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4.先輩をときめかせたくて(後編)
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「ありがとう、相良」
リコ先輩がにっこり笑って御礼を言ってくれただけで、こんな1,000円そこらのランチ代くらいどうってことないと思えた。それから、もっと先輩の笑顔が見たいなとも思う。
「・・・・・・うん。じゃあ、この後どうする?」
さりげなくリコ先輩の隣に並んで歩き始める。しかし、この後どうしたらいいのかはさっぱり分からなかった。ただ、僕はリコ先輩と一緒にいられたらどこでもいいやっていうことだけ。それから、リコ先輩が彼女なら、並んで歩くだけじゃ足りない。先輩に、僕にドキドキして貰いたい。そんな思いが自然と沸き起こる。
「そうだね、相良どこか行きたいところとかある?」
リコ先輩が僕を見上げたとき、僕はちょうどリコ先輩と手を繋ごうとして、リコ先輩の手に触れたところだった。だけど、それに驚いた先輩は腕を胸の前にあげてしまい、僕の手は中途半端なところ行き場を失ってしまった。
「あ、ごめん」
「・・・・・・付き合ってるんだし、手、繋いで歩きたい」
僕と手を繋いで歩くのなんか嫌なのかなとか思ったけど、それより素直に先輩と手を繋いで歩きたいと言葉に出てしまった。
リコ先輩は顔を赤らめたまま僕を見ている。非常に恥ずかしいけど、やっぱりやめましょうとも言えない。
いつもだったらこんなこと言えない。今まで付き合って来た何人かの人にもこんなふうに自分から言ったことなかったかもしれない。
「・・・・・・リコ。手。」
さすがに目を見ながらは言えなかったけど、リコ先輩の名前を呼び捨てにしてみた。彼女だと思って接してってリコ先輩から言い出したんだし、付き合ってたら手を繋ぐなんてきっと当たり前だと思うし、と心の中で一生懸命理由を並べ立てる。口から心臓が飛び出しそうな感覚に自分でも驚く。
「相良、あの、すごく、キュンって来た。今の」
リコ先輩の方が可愛い。キュンって来たの?僕に?って思ってるうちに、リコ先輩の手が僕の手を握った。小さくて柔らかい、女性の手だった。しかもリコ先輩は指を絡めて手を繋いできてくれた。慣れない僕は一瞬びっくりしてしまって手のひらの力が抜けてしまったけど、すぐにぎゅっと握り返した。
「・・・・・・すごい、緊張する・・・・・・」
手を握るってこんなに緊張したっけ?今までの数少ない経験を思い出してみるけど、こんなに緊張したことって無かった気がする。なんでこんなにドキドキしてるんだろう。手を繋いでるだけなのに。
「・・・・・・リコは、何か見たいものとかないの?」
僕の緊張がバレないように、横に並んで歩きながらリコ先輩の要望を聞きだす。僕はリコ先輩といられるだけでいいから、あとはリコ先輩の好きにして欲しかった。
「今日は相良の興味のあるものを一緒に見ようと思ってたから・・・・・・」
僕って何に興味あったっけ?趣味ってなんだろう?とか考えながら歩いていたら、大きな雑貨屋さんの前に来ていた。僕はこういうものには興味が無かったけど、女性はこういうの好きなんだよな、と考える。リコ先輩も好きなのだろうか、建物の方をじっと見ていた。
「・・・・・・リコは、こういうところ好き?」
「そうだね~ブラブラしてるだけで楽しいから好きだよ!」
やっぱりリコ先輩もこういう雑貨屋さんが好きらしい。
「・・・・・・じゃ、入ろうか」
「相良つまんなくない?」
「・・・・・・彼女が見たいなら付き合うでしょ」
リコ先輩のことをさりげなく彼女呼びしてみる。それがなんとも恥ずかしくて照れてしまうから、顔を見られないようにとリコ先輩と繋いでる手を少し引いて建物の中に入って行った。
「ありがとう。相良優しいね。そういうの素敵だと思うよ!」
