車になっちまう」
香野木は、イサイアスとチュールの反応に満足していた。
香野木には策があった。
「空輸しよう。
くじらちゃんなら3輌は運べる」
現状、食料の自給が可能なのは、クマンと湖水地域のみ。他の地域は、農地を開墾しているか、最初の作付けをしただけで、収穫を得ていない。
手持ちがつきれば、飢餓が襲ってくる。
特に農地を持たないタザリン地区や王冠湾地区は深刻な食糧危機に陥る。ドミヤート地区のように、酒類、食用油、燃料用など食用でない作物を作っている地区も同様だ。
食糧の確保は、喫緊の問題だ。
だが、現状では、この問題は顕在化していない。食料は十分にあるし、農地の開墾は進んでいる。すべての土木建設機械と農機を投入しているのだ。
だれもが、それほど心配していない。
しかし、現実は違う。ヒトは大規模農地だけを耕していたのではない。家屋の前の小さな畑もその面積を合計すればとんでもない広さになる。
この小規模農地で糧を得ていたのは、人口を掌握されていなかったヒトたちだ。フルギア、ヴルマン、北方人、東方フルギアなど、人口が最も多いグループが、人口を把握していなかった。
この現実が顕在化する前に、香野木恵一郎は“食糧問題”を解決したかった。
穀物価格が跳ね上がり、問題が顕在化すれば、食料を巡る争いが起きる。
実際、穀物価格は上がり始めている。需給バランスは、供給が需要に追いついていない。
西サハラ湖東岸があてにできないのならば、湖水地域とクマン、そしてレムリアを頼るしかない。
斉木五郎は香野木恵一郎の話を聞きながら、背中を冷たい汗が流れていくのを感じていた。
それは、イサイアスとチュールも同じだった。
王冠湾地区の“ヒット商品”には、3品があった。30メートル級高速客船、2トン積みオート三輪、4人乗りオートジャイロ。
30メートル級高速客船は、長宗元親が予測した通り、島嶼間輸送で多用されている。小型船用高速ディーゼルがないので、車輌用6気筒ディールを4基搭載する。
2トン積みオート三輪は、バーハンドルで屋根はキャンバス張り、簡単なドアがある。
4人乗りオートジャイロは当初、クマンが軍用として採用したが、救急用途での利用が広がっている。
ヘリコプターと比べるとかなり安価なことから、僻地からの急患輸送で威力を発揮している。
現状、どうにか食料を買う収入があるが、南島南部内陸に移住した精霊族の食糧がつきれば、食料調達が困難であれば飢餓が現実になる。
その理屈は、花山真弓にも理解できる。彼女としては、香野木恵一郎の計略には加担したくはないが、新たな食料調達地の最重要地であるレムリアを確保することは彼女と彼女の子にとっても重要なことだった。
しかも、レムリアからは少量ではあるが食料の輸入に成功している。西サハラ湖東岸は穀物増産の目処が立たず、西岸は情勢さえ不明なのだ。
現時点でのレムリアの重要性は、飛び抜けている。
香野木恵一郎は、レムリア派遣部隊の司令官が花山真弓だと聞き、やや慌てた。
王冠湾に移住してきた最大のグループは、結果的にティッシュモック出身者だった。ティッシュモックはフルギアの支配下にあった街だが、ここに自衛隊とポーランド陸軍の出身者が住み着いた。
自衛隊は施設部隊で、ポーランド陸軍は輸送部隊だった。どちらも戦闘が専門ではなかったが、強力な武器を持っていたことからティッシュモックにおける重要な地位を得ていた。
時を経て世代が変わると、旧住民にとって彼ら異邦人の存在が邪魔になる。フルギアが帝国ではなくなり、侵略・略奪の脅威がなくなると、なおさらだった。
そのような状況だったことから、自衛隊とポーランド陸軍の出身者家族や縁故者が、王冠湾にやって来た。多くが第2世代、第3世代だったが、少数だが移住第1世代もいた。
最初は自衛隊関係の200人。彼らを頼ってポーランド系も移住する。最終的には系統に関係なく、非主流派の大半が王冠湾にやって来た。
その数は2000と大所帯だった。
このグループは第1世代の一部が存命で、第2世代が指導的地位にいる。第1世代がこの世界に持ち込んだ機材の多くが残っており、自衛隊やポーランド陸軍の装輪装甲車も健在だった。
花山真弓は、レムリア派遣隊の編制を急いだ。理由は2つ。
現地の最大武装勢力であるティターンが、穀物購入の邪魔を始めたこと。
レムリア中北部西岸北側の諸部族が、武装蜂起したこと。
