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六ヶ月経過③
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時間がないのが問題だった。
クソガキ二号には昨日までの要領で城に潜入してもらう。おれと三号は正面玄関から喧嘩の叩き売りだ。
「私はランス国ディオ家の使者、ルテマリア・グロース。こちらにディオ家次期当主がいらっしゃるのはわかっている。急ぎ私を案内せよ」
申し訳程度の人員しかいない城だが、この言葉には驚天動地の衝撃を感じているのはよくわかった。目の前で紹介状もなく唐突に訪れたおれらに適当に応対しようとしていた城宰は腰を抜かさんばかりになっている。目はおれの掲げた上質紙の文字と花押に釘付け。顔面は真っ青。クソガキ三号が高らかに声を張り上げたもんだから、門番や門の上を哨戒する兵士たちにも聞こえて、あっちも同じような反応をしている。
クソガキ三号ははじめこそうじうじしていたが、いざとなれば胆の据わりは期待以上だ。冷たい容貌でまともな思考判断ができそうにない城宰に詰めより、一国の最高位貴族家の威を借りて虐め抜いている。
「な、なんのことでしょうか?」
「なんと、ご存じないと?半月前、当家からディオ家次期当主であるレオナール・ディオさまが拐われたのだ。拉致犯がこちらに潜伏していると情報を受けてお迎えに参上した次第」
「馬鹿な!」
「ディオ家の調査能力を侮らないでもらおう。さあ、どこにいらっしゃる?……おや、まさか案内できないと?それでは貴君らは立派な反逆者だ。かの公子はランス国とここルスツ国の和平に立ったライオネル・ディオさまのご子息であるぞ。ルスツ国王陛下が貴君らの態度を知ればどう思われるかな?」
しかも隣国とはいえ他国の国王の威まで借りはじめていた。冷静に聞けばおかしいと思うだろうが、城宰も兵士たちもまだまだ衝撃から抜け出せていない。……にしてもこいつ、単純バカかと思ったら案外口が回るな。裏社会に片足突っ込んでも無事だったのはあの大人しそうなクソガキ四号がフォローしてたからかと思ってたが、そうでもなかったようだ。
「止め立てするようならば私も手段を選んではいられない。押し通る」
「まっ……お待ち下さい!」
「――あんた、レイテ神皇国の者だな」
かねて用意していたおれの言葉に、ぴたりと城宰が固まった。
「おかしなことだな。なぜルスツ国と我が国の国境に位置するこの城に、地理的に無関係の国の者が我が物顔で居座っているのやら。よもやルスツ王国は、また我が国に戦火をもたらそうと?しかも非戦を謳う神皇国とどのような縁があって我が主を匿っているのか……」
「う、嘘だ!!」
「ならば案内して頂けるのだろうな?」
クソガキ三号のだめ押しに城宰は喜び勇んで踵を返した。疑いを晴らすことこそ優先だと思ってくれて結構。――っと。
「わっ!?」
おいボロが出てるぞクソガキ。門の上から飛んできた矢を払い落とすと、クソガキ三号にじろりと視線をやった。……よし落ち着いたな。行け。
「……これはどういうことか。まさか正式な使者である私を害そうと?」
「そ、そんなことは――おい!今射たのは誰だ!」
「そ、それが……」
おそらく隊長格、駆けつけた兵士がしどろもどろになって、城宰と一緒に失点を取り戻そうとしている。いや無理だろ。脳天狙って殺す気満々だったぞ。
……まずい流れになる前に釘刺すか。
「最近国境にルスツ国と無関係の国の者が出入りしていると聞いてはいたが、まさか本当に神皇国だとはな」
お前らの関与を知っているのは、おれやこいつだけじゃない。ここで口封じすれば疑いが深まるだけ。どうせ心当たりはないんだからさっさと判断すりゃ、何も言わずに済んだってのに。
さあ、これでもまだ折れないか?
クソガキ二号には昨日までの要領で城に潜入してもらう。おれと三号は正面玄関から喧嘩の叩き売りだ。
「私はランス国ディオ家の使者、ルテマリア・グロース。こちらにディオ家次期当主がいらっしゃるのはわかっている。急ぎ私を案内せよ」
申し訳程度の人員しかいない城だが、この言葉には驚天動地の衝撃を感じているのはよくわかった。目の前で紹介状もなく唐突に訪れたおれらに適当に応対しようとしていた城宰は腰を抜かさんばかりになっている。目はおれの掲げた上質紙の文字と花押に釘付け。顔面は真っ青。クソガキ三号が高らかに声を張り上げたもんだから、門番や門の上を哨戒する兵士たちにも聞こえて、あっちも同じような反応をしている。
クソガキ三号ははじめこそうじうじしていたが、いざとなれば胆の据わりは期待以上だ。冷たい容貌でまともな思考判断ができそうにない城宰に詰めより、一国の最高位貴族家の威を借りて虐め抜いている。
「な、なんのことでしょうか?」
「なんと、ご存じないと?半月前、当家からディオ家次期当主であるレオナール・ディオさまが拐われたのだ。拉致犯がこちらに潜伏していると情報を受けてお迎えに参上した次第」
「馬鹿な!」
「ディオ家の調査能力を侮らないでもらおう。さあ、どこにいらっしゃる?……おや、まさか案内できないと?それでは貴君らは立派な反逆者だ。かの公子はランス国とここルスツ国の和平に立ったライオネル・ディオさまのご子息であるぞ。ルスツ国王陛下が貴君らの態度を知ればどう思われるかな?」
しかも隣国とはいえ他国の国王の威まで借りはじめていた。冷静に聞けばおかしいと思うだろうが、城宰も兵士たちもまだまだ衝撃から抜け出せていない。……にしてもこいつ、単純バカかと思ったら案外口が回るな。裏社会に片足突っ込んでも無事だったのはあの大人しそうなクソガキ四号がフォローしてたからかと思ってたが、そうでもなかったようだ。
「止め立てするようならば私も手段を選んではいられない。押し通る」
「まっ……お待ち下さい!」
「――あんた、レイテ神皇国の者だな」
かねて用意していたおれの言葉に、ぴたりと城宰が固まった。
「おかしなことだな。なぜルスツ国と我が国の国境に位置するこの城に、地理的に無関係の国の者が我が物顔で居座っているのやら。よもやルスツ王国は、また我が国に戦火をもたらそうと?しかも非戦を謳う神皇国とどのような縁があって我が主を匿っているのか……」
「う、嘘だ!!」
「ならば案内して頂けるのだろうな?」
クソガキ三号のだめ押しに城宰は喜び勇んで踵を返した。疑いを晴らすことこそ優先だと思ってくれて結構。――っと。
「わっ!?」
おいボロが出てるぞクソガキ。門の上から飛んできた矢を払い落とすと、クソガキ三号にじろりと視線をやった。……よし落ち着いたな。行け。
「……これはどういうことか。まさか正式な使者である私を害そうと?」
「そ、そんなことは――おい!今射たのは誰だ!」
「そ、それが……」
おそらく隊長格、駆けつけた兵士がしどろもどろになって、城宰と一緒に失点を取り戻そうとしている。いや無理だろ。脳天狙って殺す気満々だったぞ。
……まずい流れになる前に釘刺すか。
「最近国境にルスツ国と無関係の国の者が出入りしていると聞いてはいたが、まさか本当に神皇国だとはな」
お前らの関与を知っているのは、おれやこいつだけじゃない。ここで口封じすれば疑いが深まるだけ。どうせ心当たりはないんだからさっさと判断すりゃ、何も言わずに済んだってのに。
さあ、これでもまだ折れないか?
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