【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ

文字の大きさ
43 / 44

42.未来に向けて

しおりを挟む

 夏になり茹るような暑さではあったが、避暑地のおかげでなんとか快適に過ごすことが出来ていた。はじめての別荘は屋敷と言わんばかりの広い敷地で、移動するだけでも一苦労で。
 さすが、天下の月ノ島なのだと実感した。

 別荘に着いたその日、私たちはリビングルームで一息ついていた。
 私もそうだが玲二もひさしぶりの休暇で。二人で過ごすことが出来るのは夜のみだったので、昼間からだらだらとしていることに違和感すら覚えるほどだった。

 そんな中、私は玲二の座るソファの隣にかける。

「すごく広いお屋敷でびっくりしました。……なんだか迷っちゃいそう……」

「そうか? ここは俺の持つ別荘の中でも狭い方だぞ。ラスベガスの屋敷なんて、この3倍はある」

「ラスベガス……どれだけお家持ってるんですか……」

 浮かんだ疑問を口にすると、少し考え込んだ玲二はふん、と鼻を鳴らしてから「俺専用だけでも10はあるな」と答えた。

 あまりの桁違いさに血の気が引きそうになるのだが、たしかに日本の中ではもちろん、最近は海外でのシェアも広げている月ノ島グループならば普通の話なのかもしれない。
 管理が大変そうだなだと考えていると、玲二は私の方は顔を向ける。

「…………こっち向けよ、こはる」

 そう言って私の丸い頬を撫でる。子猫に触るかのようなソフトタッチで、思わずくすりと笑った。そんな私を見て、玲二は私の髪を片耳にかける。そしてゆっくりと顔を近づけてきた。

 自然と瞳を閉じ、唇と唇が重なる。
 慣れた温もりであってもいまだ心臓が早鐘を打っており、この行為自体は慣れないもんだななんて頭の隅で思った。

 ふわりとしたバードキスから一変、時間が経つにつれて粘着質で芳香漂うキスへと変わり、体の奥がじわじわと溶かされていく。口内に舌が侵入して食い尽くされると、頭がふわふわとしてきた。

 これはまずいと思い、思わず玲二の胸元を押す。

「……………だめです」

「なんだよ、気持ちよさそうにしていたくせに」

「こ、こんな昼間っから常時に耽るなんて不健全ですし」

 思わず甘い蜜夜を思い出し、頭が沸騰しそうになりながら口走ると玲二は口元を意地悪そうに緩めた。
 視線はどこか嗜虐的で、獲物を狙う獣のような瞳でーー。

「……だがそういうこと、お前は大好きだよ? 毎夜すげぇくらいよがってるし」

「…………っ!」

 耳元に口を近づけられて話されると、ぶるりと体に電流が走ったような感覚を覚える。全身にじんわりと汗をかいてしまい、呼吸が荒くなるのがわかった。

 けれど私は頭を振ってそっぽを向く。
 私にはまだ伝えなければならないこともあったし、できない理由だってあったのだ。

 拒絶の反応を示す私に対し、玲二はどこか不機嫌そうに睨みつけてきた。けれどけして譲らない態度を見せると、大きくため息をついて肩をすくめた。

「……んだよ、俺に抱かれるのは嫌だってか?」

「違うの。…………少し聞いて欲しいことがあって……」

「なんだ? くだらんことだったら承知しないぞ」

 不貞腐れた玲二はソファの背もたれに身体を預け、視線だけをこちらによこしてきた。その態度は完全に拗ねており、二人だけの時に見せるこの子供っぽい姿に呆れと同時に愛おしさが募る。恋は盲目とはよく言ったものだ。

 今から告げるつもりの言葉のせいで、心臓が飛び出しそうなほど跳ねている。緊張で手汗が滲んだ。こくりと唾を飲み込み、私は固い面持ちで告げたーー。


「赤ちゃんができたの」



 一白おいて玲二はこちらへ顔ごと剥ける。予想外の言葉だったのか、ぽかんと間抜け面をしているのが面白い。

「…………まじか?」

「うん、大マジ。……妊娠2ヶ月だって」

 平なお腹を摩りながら答える。
 未だ膨れる兆しはないものの、ここに新たな生命が宿っていると思うと不思議な感覚を覚えたのは。

 目を瞬き唖然とした様子だった玲二は、次の瞬間立ち上がった。そして私に身体を向け、膝をつく。
 玲二には珍しい緊張しい面持ちで私の手を握った。

「…………嬉しい。お前をーーいや、お前たちを必ず幸せにする」

「うん」

「……………だから、俺の子を産んでくれないか?」

 真摯な顔つきをする玲二と視線がかち合う。その瞳は一所懸命で一途な感情が見て取れる。
 私は頭を縦に振り、自然と溢れる笑顔で口にする。

「もちろん。私はあなたの子を産みたい……………私だってあなたと、お腹の中のこの子を幸せにするから」

「……っ、ありがとう」

 玲二は瞳を閉じたながら、私の背中に手を回した。彼の温もりが服越しに伝播し、心が凪いでいくのがわかった。強いくらいの力の包容は彼の想いの強さを表しているようで。
 私も自然と目を閉じ、この幸せに浸るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...