異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
180 / 188
留学編 3章

第180話 主人公③ (リリス視点)

しおりを挟む
久々の投稿です。



ーーー






噂というのは広まるのが早い。

入室した私のことを奇異な目で見ているクラスメートたち。

「その~~~、リリスが元男爵令嬢だったという話は本当なのか?」

アレックスくんが遠慮気味に聞いてくる。

「本当だけど・・・何で?」

いけない。思っていた以上に冷たく返してしまう。

「あ、ごめん、配慮がなかったかも。別に、過去がどうとかそういうことを聞きたいわけじゃなくて、あと、もちろん馬鹿にしに来たわけでもなくて・・・」

しどろもどろになる。

「と、とりあえず、言いたいことは、俺はそんなリリスの過去の事情とかどうでもいい!ただそれだけだ」

クラスメートには聞こえない声でそう言って、私にニッコリ微笑む。

アレックスくんにだって立場というものがある。

そういう事情も踏まえて私に話しかけてくれるのは正直に嬉しかった。

「ボクも気にしませんから」
「オレもだよ!」

アレックスくんの後ろにいた、ハンネスくん、フレッドくんも顔を見せて同意する。

私もニッコリと彼らに笑顔で返した。


授業中も何となく周囲の視線を感じていた私。

[リリス、視線なんて気にするな。授業に集中しろ]

クロにそのことを指摘されてしまう。

[クロ、それぐらい仕方ないですよ。リリスだって気にしたくて気にしているわけじゃないのですから]
[そ、そうですよ、クロさん!]

精霊同士で言い合っている。

私の周囲は平常運転だ。


昼になると、ミナスが真っ先にご飯に誘ってくる。

「ミナスは、どうして私を誘ってくれるの?」

そう聞くと少し顔を赤らめながら言う。

「アーシの友達はリリスだからよ。別にリリスが貴族かどうかは関係ないし」

そうはっきりと言ってくれる。

「貴族であることなんて所詮は家の話でしかない。そんなんで友人を選ぶわけ無いでしょ」
「・・・ミナスって少し変な子?」
「リリス、あんたにだけは言われたくないわ!」

そんな話をしていると、ナーレも合流する。

特に私を見ても何も言わず、隣に並んでくれる。

もうこれ以上、自分のことをどう思うか聞くのはやめようと思い、ナーレに尋ねるのは控えた。

この二人も友人でいてくれる。

私の身分なんて気にせず、また、何で家族に縁を切られたかも聞かず、ただ友人として接してくれる。

そんな環境が居心地良く思える。

あくまで、ありのままの私を見てくれていると感じるからだ。


放課後、またもマリーに遭遇する。

男爵令嬢にも関わらず、数人の女子生徒に囲まれている。

魔法の才があるだけで、取り巻きが出来てしまう。

私になかったものを全て持っている妹。

でも、そんなことは今は気にしてはダメだ。

私にだって大切な仲間がいる。

だから、堂々と前を通り過ぎた。

怯えていてはダメだし、その必要も無いはず。

[リリス、成長したな]

クロがしみじみと言う。

[なに、まるでリリスの親みたいな顔して言っているのよ!]

呆れたようにフィーンが言う。



そんな姿を見て、マリーが舌打ちをしていたことは誰も気づかなかった。


それからはとりとめもない普通の日々が続いた。

人の噂も七十五日と言うけれど、私の噂も次第に忘れられつつあった。

周囲の他の友達との関係はそこまで壊れず、逆に一年生のときに比べると友達の数も増えたように思う。

ルイくんとの一件の後、貴族嫌いのカマセくんを筆頭に何人かの平民出身の人ともクラスを越えて仲良くなれた。

そういう事件後の変化も含めて、あれはいい経験になったと今は思う。

あれ以来、マリーからの嫌がらせも無くなった。

すれ違ってもお互い挨拶もせず、不思議なぐらい相手から何もされなかった。

だが、それは私の思い違いだった。

マリーは裏で着々と私を追い詰めようと動いていた。

それに気づいたのは、夏休みに入る直前だった。

いつものように登校して教室に入ろうとすると、クラスが騒然としていた。

何が起きているのか、恐る恐る中を覗いてみると目の前の光景を疑った。

着席しているアレックスくんの腕に抱きつくマリーの姿。

「実は、私達は・・・付き合っていまーす!!・・・だよね?殿下!?」

その一言で大騒ぎが起きる。

「あ、ああ」

アレックスくんは苦々しい顔をしながら俯いた。


―――

留学編3章終
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...