この蜂起は過去に例がない規模で、諸部族側は1万に近い戦力を集めた。そのうちの半分は子供や老人で、実質的に戦える男女は5000にも満たないと推測されている。
それでも、中北部と北部においては最大規模の蜂起だった。
「クスタヴィ艇長が交戦したとは本当か?」
里崎杏は、珍しく慌てていた。
北部西岸北側の小部族レミが塩を売りたいと打診してきた。彼らは陸路で海塩を運び、交易所は全量を買い取った。
半分は探検船キヌエティが買い取ったが、残りの半分は交易所にやって来た内陸に住む部族の手に渡った。
塩は必須のミネラルだ。
レミ族の行為にアリギュラの総督が激怒。軍船5隻をレミ族の住地であるゴンダール湾に派遣する。
レミ族には、ティターンに対して他意があった。税と称して大量の塩を徴収されていたからだ。ティターンの徴税官が軍を伴ってやってくると、妻や娘は一夜の慰みものにされた。
逆らえば、容赦なく殺された。部族長は不機嫌な顔をしたと難癖を付けられ、幼い孫娘の首をはねられた。
面と向かって逆らえないが、溜飲を少しだけ下げるつもりで、ルテニ族と取り引きをした。
その結果が、軍船5隻の派遣だった。
軍船5隻派遣の報は、レミ族やルテニ族と縁が深いモリニ族からではなく、アリギュラの住民からだった。
このとき、里崎杏はアリギュラに“レジスタンス”組織が存在することを知る。
何騎もが引き継ぎながら350キロを走り、口伝で伝えてきた。
「レミ族が殺される。
何とかしてあげてくれ!」
男は疲労から泡を吹き、声を絞り出した。
「アリギュラからレミ族の村まで800キロはあるね。
ガレー船の速力って、どのくらい?」
カート・タイタンが答える。
「最大で7ノット、持続的には4ノット。
最短で8日、10日あればレミ族の村があるゴンダール湾に着く」
「使者がアリギュラを発してから?」
里崎の問いにアクシャイが答える。
「5日前」
「時間がないね。
クスタヴィ艇長、どのくらいで出られる?」
「燃料の補給だけです。
提督、もし戦闘になったら……」
「仕方ありません。
使者の言葉通り、アリギュラを発した船団がレミ族殲滅を任務としているならば、否応なく戦闘になるでしょう。
ですが、積極的な攻撃は控えるように。
交戦法規は厳守です。
こちらが先に着くはずです。できるだけ、威嚇射撃程度にとどめて、解決するように」
クスタヴィ艇長は若いが思慮深く、温厚篤実な人物だ。北方人特有のガタイのよさと濃い髭から、凶暴そうに見えるが、外見と中身は違う。
結果的に里崎杏の読みは外れる。ゴンダール湾までは500キロ程度。高速哨戒艇ならば、巡航で13時間から15時間で到着する。
5日前に発していたとしても、到着まで最短でもさらに3日はかかる。
明日の早朝に発しても、高速哨戒艇はティターンの船団より1日以上早く到着する。
だが、計算違いがあった。
アリギュラを発した早馬は、確かに5日後にズラ村に着いた。
だが、アリギュラのレジスタンスがレミ族討伐の情報を知ったのは、船団が出発した3日後だった。
つまり、ズラ村がレミ族討伐を知ったのは、船団出発から8日後のことだった。
不運もあった。
アフリカとレムリアを分ける狭い海は、無風であることが多い。だから、櫂漕するガレー船が有効なのだ。
だが、偶然、航海中の数日間、南から北に帆走によい風が吹く。5隻のガレー船は風の助けを借りて、北進が速かった。
高速哨戒艇が弧状の砂浜が美しいゴンダール湾に入ると、すでに5隻のガレー船が湾内にいた。
そのうち1隻は砂浜に乗り上げており、兵が剣を抜いて上陸を始めていた。
残り4隻のうち1隻は、木製の桟橋に接舷しようとしており、他の3隻は海上にいる。
レミ族の族長が投げた銛は、突進してきたティターン兵の胸を貫く。
だが、これで族長には武器がなくなった。銛を手にした男たちはまだよかった。
多くは櫂を手にするか、棒きれを振り回す程度の抵抗しかできない。漁師が日々使うナイフを抜くものもいるが、それでは長剣と戦えない。
クスタヴィ艇長は判断を迫られる。浜辺まで1キロ以上ある。
すでに乱戦になっており、レミ族が押されている。そして、高速哨戒艇は攻撃されていない。
少年がティターン兵に斬られる。
桟橋に接舷したガレー船からティターン兵が飛び出し、一部は砂浜を走っている。
