異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

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留学編 3.5章

第181話 ナータリのなーやみ (ナータリ視点)

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間章です!

―――



ルイが留学して一ヶ月。

私は普通の学校生活を送れてい・・・るわけじゃない。

私自身・・・は普通の生活を送っている。

ただ、昼時や放課後はナーレになってリリスに接触をしている。

理由は単純、強制的にあのルイにやらされているからだ。

私の意見など関係なく、勝手にレーナが演じていたナーレの役を引き継がされた。

本当に面倒くさい!

数日置きに人目のないところで変身して別のキャラを演じる。

こっちの負担を考えてほしいわ!

でも、従うしかない。

私ももう彼に付いていくしか家でも居場所がないのよ!

自分の軽率な発言のせいで・・・

それにしても、よく架空の人物を演じていてバレないと思う。

まあ、まずSクラスとEクラスでは校舎が違う。

関わることもないし、すれ違うこともない。

しかもルイたちは念には念を入れているようで、Eクラスには協力者もいる。

一度、私が知らないときにリリスがEクラスにナーレを訪ねに行ったことがあったが、その時もその協力者がうまく対応してバレずに済んだらしい。

出発前にルイたちが万全状態にしてくれたからこそ、私の演技に全てがかかっている。

それがまた腹立たしい。

私が何でこんな諜報部隊みたいなことをしないといけないのよ!

・・・・そう、全て私のせいだ。

私のあの軽はずみな発言のせいで。

「ねぇ、ナーレ、聞いている?」

黒色の短髪にクリッとしたキラキラとした目をした少女が私の顔を覗き込んでくる。

「話、聞いていた?」
「あ、うん。もちろん!」

私の監視対象であるリリス。

最近聞いた噂ではどうやら元男爵令嬢で、元の名はリリス・デ・エヴルー。

理由は分からないけど平民として生きており、精霊術を使う少女。

第三皇子であるアレックス殿下と仲が良いが、平民ということで貴族の子息女からは嫌われている。

私は一年生の頃からレーナやアルスとの交流があったので、あまり抵抗はない。


この子といると、何処か不思議な気持ちになる。

一緒に話をしていて気持ちがいいし、敵にもかかわらず心を開きたくなる。

本当に不思議な子だ。

ルイが言っているような悪い人ではない。

彼が恐れているのはあくまでその力。

それを抜きにしたら友達になりたいぐらいだ。

「ねえ、ナーレは将来何になりたい?」

そう聞かれた私は考え込む。

将来、か。

私は女だからきっとどこかの家に嫁ぎにいかなければならない。

この帝国で働いている貴族の令嬢なんてごく一部だ。

そういう意味でこの身分を煩わしく感じる時もある。

もし、嫁ぎに行くとしたら――――――いやいや、ルイはありえないわよ。

今はナーレが聞かれているのよ!

平民として答えなくては。

「う~~ん、やっぱり何処かに就職してしばらく働いてから結婚かな?まあ、まだ大人になるってどういうことかよく分からないんだけどね」

成人をするのは十五歳。

それまでに、私自身・・・も決めなくてはならない。

「リリスはどうしたいの?」
「う~~~ん、やっぱりこの国を変えたいとうっすら思っているの。平等ではないし、公平でもない。結局、平民だけ損するのがこの国なんだよ」

ひと呼吸を入れて、リリスは話を続ける。

「ほら、私は貴族出身だからそれなりに苦労せずに育ってきたの。平民の人々の世界を知らなかった。でも、自分が平民になって初めてこの国はおかしいと感じたの。そして、変えてみたいと思ったの」
「へぇ、そうなんだ」
「そう思っているのは私だけじゃない。多くの人がそう思っている」

私は貴族だからその気持ちはよく分からない。

でも、最近は彼女と接してきて、少しずつ昔の自分が剥がれているような感覚がする。

誰かを蔑み、誰かをいたぶり、誰かを差別してきた自分。

・・・でも別に、人間は人間なんだ。

ただそこに、身分という壁があるだけ。

もしかして、それは取り払われるべきじゃないのか?と。

レーナ、アルス、リリス。

仲良くなっていくにつれてそういう気持ちが自分の中に芽生え始めた。

もちろん、ルイはそれを絶対に許さないと思うけれど。


昔よりも自分は丸くなってしまった、貴族らしくなくなってしまった!

それが今の私の悩み。



数日後、留学しているルイから手紙が届いた。

あんな傲岸不遜なルイでもやっぱり初めての留学だし、ホームシックにでもなったのかな?

アルスやレーナも元気にしているかな?

私は、はやる気持ちを抑えて手紙を開封した。

『監視、ご苦労だ。これからも馬車馬のように働け!  byルイ・デ・ブルボン』

はあ・・・?

内容の薄っぺらい手紙を読み終えると、その手紙を私はクシャクシャにして大声で叫んだ。

「やっぱりこいつが私の悩みだぁぁぁ!!!!!!!!!」
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