リコ先輩が僕を褒めてくれた。付き合ってるフリだからとかじゃなくて心の底から先輩が僕の事を素敵だと思って言ってくれるんじゃないかとうっすらと期待してしまう。
僕とリコ先輩は5階へ行き、文房具やパズルなどの雑貨系のものを見て周ることにした。
先輩と2人でボールペンを試し書きしてお互い感想を言いあうだけなんだけど、この時間がなんだか楽しく感じる。
先輩と2人で歩いてるとき、ふと3Dパズルが目に入った。観覧車の形をした綺麗な3Dパズルだった。
「わ、すごいね、こんなパズルできたらすごいな~」
「・・・・・・こういうの、好き?」
「やったことはないけど、興味はあるよ!ピースも細かそうだし、時間すっごくかかりそうでやる気になれないけど」
どうやらリコ先輩は本当に興味があるみたいで、観覧車の3Dパズルの周りをちょこちょこしながら見ている。もしも僕がこれを組み立てたら褒めてくれるかな。「相良、すごいね~」って言ってにっこり笑って褒めてくれそうな気がする。
「相良はこういうの好きなの?」
「・・・・・・こういうのあるって今初めて知ったかも」
「ふふ、そっか!」
ああもう今日は何回先輩を見て可愛いって思うんだろう、僕。
一通り雑貨屋さんを上から下まで見終わってからまた建物の外に出た。ここは車道と歩道で段差を付けてあるし、スピードを出す車はいないけれど、先輩に車道側は歩かせないようにした。
先輩が疲れてないか、楽しんでくれてるかが気になって、何回か先輩に「疲れてない?」と確認したし、先輩の横顔を見て楽しんでくれてるか確認もしてしまった。
歩き回って少し疲れたかなと思い、カフェにも誘ってしまった。「ランチのお礼」って言って先輩がカフェ代を払ってくれたりして、すごくスマートだと思った。こうやって今までの彼氏が先輩をエスコートして来たんだろうか。そう思うと心の中がモヤモヤする。
僕はこの日、できるだけ先輩と一緒にいたいと思ってたから、先輩がJRに乗るまで見送った。
帰るころには僕の心臓も落ち着いてはいたけれど、家に帰ってから今日のことを思い出したりして、また心臓が少しドキドキしていた。
リコ先輩がにっこり笑って御礼を言ってくれただけで、こんな1,000円そこらのランチ代くらいどうってことないと思えた。それから、もっと先輩の笑顔が見たいなとも思う。
「・・・・・・うん。じゃあ、この後どうする?」
さりげなくリコ先輩の隣に並んで歩き始める。しかし、この後どうしたらいいのかはさっぱり分からなかった。ただ、僕はリコ先輩と一緒にいられたらどこでもいいやっていうことだけ。それから、リコ先輩が彼女なら、並んで歩くだけじゃ足りない。先輩に、僕にドキドキして貰いたい。そんな思いが自然と沸き起こる。
「そうだね、相良どこか行きたいところとかある?」
リコ先輩が僕を見上げたとき、僕はちょうどリコ先輩と手を繋ごうとして、リコ先輩の手に触れたところだった。だけど、それに驚いた先輩は腕を胸の前にあげてしまい、僕の手は中途半端なところ行き場を失ってしまった。
「あ、ごめん」
「・・・・・・付き合ってるんだし、手、繋いで歩きたい」
僕と手を繋いで歩くのなんか嫌なのかなとか思ったけど、それより素直に先輩と手を繋いで歩きたいと言葉に出てしまった。
リコ先輩は顔を赤らめたまま僕を見ている。非常に恥ずかしいけど、やっぱりやめましょうとも言えない。
いつもだったらこんなこと言えない。今まで付き合って来た何人かの人にもこんなふうに自分から言ったことなかったかもしれない。
「・・・・・・リコ。手。」
さすがに目を見ながらは言えなかったけど、リコ先輩の名前を呼び捨てにしてみた。彼女だと思って接してってリコ先輩から言い出したんだし、付き合ってたら手を繋ぐなんてきっと当たり前だと思うし、と心の中で一生懸命理由を並べ立てる。口から心臓が飛び出しそうな感覚に自分でも驚く。
「相良、あの、すごく、キュンって来た。今の」