数分で、辛うじて防戦しているレミ族の前衛に至る。ティターン兵は無差別殺戮をしている。
この海域のことがわからず、水深を知らない。陸に近付きすぎると座礁の危険がある。
「主砲を撃て。
上陸しているティターン兵を狙え」
クスタヴィ艇長は高速哨戒艇の推進力を止めると、主砲の発射を命じる。
40ミリ機関砲弾が浜辺に着弾する。
戦いは5分で決着する。
浜辺に乗り上げていたガレー船は、4発被弾して全損。浜辺を走っていたティターン兵は、榴弾を浴びて動かなくなった。
海上にいた3隻のガレー船は、状況を把握できない。帆も櫂もない船が現れ、レミ族に味方したのだ。
しかも、とんでもない速度で動く。
3隻の周囲を回っただけで、ガレー船は大きく揺れ、転覆しそうになる。
さらに、3隻の帆柱に機関砲弾が発射される。
3隻は逃走に入る。
それを見て、上陸していたティターン兵は桟橋のガレー船に向かって走る。
退却だ。
それをレミ族が追い、桟橋のティターン船は上陸兵を待たずに離岸する。
クスタヴィ艇長は、逃げるティターン船を追撃しなかったが、漕ぎ手が必死になるよう、十分な威嚇射撃を行った。
1発は1隻のごく至近に落ち、榴弾は片舷の櫂の3分の1を破壊する。
レミ族の殲滅は回避できたが、虐殺は行われてしまった。同時に、逃げ遅れたティターン兵に対する容赦ない報復は凄惨だった。
事後報告を受けた里崎杏は、レミ族にどう弔意を表せばいいのか思い悩んでいた。
燃料補給と同時に出航させ、座礁の危険がある夜間は適当な入り江に停泊させればよかった。
彼女にとっては、悔いの残る結果だった。
「ソコトラ島には、ヒトがいた。
ヒトの文字で書かれた文書がたくさん見つかった。一部は俺でも読めるよ」
クスタヴィ艇長が持ち帰った資料は、木箱3つ分あった。
「日記ね。
英語で書かれている。
どこの英語なのかはわからないけれど……」
里崎杏提督は、日記をめくる。
クスタヴィ艇長が内容を知りたがる。
「提督、何て書いてある」
「誰かに襲われたみたいね。
ヒト食いではないみたい」
「あぁ、ヒト食いはいなかった。
ティターンか?」
「違うようね。
爆撃されたって書いてある」
「爆撃?
ヒト同士の争いか、あとは手長族か」
「よく調べないと。
ここには飛行機とも、飛行船とも書かれていない」
西ユーラシアから、アフリカ各地への移住が一段落すると、大量に建造した輸送船に余剰が生まれる。
大半は解体されて、街の建設に必要な鉄材になるのだが、王冠湾では違っていた。
長宗元親には個人的な野望があった。
「一度でいいから、豪華客船を造ってみたい」
彼の願望を聞いた加賀谷真梨は「バカじゃないの」と思ったが、そうは言わなかった。
理由はこのフレーズが花山真弓が香野木恵一郎に向けるものだからだ。
「豪華客船?
乗るヒト、いるのかな?」
「いや、クイーン・エリザベスのようなものは無理だが、フェリーよりはずっと快適な船は造れるんだ。
これからは、インド洋の時代だし……」
「インド洋?」
「大西洋は手長族に支配されている。ヒトはアフリカの沿岸をウロチョロするだけ。
だけど、インド洋は違う。
ヒトの海にできる」
「でも、豪華客船はいらないでしょ」
「いや、そのぅ。
小笠原に行ったことある?」
「学生の頃に……」
「おがさわら丸の特等や1等船室くらいの快適さなら……」
「それって、豪華客船じゃないでしょ」
「いや、その~」
「貨客船なら需要があるんじゃない。
里崎さんみたいなヒトばかりじゃないから」
長宗元親は、王冠湾で建造した90メートル級輸送船2隻を買い戻す計画を立てていた。
予算を握るミューズの許可があれば、買い取って、船内を大改装するつもりだ。
90メートル級を選んだ理由は、動力がディーゼル・エレクトリックだからだ。移住における輸送の主力を担った100メートル級は、タービン・エレクトリックだった。
香野木恵一郎は、カルタゴとズラ湾間の輸送力増強を思案していた。
彼は長宗元親の“願望”を渡りに船だと考えた。高速の貨客船は、好都合だ。
ドミヤート地区は半田千早からの報告から、装甲車輌の派遣を検討している。他のヒト属動物と争う意志はないが、友好関係にある現地勢力への支援が必要だと考えていた。
井澤貞之は迷っていた。ドミヤート地区のデュランダル区長から、自走105ミリ榴弾砲2輌の貸与を申し込まれたからだ。
