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留学編 1章
第146話 奴隷
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「ここに来て、またかよ」
「そう言わずに、ルイ兄様。お金が貰えると思えばいいのですよ」
「・・・お前が賄賂に好意的とはな」
「肯定はしません。が、帝国では当たり前だったので抵抗はありません」
第一大陸南東部に位置するアメルダ民主国。
大きさはフランシーダ帝国最大領地を持つ貴族、ブルボン公爵家と同じ程度。
世界最大の商業地であり、多くの船や人、物、情報が行き来するラウシルトンを首都としている。
経済も凄いが、何より特徴的なのが教育制度が郡を抜いて発展していることだ。
六歳から十五歳までの全ての子供が教育を受けられる義務教育があり、その上の高等学校や大学まで整っている。
レベルの高い教育を受けられるということで海外からも留学に来る人が後を絶たない。
その中でも最高峰の学校と言われているのがスタンフォルス高等。正式名称はスタンフォルス中高等学校。
試験を受けないと入れない学校であり、いくつかあるコースの中でも進学コースは倍率が百倍と言われている。
その進学コース・・・ではなく、倍率が低く裏口入学の噂が絶えない普通コースへ、
フランシーダ帝国ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボンとその異母弟で従者のアルス・デ・ブルボン、同じく従者で奴隷のレーナは留学することになっていた。
「何で入学前だというのにこんな重労働させるんだ!おい、セバス!!!」
執事兼監視役のセバスの方を睨む僕。
疲れた体をふかふかの高級ソファーに預けて、ぐったりとする。
「ルイ様の仕事は挨拶に来た方々の対応だけですよ」
「それが疲れると言っているんだ、セバス。来客用の顔を作るのも、結構めんどくさいんだ」
「普段とあまり変わらないじゃないですか」
ボソリとアルスが呟いたことを僕は聞き逃さなかった。
「おい!アルス!お前は今日で首だ!この屋敷から出ていけ!」
「それはできません、ルイ兄様。自分はあくまでブルボン家次男として今回留学しています。あくまで、”個人的に”従者をしているだけなので追い出されるのは筋違いかと」
こいつ、年下のくせに!
「はぁ~~ルイ様、アルス。そこまでにしてください。セバスさんに怒られますよ」
レーナに言われて渋々引き下がる。
今、僕がしているのは学園入学前にもあった僕への挨拶への対応だ。
この国の官僚や大臣、商会トップなど。
中には、お忍びで来る権力者もいる。
まあ、それもそのはず。
彼らにとったら僕・・というよりブルボン家は、この国の南に位置する大国の中で最も力のある家だからだ。
資源が豊富で、多くの鉱物や農作物をアメルダ民主国へと輸出しており軍事力も同レベル。
あくまで一貴族でしかないブルボン家だが力はほとんど変わらないからこそ、大物たちがこぞって僕に挨拶に来る。
彼らは賄賂を渡しにきており、「今後ともよしなに~」と言われて悪い気はしないが・・・流石に疲れる。
「明日から学校があるんだぞ」
「「・・・学校に行く意欲はあったのですね」」
こいつら従者二人。まじで殺そうか。
「三人とも、そこまでです。最後の来客がお見えになります」
「「はい、すいません」」
「チッ」
僕は軽く舌打ちをしながらも姿勢を正した。
しばらくすると、使用人に連れられて一人の男が入室してきた。
「ルイ様、お久しぶりでございます」
「・・・見覚えのある顔だな。レーナ、知って―――お前、凄い形相だな!」
僕は誰か思い出せず、記憶力の良いレーナに聞こうとして顔を向けたが、その形相を見て驚く。
「これはこれは、嫌われましたな」
「お前、何をした?」
僕の質問にレーナが答えた。
「そこにいる方が、私をルイ様に売った人です」
「!!!ああ、そうか、お前か!」
なるほど、だから見覚えがあったのか!
なるほど、レーナがいい顔をしないわけだ。
「数年ぶりだな。いい買い物をさせてもらったよ」
「喜んでもらえて光栄です」
「で、ここへはどういう理由で?」
目の前の奴隷商人はニカッと笑う。
「本来この国では奴隷の売買は禁止されているのですが、裏では活発に行われているのですよ」
「なるほど、な」
「前回お約束させていただいた通り、お気に召されるような奴隷を見つけまして。ぜひ買っていただけないかと参りました」
「大胆だな」
「商売というのは博打を打つのと同じですから。捕まるのを恐れてられませんよ」
なるほど、奴隷か。
そこまで今は従者に困ってはいないが・・・興味はある。
「見るだけ見てみるか」
「ええ、購入されるかはその場で決めてもらって構わないです」
「そうだな。これから入学等があるから、機を見てまた来てくれ」
「分かりました、お話をお聞きいただきありがとうございます」
そう恭しく頭を下げると退出していった。
「ルイ様・・・」
セバスがレーナの方を見ながら何か言いたげな顔をしている。
アルスも苦笑いを浮かべる。
「何だ?自分の金から出すんだ。問題ないだろう」
「ルイ兄様、そういう問題ではないのですが・・・」
僕は横に立つレーナの顔を見る。
どこか寂しそうな、複雑な感情を必死で抑えている顔。
「よし、明日からまた学校だな。しっかりと公爵家の力を見せつけるぞ!」
そんな態度(平常運転)のルイを見て、アルスとセバスはため息をつくのだった。
―――
ちなみに、この留学編から少しずつ物語が動いていくのでぜひ最後まで読んでみてください!
