異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
130 / 188
学園編 5章

第130話 交渉④

しおりを挟む


「精霊術!?!?!何よそれ!」

真っ先に反応したのはナータリだった。

ああ、そうか、こいつにはまだ話していなかったんだ。

僕はレーナに目くばせして、ナータリに教えるよう指示する。

僕は目の前にいる奴らと交渉だ。

「お答えいただけますか?」

わざとらしく敬語で聞くが、相手は口を閉じたまま。

何も答えない。

しばし沈黙が続く。

隣からは、「え!」、「そんな!」、「本当に!?」とうるさい声が聞こえていたが、それは無視した。

「一つ聞いていいか?」

アリオスが最初に口を開く。

「ルイ、君はどうして精霊術を知っているんだ?」

ギクリ!そこを聞きますか。

精霊術は魔法協会でも一部の人しか知らない機密情報扱い。

それを子供の僕が知っているのはおかしいと考えたのだろう。

「別に。調べていたら、たまたま見つけただけですよ」

ここは無難に答える。

訝しむ四人だが、それ以上は追求してこない。

僕もまさか、前世で読んだ、などと馬鹿げた事は言わない。

「で、こちらの質問に答えてください」

目を閉じていたフアンズが口を開く。

「この資料に書いてある事は大体承知している。だが、それ以上の情報は・・・話せない」

これも予想通りの返答だ。

しかし、実はこの資料には彼らがまだ知らない事が一つだけ書かれていた。

「え~~本当によろしいんですか?情報交換のいい機会なんですよ!魔法協会は遺跡についてもっと知りたいんじゃないですか?」

僕の言葉に虚を突かれたように、顔をこちらに向ける。

彼らが今一番知りたい情報は、僕らが夏休みに調査に行ったあの不思議な遺跡のはず。

あそこは、まさしく精霊術師らが造り、今も何らかの理由で守っている場所。言わば聖地のようなところだ。

精霊術と対立している魔法協会としては、何としても知りたい情報のはず。

実際、彼らもあの遺跡の重要性については理解しているはず。

だが、調査しようとしたが失敗している。

調査の際に僕らが耳にした、あの横暴な貴族の話によると。

それから、村長の話では遺跡周囲を勝手に荒らされた、と文句を言っていたが事実はそうでないだろう。

おそらく、遺跡周囲の詳細な分析のためにサンプル採取でそこに行ったはずだ。

だがそこで、監視者に捕まり協会から派遣された者が殺された。

これが真相だろう。

遺跡調査に失敗した魔法協会。

彼らとしては、あの遺跡についてどうしても情報を手に入れたい。

だが、また犠牲者を出してまで再度調査者を派遣するかどうかは迷っているだろう。

そんな時に、あの遺跡の情報を持っている本人が目の前にいる。

彼らとしては何としても僕から情報を聞き出したい。

でも、下手に出ると僕に足元を見られるだけ。

そんな考えから、渡した書類の中で言及している遺跡については、あえて触れなかったのだろう。

甘いな。そっちの考えている事は全てお見通しだ。お前ら、痩せ我慢は止めな!

「そこに書かれてある遺跡の情報は一部だけですよ?僕と交渉しなくていいんですか?」

「チッ!」

誰かが舌打ちをする。

さて、どう出る?

「君は何が望みなんだ?」

ほら、早速突っ込んできたな。

「そうですね、こちらが示す条件としてはあなた方の謝罪、無詠唱魔法の黙認、公爵家や関係者への不介入。まあ、ここら辺ですね」

「情報の引き渡しはしなくていいのだな?」

僕は失笑する。

「情報?ご冗談を!あなた方が持っているレベルの情報なんか、全て把握していますからご安心を。情報に関しては僕らのほうが把握してるので」

顔を顰める魔法協会幹部。

その反応は無理もないか。

数百年も協会が秘匿してきた情報が、まだ、たった十数年しか生きていないガキに知られているのだから。

まあ、ドンマイ!

「・・・・無詠唱魔法の黙認は、承服しかねる」
「ほぉ、どうしてですか?」
「当たり前だ。それは魔法協会の威信に関わるからだ。そう簡単には容認できない」
「では、全面戦争ですかー?」

戦力-軍事力で勝る公爵家と政財界との太いパイプを持っている魔法協会。

父上も僕が暗殺されかけたのだから協力はしてくれるはず。

「それは流石に嫌じゃよ。国の繁栄の妨げはごめんだ」

確かに。こちら側としても不利な戦いになる。

貴族の力を削ぎたい皇族たちが、適当な理由を付けて僕らの討伐を命じるかもしれない。

そうなると戦いは不利だ。

…と、ここまでも大方予想通りの進行だ。

ふと横を見ると、うなだれているナータリ。

あまりに大きな真実を知り容量超えをしてしまい、頭がパンクしたのだろう。

だが、彼女にはまだ大きな役割があるんだが。

「では、一つ提案させていただきたい」
「何だね?」
「僕が学園を去るというのはどうでしょうか?」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...