彼の娘からは何も連絡がない。現地勢力と友好関係を結ぶ一方、別の集団との戦闘も発生している。だが、詳細がわからない。
実の娘からも義理の娘からも何も連絡がない。
補給船で帰還したミエリキは、ヴルマンの最高指導者ベアーテにレムリア北部の情勢を詳細に説明していた。
加えて、クレタ島に飛行場跡を発見し、滑走路は整備すれば使えることを報告する。
ベアーテはミエリキの助言に従い、クレタ島への上陸および調査と、ズラ湾との空路開拓に乗り出すことを決める。
西ユーラシアにいたヒト属動物は、北アフリカと西アフリカに移住した。ヒトは、サハラの南端やアトラス山脈東方にもいる。
アフリカに住むヒトの支援だけでは、食料が足りない。移住者による食料生産は、当初計画よりも遅れている。農地の開墾は、簡単ではないのだ。
ベアーテは、半田隼人の言葉を思い出していた。
「緻密な計画は失敗する確率が高い。一歩間違えば、餓死者が出る」
香野木恵一郎の言葉も思い出す。
「東方フルギアは、シルクをどこから手に入れていたんだ。
その謎が解けば、活路が開けるかもしれない」
香野木恵一郎は、補給船が持ち帰った荷に満足していた。
絹などどうでもよかった。コムギ、トウモロコシ、ソルガム、大豆、小豆。
食料がほしかった。当初推定よりも何倍もヒトがいた。結果、食料生産計画が破綻してしまった。
精霊族、鬼神族、トーカ(半龍族)、ギガス(黒魔族)の食料も必要だ。
食料を求めて争いが起こる前に、香野木恵一郎は“実績”を見せなければならない。
絹は無意味ではない。
現在、移住組で最も裕福なグループはフルギアだ。湖水地域は救世主との戦いから立ち直ったばかり、クマンはセロとの戦いの渦中にある。
どことも戦争していないフルギアは裕福だ。絹の買い手はフルギア。フルギア金貨は交易の決め手だ。フルギアに絹を買ってもらい、その収入でレムリアから穀物を買う。
半田隼人が計画したアフリカ移住計画は、香野木恵一郎によって実施された。そして、計画最大の誤算を修正するため、香野木恵一郎は奔走していた。
アルベルティーナは、百瀬未咲によって強制的に帰還させられた。
彼女にとっても、義父であり同時に愛人でもあるブリッドモア辺境伯の容体が気になっていたので、好都合ではあった。
だが、百瀬未咲に妊娠が知られたことは誤算だった。彼女がレムリアに渡った理由は、自身の妊娠を知っていたからだ。
このことが夫である救世主最大の権力者カリーに知られれば、時間と場所を選ばずに殺害しようとするはず。
彼女はレムリアに逃れたのだ。
バンジェル島に滞在し、ブリッドモア辺境伯の看病に明け暮れ、その身は常に監視されていた。
「花山さん、どうする?」
数人での内々の会議は、情報が少なすぎて結論を出せないでいた。
井澤貞之の問いに花山真弓は答えられない。
「105SPを2輌かぁ……。
貸し出しはできるけど、貸し出すだけでいいの?」
長宗元親は、花山真弓の心の内を知っていた。
「出したくても、そんな人手はない」
花山には、出せる人手に心当たりがあった。
「私は?
私は技術系ではないから、セロが動くまでは基本的に暇なんだけど」
長宗が慌てる。
「里崎さんがいないいま、花山さんまでいなくなったら、不安なんて表現じゃなくなる!」
「大丈夫、何かあればすぐに戻ってくるし、奥宮さんと畠野さんもいるから……」
井澤が深く考える。
「香野木さんは、人口が想定よりも数倍多かったことがわかった瞬間から、次の一手を考えていたのだろう。
食料が足りなくなる。
それも、決定的に。
それで、食料の生産高が多そうな土地はどこか探したんだ」
花山はその見方には反対だった。
「それは違うと思うよ。
単純にフルギアがどこからシルクを手に入れたのか、気になっただけだよ。
そもそも、複雑な思考のできるヒトじゃない。興味を持ったら、しつこく探るだけで、その先のことなんて考えていない」
井澤は花山の意見には同意しかねた。だが、それを口に出すほどの確信はなかった。それでも、香野木恵一郎の慧眼であろうことに、疑いはなかった。
「花山さん、どちらにしてもレムリアの情勢は、これからの数年、我々の死活に関わる問題になる」
「だよね。
だから、私が行こうかなって。香野木さんに任せておけないでしょ。頼りないし、いい加減だし、行き当たりばったりだし……」
夏見智子は、少し心配になった。
「子供は?