「そう言わずに、ルイ兄様。お金が貰えると思えばいいのですよ」
「・・・お前が賄賂に好意的とはな」
「肯定はしません。が、帝国では当たり前だったので抵抗はありません」
第一大陸南東部に位置するアメルダ民主国。
大きさはフランシーダ帝国最大領地を持つ貴族、ブルボン公爵家と同じ程度。
世界最大の商業地であり、多くの船や人、物、情報が行き来するラウシルトンを首都としている。
経済も凄いが、何より特徴的なのが教育制度が郡を抜いて発展していることだ。
六歳から十五歳までの全ての子供が教育を受けられる義務教育があり、その上の高等学校や大学まで整っている。
レベルの高い教育を受けられるということで海外からも留学に来る人が後を絶たない。
その中でも最高峰の学校と言われているのがスタンフォルス高等。正式名称はスタンフォルス中高等学校。
試験を受けないと入れない学校であり、いくつかあるコースの中でも進学コースは倍率が百倍と言われている。
その進学コース・・・ではなく、倍率が低く裏口入学の噂が絶えない普通コースへ、
フランシーダ帝国ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボンとその異母弟で従者のアルス・デ・ブルボン、同じく従者で奴隷のレーナは留学することになっていた。
「何で入学前だというのにこんな重労働させるんだ!おい、セバス!!!」
執事兼監視役のセバスの方を睨む僕。
疲れた体をふかふかの高級ソファーに預けて、ぐったりとする。
「ルイ様の仕事は挨拶に来た方々の対応だけですよ」
「それが疲れると言っているんだ、セバス。来客用の顔を作るのも、結構めんどくさいんだ」
「普段とあまり変わらないじゃないですか」
ボソリとアルスが呟いたことを僕は聞き逃さなかった。
「おい!アルス!お前は今日で首だ!この屋敷から出ていけ!」
「それはできません、ルイ兄様。自分はあくまでブルボン家次男として今回留学しています。あくまで、”個人的に”従者をしているだけなので追い出されるのは筋違いかと」
こいつ、年下のくせに!
「はぁ~~ルイ様、アルス。そこまでにしてください。セバスさんに怒られますよ」
レーナに言われて渋々引き下がる。
今、僕がしているのは学園入学前にもあった僕への挨拶への対応だ。
この国の官僚や大臣、商会トップなど。
中には、お忍びで来る権力者もいる。
まあ、それもそのはず。
彼らにとったら僕・・というよりブルボン家は、この国の南に位置する大国の中で最も力のある家だからだ。
資源が豊富で、多くの鉱物や農作物をアメルダ民主国へと輸出しており軍事力も同レベル。
あくまで一貴族でしかないブルボン家だが力はほとんど変わらないからこそ、大物たちがこぞって僕に挨拶に来る。
彼らは賄賂を渡しにきており、「今後ともよしなに~」と言われて悪い気はしないが・・・流石に疲れる。
「明日から学校があるんだぞ」
「「・・・学校に行く意欲はあったのですね」」
こいつら従者二人。まじで殺そうか。
「三人とも、そこまでです。最後の来客がお見えになります」
「「はい、すいません」」
「チッ」
僕は軽く舌打ちをしながらも姿勢を正した。
しばらくすると、使用人に連れられて一人の男が入室してきた。
「ルイ様、お久しぶりでございます」
「・・・見覚えのある顔だな。レーナ、知って―――お前、凄い形相だな!」
僕は誰か思い出せず、記憶力の良いレーナに聞こうとして顔を向けたが、その形相を見て驚く。
「これはこれは、嫌われましたな」
「お前、何をした?」
僕の質問にレーナが答えた。
「そこにいる方が、私をルイ様に売った人です」
「!!!ああ、そうか、お前か!」
なるほど、だから見覚えがあったのか!
なるほど、レーナがいい顔をしないわけだ。
「数年ぶりだな。いい買い物をさせてもらったよ」
「喜んでもらえて光栄です」
「で、ここへはどういう理由で?」
目の前の奴隷商人はニカッと笑う。
「本来この国では奴隷の売買は禁止されているのですが、裏では活発に行われているのですよ」
「なるほど、な」
「前回お約束させていただいた通り、お気に召されるような奴隷を見つけまして。ぜひ買っていただけないかと参りました」
「大胆だな」
「商売というのは博打を打つのと同じですから。捕まるのを恐れてられませんよ」
なるほど、奴隷か。
そこまで今は従者に困ってはいないが・・・興味はある。
「見るだけ見てみるか」
「ええ、購入されるかはその場で決めてもらって構わないです」
「そうだな。これから入学等があるから、機を見てまた来てくれ」
「分かりました、お話をお聞きいただきありがとうございます」
そう恭しく頭を下げると退出していった。
「ルイ様・・・」
セバスがレーナの方を見ながら何か言いたげな顔をしている。
アルスも苦笑いを浮かべる。
「何だ?自分の金から出すんだ。問題ないだろう」
「ルイ兄様、そういう問題ではないのですが・・・」
僕は横に立つレーナの顔を見る。
どこか寂しそうな、複雑な感情を必死で抑えている顔。
「よし、明日からまた学校だな。しっかりと公爵家の力を見せつけるぞ!」
そんな態度(平常運転)のルイを見て、アルスとセバスはため息をつくのだった。
―――
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