リコ先輩の方が可愛い。キュンって来たの?僕に?って思ってるうちに、リコ先輩の手が僕の手を握った。小さくて柔らかい、女性の手だった。しかもリコ先輩は指を絡めて手を繋いできてくれた。慣れない僕は一瞬びっくりしてしまって手のひらの力が抜けてしまったけど、すぐにぎゅっと握り返した。
「・・・・・・すごい、緊張する・・・・・・」
手を握るってこんなに緊張したっけ?今までの数少ない経験を思い出してみるけど、こんなに緊張したことって無かった気がする。なんでこんなにドキドキしてるんだろう。手を繋いでるだけなのに。
「・・・・・・リコは、何か見たいものとかないの?」
僕の緊張がバレないように、横に並んで歩きながらリコ先輩の要望を聞きだす。僕はリコ先輩といられるだけでいいから、あとはリコ先輩の好きにして欲しかった。
「今日は相良の興味のあるものを一緒に見ようと思ってたから・・・・・・」
僕って何に興味あったっけ?趣味ってなんだろう?とか考えながら歩いていたら、大きな雑貨屋さんの前に来ていた。僕はこういうものには興味が無かったけど、女性はこういうの好きなんだよな、と考える。リコ先輩も好きなのだろうか、建物の方をじっと見ていた。
「・・・・・・リコは、こういうところ好き?」
「そうだね~ブラブラしてるだけで楽しいから好きだよ!」
やっぱりリコ先輩もこういう雑貨屋さんが好きらしい。
「・・・・・・じゃ、入ろうか」
「相良つまんなくない?」
「・・・・・・彼女が見たいなら付き合うでしょ」
リコ先輩のことをさりげなく彼女呼びしてみる。それがなんとも恥ずかしくて照れてしまうから、顔を見られないようにとリコ先輩と繋いでる手を少し引いて建物の中に入って行った。
「ありがとう。相良優しいね。そういうの素敵だと思うよ!」
リコ先輩が僕を褒めてくれた。付き合ってるフリだからとかじゃなくて心の底から先輩が僕の事を素敵だと思って言ってくれるんじゃないかとうっすらと期待してしまう。
僕とリコ先輩は5階へ行き、文房具やパズルなどの雑貨系のものを見て周ることにした。
先輩と2人でボールペンを試し書きしてお互い感想を言いあうだけなんだけど、この時間がなんだか楽しく感じる。
先輩と2人で歩いてるとき、ふと3Dパズルが目に入った。観覧車の形をした綺麗な3Dパズルだった。
「わ、すごいね、こんなパズルできたらすごいな~」
「・・・・・・こういうの、好き?」
「やったことはないけど、興味はあるよ!ピースも細かそうだし、時間すっごくかかりそうでやる気になれないけど」
どうやらリコ先輩は本当に興味があるみたいで、観覧車の3Dパズルの周りをちょこちょこしながら見ている。もしも僕がこれを組み立てたら褒めてくれるかな。「相良、すごいね~」って言ってにっこり笑って褒めてくれそうな気がする。
「相良はこういうの好きなの?」
「・・・・・・こういうのあるって今初めて知ったかも」
「ふふ、そっか!」
ああもう今日は何回先輩を見て可愛いって思うんだろう、僕。
一通り雑貨屋さんを上から下まで見終わってからまた建物の外に出た。ここは車道と歩道で段差を付けてあるし、スピードを出す車はいないけれど、先輩に車道側は歩かせないようにした。
先輩が疲れてないか、楽しんでくれてるかが気になって、何回か先輩に「疲れてない?」と確認したし、先輩の横顔を見て楽しんでくれてるか確認もしてしまった。
歩き回って少し疲れたかなと思い、カフェにも誘ってしまった。「ランチのお礼」って言って先輩がカフェ代を払ってくれたりして、すごくスマートだと思った。こうやって今までの彼氏が先輩をエスコートして来たんだろうか。そう思うと心の中がモヤモヤする。
僕はこの日、できるだけ先輩と一緒にいたいと思ってたから、先輩がJRに乗るまで見送った。
帰るころには僕の心臓も落ち着いてはいたけれど、家に帰ってから今日のことを思い出したりして、また心臓が少しドキドキしていた。
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