健昭くんはどうするの?」
「香野木さんに預ける。
たまには親子でいいんじゃない」
「でも健昭くんは……」
「あのヒトがそんなこと気にするわけないじゃない。自分の子かどうかなんて、考えないよ。大雑把なんだから……」
夏見智子が絶句する。
少しの沈黙のあと、井澤が判断する。
「では、花山さんに行ってもらおう。
その代わり、ムーさんには戻ってもらう」
長宗が賛意を表す。
「あぁ、ムーさんがいれば少しは安心だ。
船は用意する。
買い取った余剰船のうち、使いやすそうな船を準備する。
なるべく早く出発できるようにするよ」
花山真弓は、74式戦車の投入を希望したが、現地ではそれが可能な状況ではなかった。
香野木恵一郎は、イタリア本土とシチリアの間にあるメッシーナ海峡の拡幅に心血を注いでいた。アフリカと地続きのシチリア先端を大きく削って、最短3キロしかないこの海峡を8キロの幅にしようという大工事を行っていた。
ティレニア海と東地中海を結ぶ唯一の航路であるメッシーナ海峡は、ドラキュロがアフリカに進出する可能性がある唯一の通路であった。
海峡幅を8キロに広げれば、その危険はほぼなくなる。海峡の流速が速いこともあり、アフリカは安全な土地になる。
この工事の影響から船体幅の広い船は、メッシーナ海峡の通過が難しく、ベルーガの投入が躊躇われた。
また、百瀬未咲からは、山地の道が狭く、車幅の広い車輌は動きにくい、との報告があった。
さらに、オーク(白魔族、創造主)との戦いとは異なり、戦車では防御性能が過大であることもわかった。
里崎杏からは、榴弾砲と迫撃砲の増備を求める連絡もあった。
加賀谷真理は、イギリス製FV433アボットと自衛隊の64式自走105ミリりゅう弾砲をモデルとした自走榴弾砲を生産させていた。
一方、奥宮要介は、この自走砲が装備する砲身長が異なる3種類の105ミリ榴弾砲を完成させていた。
また、これとは別に、クフラック(カナリア諸島)が開発し、比較的多くが製造されている軽量105ミリ榴弾砲の砲架をコピーしていた。この砲の原型はオート・メラーラMod56で、全重が1.3トン以下なので、軽車輌でも牽引可能な軽便性があった。
最大射程は10キロほどと短いが、セロに対しては十分だ。
ただ、砲身長が14口径しかないため、砲口初速が遅く、飛行船への命中が難しい。このことから、花山が装備することに反対していた。
彼女は、砲身長を45口径に統一するよう求めていた。
戦車型と自走砲型があり、違いは装甲の厚さが異なるだけで、外見はほぼ同じ。
車体と砲塔は均質圧延装甲板の溶接で組み立て、セロとの近接戦闘を考慮して、自走砲型の装甲は最大で25ミリ。戦車ほど厚くはないが、装輪装甲車よりは防御性能に優れる。
花山真弓、奥宮要介、加賀谷真梨の3者会談は、用兵、造兵、車体開発の調整が目的だった。
不足が確実視されている食料について、レムリアが切り札的地域であることは、補給船が持ち帰った農産物の豊富さから大きな期待が持たれていた。
コムギはヒトと精霊族が、豆類とトウモロコシは鬼神族が、ソルガムはトーカとギガスが驚喜した。
その状況は、カルタゴから遠く離れた王冠湾でも知られていた。
ただ、レムリアがどんな世界なのか、それをアフリカのヒトは知らない。
香野木恵一郎は“ギガスと交渉できる都合のいい男”から、人口の読み間違いから早晩食糧事情が逼迫するであろうこの世界における“食料の在処を探してくる都合のいい男”になっていた。
斉木五郎は、香野木恵一郎と半田隼人を重ねていた。だが、少しの時間会話しただけで2人の違いがよくわかった。
半田隼人は“共通の敵”を作り出して協力を迫るが、香野木恵一郎は“損得を押し付けて判断を迫る”のだ。
両人とも嫌らしい男だが、斉木五郎はどちらにも魅力を感じていた。
昨日、斉木五郎は香野木恵一郎と一緒にスパルタカスと面会した。
スパルタカスは「食料の生産は、そう簡単には増えないのですよ」と、香野木の申し入れを断る。
香野木はスパルタカスに対して、食料の輸出を迫っていた。
西サハラ湖東岸は、専制体制であったとしても非常に歪な社会で、貴尊市民という支配層が人口の40パーセントにも達していた。
貴族的支配層は通常、人口の5パーセントから7パーセント程度が適当とされている。支配層の膨張は富の集中を疎外し、体制崩壊に結びつく。
だが、西サハラ湖東岸では、労働しない40パーセントの人口を、労働する60パーセントの人口で支えていた。結果、被支配層の困窮は極限状態にあった。
被支配層は解放されはしたが、その後の一歩が踏み出せていないのだ。
同時に働く能力がない40パーセントものヒトは、ただ呆然としている。
早晩、彼らがヒト社会のお荷物になることは明かだった。
「スパルタカスさん、食料を輸出すれば現金収入が得られます。
労働市民と呼ばれていたヒトたちは、豊かになるチャンスを目の前にしているんです。
