異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
149 / 188
留学編 1章

第149話 裏会議 (三人称視点)

しおりを挟む
どんな世界にも、ものにも、事にも、裏というものが存在する。

ここスタンフォルス中高等学校でもそれは存在していた。

一学年ごとに分かれて各クラスに裏委員のようなものがあり、それぞれが協定を結ぶことで学校生活の秩序が成り立っている。


その裏委員会の月に一回の定例会議にて。


「で、あの新入生にやられたと?」
「ちっ、うるせえな!やられてねえーよ!」
「まあ、正確には逃げてきたってことだな?」
「・・・そうだ」

ルイに喧嘩を売った不良は不貞腐れたように頷いた。

「はあ、情けない。これだから普通コースの奴らは」
「チッ」

最初から会議は最悪の空気となっていた。

「で、そのルイとかいう留学生は何者なんだ?」

学年代表で進学コースA組の生徒が質問する。

「はい、わたくしから説明させてもらいます」

そう挙手したのは情報コースの委員だった。

「彼の本名はルイ・デ・ブルボン。フランシーダ帝国の大貴族、、ブルボン公爵家嫡男です。留学した経緯は、どうやら同学年の生徒を平民という理由で学校に許可なく呼び出して決闘し、痛めつけたから、とのことです」
「それで学園側も醜聞を恐れて実質追放、表向きは海外留学、というわけか」
「ええ、おそらく」
「とんだ問題児だな。いかにも貴族らしく腹立たしい行動だ。続きを頼む」

代表は促す。

「はい。どうやら数年前に不正をした元アルマー領の領主を任されているとのこと」
「領主?あの歳で?」
「ええ、ただここにはいくつかの噂があります。ルイ自身が不正を暴いたとも、濡れ衣を着せたとも」
「・・・後者っぽいな。貴族はいくらでも不正をするからな。まあ、この国にも裏口入学という不正を働く奴もいるが…」

そう言って、ルイに負けた不良や普通コースクラスの他の生徒たちに目を向ける。

「まあ、いい。まだ何かあるか?」
「ええ。領主になった途端、増税を行ったそうです」
「増税だと!馬鹿じゃないか。新しい土地に入ったら、減税をする。商会経営においても大事なことだ。まずは民の心を掴む。それがなければうまく行かない」

顔をしかめる代表。

「これだから、無能な貴族は!」
「あと、もう一つ領地経営のことで、」
「何だ?」
「はい、どうやらルイ自身のお金で孤児院を買っているようでして」
「なに、孤児院を。理由は?」
「全く明かされておりません。一つ噂になっているのは、幼児趣味なのではないかと」
「僕らと同い年で、か?!なんて浅ましいゲス野郎だ!貴族特有の悪趣味でしか無い」

ちなみに彼らは知らない。

アルマー領改め、ルイ領で生産された小麦粉がブルボン家経由でアメルダ民主国に輸出されているという事実を。

さらにその割合は、約四分の一にも上るということを。

まあ、実際はルイ領の小麦粉をブルボン家で買い取ってそれを輸出しているため注意深く調べないとこの事は分からない(商品の産地表示という制度は存在しないのだ)。

要するに彼らの生活は実のところ、ルイの増税のお陰で部分的に成り立っている。この国では優秀と評判の生徒たちではあるが、所詮はガキ。流石にそこまでは調べ切れていなかった。

「そうだ、取り巻きの情報はあるのか?」
「はい、まず異母弟にアルス・デ・ブルボンがおります。妾の子だったようで、最近になって名字を貰ったとのこと」
「貴族の子は大変だな」
「アルスはルイの護衛兼従者をしているそうです」
「弟にやらせているのか?」
「そのようです」

全員の心にルイに対する嫌悪の情が積もっていった。

「もう一人が、レーナです」
「・・・ん?名字はないのか?」
「ええ、奴隷だそうです」

「「「!!!」」」

全員の顔が憤怒へと変わる。

人を奴隷にしてその人間の人生を奪う、という外道極まりない卑劣な行為。 

幼い頃から、奴隷禁止!人権尊重!差別は駄目!と教えられてきた彼らにしてみれば、それは許しがたいことだった。

もちろん、彼らの親である上級国民たちが実は似たようなことを裏でやっているという事実は、いまだ知らずにいた。

「そのレーナちゃんは、ど、どんな人生を送っていたの?」

涙目になりながらも恐る恐る聞く一人の女子委員。

「はい。彼女は元々は善良な伯爵家の生まれだったそうです。ですがある日、邪悪な貴族たちの陰謀に巻き込まれて、あらぬ疑いを掛けられて没落。両親に奴隷として売られ一年過ごした後、ルイに買われたそうです」

まるで悲劇の物語のように語られ、女子たちはウルウルと涙をこぼす。

一方男子たちはレーナの顔写真と体つきを見て、悔しそうな、羨ましそうな表情をする。

「とんだ、クソ野郎だな!」

全員の考えを代弁するかのように言う代表。

この意見に関しては、アルスもレーナも同意するかもしれない。

「ねえ、こいつがここにいる間に、コテンパンにやっつけない?」

一人の生徒が言う。

良さげな意見が一つでも出たらそれに便乗する、というのが民主主義の話し合いだ。

「それいいアイデアかもな!ボコボコにしてやっつけてやろうぜ!そしてあの二人を救おう!」
「そうだな!ちゃんと根回しもしておかないとな!あいつの武器、全てを奪い取ってからだ!」
「おい、情報コース!ルイは魔法とか使えるのか?」
「それが、情報が全く入ってこないんだ。学園での成績も、評判も。微かな噂では無詠唱を使えるとかっていう、でたらめな噂もあるし・・・」

その発言を聞いて更に調子づく生徒たち。

「どうせ自分の情けない実力を隠そうとしてるだけだよ!」
「きっとそうだな!あんなゲスいクソ貴族、懲らしめてやる!」
「ああ、そうだな!」

全員が一致団結しだす。

それをやれやれといった感じで眺めていた代表だが、彼もまたガキだ。

胸の高まりは抑えれなかった。

「よし、じゃあお前は逐一情報を流すようにしてくれ」
「え?お、俺がか?」
「当たり前だ。奴の取り巻きになってしっかりと行動を監視して情報を把握するんだ!」
「・・・・分かったよ」

不良は同意するしかなかった。

彼自身は裏口入学であり、親は金持ちではある。

ただ、上には上がいてその一人が代表だった。

つまり、この国にも上下格差はあるのだ。


当の本人は知らぬ間に、転入早々に、学年全員を敵に回してしまったルイ。

だが、生徒たちは知らなかった。

ルイが孤児院を買った理由、留学した理由、アルスとレーナがルイのことをどう思っているのか…

もちろん、魔法協会が何とか隠そうと裏で動いたからこそ、彼らはルイの本当の実力も今はまだ知らないでいたのだった…
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...