例えばなんですが、余剰の穀物を政府が買い入れてはどうでしょう。買い入れた穀物は、政府が他国の商人に売るのです。
穀物には相場がありますから、買い叩かれることはありません。
たくさん収穫すれば豊かになれることを、政府が示してください。
農業指導は、斉木さんとお弟子さんが担当してくれます。彼は寒冷化していく西ユーラシアの飢饉を食い止めた農学者です」
斉木五郎が提案をする。
「もしよければなのですが、農業政策に詳しいスタッフを派遣しましょう。
現状、すべての農地は政府が接収したことになっているのですよね」
「サイキさん、その通りです。
自由農民が極端に少なかったし、自由農民は耕作地が少なく、困窮していましたから……」
「その政策がうまくいっていない……」
「そうです。
自由農民は土地を奪われたと、小作農は荘園主が代わっただけだと……。
自由農民は生産意欲をなくし、小作農は考える力を奪われており……」
香野木にも名案があるわけではなかった。
「作物は、売れば儲かる。
そのことを教えないと」
スパルタカスは少し考える。
「サイキさんのお弟子さんを受け入れましょう。このままでは、どうにもならないのですから……」
そして、今日はイサイアスとチュールの2人と会議をしている。
香野木の要求は1つだけ。
「アトラス人と接触して欲しい。
できれば、食料の取り引きができるといいのだが……」
イサイアスは否定的。
「接触は可能だし、交易もできる。
しかし、アトラス人は閉鎖的だ。
決まった街、交易用の街でしか我々とは会わない」
斉木五郎は江戸時代の長崎・出島を想像していた。江戸幕府は、この人工島以外では原則として外国人と接触しなかった。
「その街には、誰でも行けるの?」
イサイアスが即答する。
「サイキ先生、その通りなんだ。交易品があれば、誰でも物々交換ができる。
交易はバーターが基本で、金貨や銀貨では取り引きはしない。
アトラス人側も混乱している様子がある。
本来、交易の街は東岸の自由農民との取り引き市場だった。果物ならブドウ、ナツメ、オレンジなどが東岸から、リンゴ、洋ナシ、イチゴなどが西岸から輸出されていた。
ところが、東岸の社会が極端な専制になると、民衆は輸出どころじゃなくなる。飢えが襲ってきたのだから。
それでも、アトラス人は市場を閉じなかった。
理由はいろいろあると思う。消極的な東岸民衆への支援もその1つ。
荘園から逃亡した労働市民の作物を積極的に受け取っている。
東岸の支配層、貴尊市民の上層部はアトラス人を恐れていたから、この取り引きに介入することはなかった。
が、俺たちが来た。
労働市民は解放され、細々と続いていた市場が一気に活気づく。
アトラス人は状況の変化に対応できていないのだと思う」
斉木は少し考える。
「交易の街に指導者、街長みたいなヒトはいるの?
そもそもアトラス人はヒト?」
チュールが答える。
「マーニからアトラス人との接触を“命令”されていた。
で、行ってみた。交易の街に。
アトラス人は、複数のヒトの近縁種との混血だと思う。
どういう経緯の集団なのか、よくわからないけど、単純なヒトの集団ではない」
斉木が考え込む。
「まずは、交易の街からだね」
香野木が案を出す。
「ピックアップを売りに出したら、どういう反応になると思う?」
チュールが驚く。
「1トン積みと農産物との交換?」
「そう」
イサイアスが頭を抱える。
「ここまで、どうやって新車を運ぶかだ。
自走させたら、立派な中古車になっちまう」
香野木は、イサイアスとチュールの反応に満足していた。
香野木には策があった。
「空輸しよう。
くじらちゃんなら3輌は運べる」
現状、食料の自給が可能なのは、クマンと湖水地域のみ。他の地域は、農地を開墾しているか、最初の作付けをしただけで、収穫を得ていない。
手持ちがつきれば、飢餓が襲ってくる。
特に農地を持たないタザリン地区や王冠湾地区は深刻な食糧危機に陥る。ドミヤート地区のように、酒類、食用油、燃料用など食用でない作物を作っている地区も同様だ。
食糧の確保は、喫緊の問題だ。
だが、現状では、この問題は顕在化していない。食料は十分にあるし、農地の開墾は進んでいる。すべての土木建設機械と農機を投入しているのだ。
だれもが、それほど心配していない。
しかし、現実は違う。ヒトは大規模農地だけを耕していたのではない。家屋の前の小さな畑もその面積を合計すればとんでもない広さになる。
この小規模農地で糧を得ていたのは、人口を掌握されていなかったヒトたちだ。フルギア、ヴルマン、北方人、東方フルギアなど、人口が最も多いグループが、人口を把握していなかった。
この現実が顕在化する前に、香野木恵一郎は“食糧問題”を解決したかった。
穀物価格が跳ね上がり、問題が顕在化すれば、食料を巡る争いが起きる。
実際、穀物価格は上がり始めている。需給バランスは、供給が需要に追いついていない。
西サハラ湖東岸があてにできないのならば、湖水地域とクマン、そしてレムリアを頼るしかない。
斉木五郎は香野木恵一郎の話を聞きながら、背中を冷たい汗が流れていくのを感じていた。
それは、イサイアスとチュールも同じだった。
王冠湾地区の“ヒット商品”には、3品があった。30メートル級高速客船、2トン積みオート三輪、4人乗りオートジャイロ。
30メートル級高速客船は、長宗元親が予測した通り、島嶼間輸送で多用されている。小型船用高速ディーゼルがないので、車輌用6気筒ディールを4基搭載する。
2トン積みオート三輪は、バーハンドルで屋根はキャンバス張り、簡単なドアがある。
4人乗りオートジャイロは当初、クマンが軍用として採用したが、救急用途での利用が広がっている。
ヘリコプターと比べるとかなり安価なことから、僻地からの急患輸送で威力を発揮している。
現状、どうにか食料を買う収入があるが、南島南部内陸に移住した精霊族の食糧がつきれば、食料調達が困難であれば飢餓が現実になる。
その理屈は、花山真弓にも理解できる。彼女としては、香野木恵一郎の計略には加担したくはないが、新たな食料調達地の最重要地であるレムリアを確保することは彼女と彼女の子にとっても重要なことだった。
しかも、レムリアからは少量ではあるが食料の輸入に成功している。西サハラ湖東岸は穀物増産の目処が立たず、西岸は情勢さえ不明なのだ。
現時点でのレムリアの重要性は、飛び抜けている。
香野木恵一郎は、レムリア派遣部隊の司令官が花山真弓だと聞き、やや慌てた。
王冠湾に移住してきた最大のグループは、結果的にティッシュモック出身者だった。ティッシュモックはフルギアの支配下にあった街だが、ここに自衛隊とポーランド陸軍の出身者が住み着いた。
自衛隊は施設部隊で、ポーランド陸軍は輸送部隊だった。どちらも戦闘が専門ではなかったが、強力な武器を持っていたことからティッシュモックにおける重要な地位を得ていた。
時を経て世代が変わると、旧住民にとって彼ら異邦人の存在が邪魔になる。フルギアが帝国ではなくなり、侵略・略奪の脅威がなくなると、なおさらだった。
そのような状況だったことから、自衛隊とポーランド陸軍の出身者家族や縁故者が、王冠湾にやって来た。多くが第2世代、第3世代だったが、少数だが移住第1世代もいた。
最初は自衛隊関係の200人。彼らを頼ってポーランド系も移住する。最終的には系統に関係なく、非主流派の大半が王冠湾にやって来た。
その数は2000と大所帯だった。
このグループは第1世代の一部が存命で、第2世代が指導的地位にいる。第1世代がこの世界に持ち込んだ機材の多くが残っており、自衛隊やポーランド陸軍の装輪装甲車も健在だった。
花山真弓は、レムリア派遣隊の編制を急いだ。理由は2つ。
現地の最大武装勢力であるティターンが、穀物購入の邪魔を始めたこと。
レムリア中北部西岸北側の諸部族が、武装蜂起したこと。
この蜂起は過去に例がない規模で、諸部族側は1万に近い戦力を集めた。そのうちの半分は子供や老人で、実質的に戦える男女は5000にも満たないと推測されている。
それでも、中北部と北部においては最大規模の蜂起だった。
「クスタヴィ艇長が交戦したとは本当か?」
里崎杏は、珍しく慌てていた。
北部西岸北側の小部族レミが塩を売りたいと打診してきた。彼らは陸路で海塩を運び、交易所は全量を買い取った。
半分は探検船キヌエティが買い取ったが、残りの半分は交易所にやって来た内陸に住む部族の手に渡った。
塩は必須のミネラルだ。
レミ族の行為にアリギュラの総督が激怒。軍船5隻をレミ族の住地であるゴンダール湾に派遣する。
レミ族には、ティターンに対して他意があった。税と称して大量の塩を徴収されていたからだ。ティターンの徴税官が軍を伴ってやってくると、妻や娘は一夜の慰みものにされた。
逆らえば、容赦なく殺された。部族長は不機嫌な顔をしたと難癖を付けられ、幼い孫娘の首をはねられた。
面と向かって逆らえないが、溜飲を少しだけ下げるつもりで、ルテニ族と取り引きをした。
その結果が、軍船5隻の派遣だった。
軍船5隻派遣の報は、レミ族やルテニ族と縁が深いモリニ族からではなく、アリギュラの住民からだった。
このとき、里崎杏はアリギュラに“レジスタンス”組織が存在することを知る。
何騎もが引き継ぎながら350キロを走り、口伝で伝えてきた。
「レミ族が殺される。
何とかしてあげてくれ!」
男は疲労から泡を吹き、声を絞り出した。
「アリギュラからレミ族の村まで800キロはあるね。
ガレー船の速力って、どのくらい?」
カート・タイタンが答える。
「最大で7ノット、持続的には4ノット。
最短で8日、10日あればレミ族の村があるゴンダール湾に着く」
「使者がアリギュラを発してから?」
里崎の問いにアクシャイが答える。
「5日前」
「時間がないね。
クスタヴィ艇長、どのくらいで出られる?」
「燃料の補給だけです。
提督、もし戦闘になったら……」
「仕方ありません。
使者の言葉通り、アリギュラを発した船団がレミ族殲滅を任務としているならば、否応なく戦闘になるでしょう。
ですが、積極的な攻撃は控えるように。
交戦法規は厳守です。
こちらが先に着くはずです。できるだけ、威嚇射撃程度にとどめて、解決するように」
クスタヴィ艇長は若いが思慮深く、温厚篤実な人物だ。北方人特有のガタイのよさと濃い髭から、凶暴そうに見えるが、外見と中身は違う。
結果的に里崎杏の読みは外れる。ゴンダール湾までは500キロ程度。高速哨戒艇ならば、巡航で13時間から15時間で到着する。
5日前に発していたとしても、到着まで最短でもさらに3日はかかる。
明日の早朝に発しても、高速哨戒艇はティターンの船団より1日以上早く到着する。
だが、計算違いがあった。
アリギュラを発した早馬は、確かに5日後にズラ村に着いた。
だが、アリギュラのレジスタンスがレミ族討伐の情報を知ったのは、船団が出発した3日後だった。
つまり、ズラ村がレミ族討伐を知ったのは、船団出発から8日後のことだった。
不運もあった。
アフリカとレムリアを分ける狭い海は、無風であることが多い。だから、櫂漕するガレー船が有効なのだ。
だが、偶然、航海中の数日間、南から北に帆走によい風が吹く。5隻のガレー船は風の助けを借りて、北進が速かった。
高速哨戒艇が弧状の砂浜が美しいゴンダール湾に入ると、すでに5隻のガレー船が湾内にいた。
そのうち1隻は砂浜に乗り上げており、兵が剣を抜いて上陸を始めていた。
残り4隻のうち1隻は、木製の桟橋に接舷しようとしており、他の3隻は海上にいる。
レミ族の族長が投げた銛は、突進してきたティターン兵の胸を貫く。
だが、これで族長には武器がなくなった。銛を手にした男たちはまだよかった。
多くは櫂を手にするか、棒きれを振り回す程度の抵抗しかできない。漁師が日々使うナイフを抜くものもいるが、それでは長剣と戦えない。
クスタヴィ艇長は判断を迫られる。浜辺まで1キロ以上ある。
すでに乱戦になっており、レミ族が押されている。そして、高速哨戒艇は攻撃されていない。
少年がティターン兵に斬られる。
桟橋に接舷したガレー船からティターン兵が飛び出し、一部は砂浜を走っている。
数分で、辛うじて防戦しているレミ族の前衛に至る。ティターン兵は無差別殺戮をしている。
この海域のことがわからず、水深を知らない。陸に近付きすぎると座礁の危険がある。
「主砲を撃て。
上陸しているティターン兵を狙え」
クスタヴィ艇長は高速哨戒艇の推進力を止めると、主砲の発射を命じる。
40ミリ機関砲弾が浜辺に着弾する。
戦いは5分で決着する。
浜辺に乗り上げていたガレー船は、4発被弾して全損。浜辺を走っていたティターン兵は、榴弾を浴びて動かなくなった。
海上にいた3隻のガレー船は、状況を把握できない。帆も櫂もない船が現れ、レミ族に味方したのだ。
しかも、とんでもない速度で動く。
3隻の周囲を回っただけで、ガレー船は大きく揺れ、転覆しそうになる。
さらに、3隻の帆柱に機関砲弾が発射される。
3隻は逃走に入る。
それを見て、上陸していたティターン兵は桟橋のガレー船に向かって走る。
退却だ。
それをレミ族が追い、桟橋のティターン船は上陸兵を待たずに離岸する。
クスタヴィ艇長は、逃げるティターン船を追撃しなかったが、漕ぎ手が必死になるよう、十分な威嚇射撃を行った。
1発は1隻のごく至近に落ち、榴弾は片舷の櫂の3分の1を破壊する。
レミ族の殲滅は回避できたが、虐殺は行われてしまった。同時に、逃げ遅れたティターン兵に対する容赦ない報復は凄惨だった。
事後報告を受けた里崎杏は、レミ族にどう弔意を表せばいいのか思い悩んでいた。
燃料補給と同時に出航させ、座礁の危険がある夜間は適当な入り江に停泊させればよかった。
彼女にとっては、悔いの残る結果だった。
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勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
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2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
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スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
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