129 / 188
学園編 5章
第129話 交渉③
しおりを挟む
今日は一話投稿です
―――
「おや、本当に来ていただけるとは思いませんでした」
「嘘をつけ。最初から全てを知っていたんだろ!」
はて?何のことやら。
「まぁ~~~とにかくぅ~~~、行きましょうよぉ~~」
いつもよりも語尾を長めに伸ばすイルナ。
「ねえ、これどういう状況よ!」
「後で話す」
ナータリの質問を無視して僕たちは後に付いて行く。
襲撃があるかもしれないとオールドが周りを警戒するが、特に何も起こらない。
アリオスとイルナは後ろを振り返ることなく無言のまま歩き続ける。
階段を下り、くねくねと右へ左へと複雑に通路を曲がること数十分。
「着いたぞ」
アリオスが示したのは何も無い壁。
だが、アリオスが詠唱をした瞬間、大きな音をたてて壁が動き出す。
しばらくして、目の前に通路が現れた。
所謂隠し部屋に続く通路だろう。
アリオス先頭、オールド最後尾で横幅の狭い道を進む。
更にうねうねと蛇行した後。
ついに目的の部屋・・・ではなく行き止まりの壁に到着した。
そこでまたアリオスが詠唱すると、先程と同じように壁が動く。
ようやく現れたのが、隠し部屋だった。
中に入ると、予想以上の大きな部屋で正面の円形テーブルにずらりと椅子が並ぶ。
壁には何人もの肖像画がかかり、壁面の棚には重要そうな本が並ぶ。
まあ、室内の様子はどうでもいい。
問題は正面の円形テーブルに座る二人の男だ。
見覚えのある顔だった。
一人は顎にヒゲを蓄えた老人。たしか魔法協会の会長だった気がする。
もう一人は禿頭をした会長よりは若そうな男。たぶん魔法協会の会計担当だ。
資料に一通り目を通したが、そこまで詳しく覚えている訳じゃないし。
「おお、やっと来たな。ご足労をかけた」
「全くだ。遠すぎる。次回は瞬間移動だな」
僕の返答を聞いて隣の禿げがこちらをギロリと睨んでくる。
「そうじゃな、この老体にはキツイものだよ。改めて、魔法協会会長のフアンズと申す。機密情報ゆえ姓は割愛するぞ」
「魔法協会のテッペンだ」
こちらは姓も役職も言わない。無礼な奴だ。
これで姓がハーゲだといいのに!
とりあえず、こちらも挨拶をする。
「ルイ・デ・ブルボンだ」
「アルスと申します」
「レーナです」
「護衛を務めるオールドです」
「え、あ、ナータリと言います」
「ラオスです」
ん?僕だけ姓を名乗ってしまった。ま、気にすることでもないか。
「ルイ君や、急に魔法協会に押しかけてきて何の御用かね?」
この爺、とぼけてやがる。さっき、はっきりと、ご足労をかけた、とかお爺ちゃん言ってたよな?ぼけてるのか、とぼけてるのか、はっきりしろ!分かっているくせに。
「おやおや?逆に聞くが、どうして急にここに連れてきたのかを教えてもらいたい」
フアンズがニヤリと笑う。
「暗殺するため、と言ったら・・・?」
「馬鹿馬鹿しい、成功するわけ無いじゃないか」
このジジイは、やっぱり極悪タヌキだな!かまをかけてきたな。
だが、今ここには僕とアルス、レーナ、更にオールドまでいる。ましてや、公爵家の人間が負けるはず無い。
「・・・どうぞ座って」
話の間にアリオスが入る。
言われるがまま僕らは座る。
しばらく沈黙が続いた後、耐えきれずナータリが小声で話しかけてくる。
「ちょっと、本当にこれ、どういう状況よ!なんでアリオス先生とイルナ先生がいるの?どうしてこんなところで話が行われるの!?」
一から答えてもいいが、その前にフアンズが口を開いた。
「さて、ルイ君。早速交渉に入ろうじゃないか?」
「もう入るのか?」
僕の返答に笑って答える。
「ホッホッホッ!すまんのぉ、この状況は老人にとってキツイものでの。早く終わらせたいんだ」
だが、その目は笑っておらず、鋭く光っていた。
おそらく僕がらみの件は早く無かったことにしたいんだろう。
「その前に色々と整理だ。まずは僕が集めた資料に目を通していただきたい」
そう言うと、オールドが資料を配布する。
ちなみに確実な証拠がこちらにある件については、チェックを入れている。
「チェックの入っているところに間違いは無いな?」
「ホッホッホッ、公爵家は本当に怖いの。ここまで調べ上げているとは」
つまり、事実だと認めたな。
「後、質問だ。アリオス先生とイルナ先生はそちら側の人間で間違いないか?」
その質問にアリオスが答える。
「本来はそうだが、今回は司会のような役回りを担う」
なるほど、分かった。
「こちらからも質問をしていいかね?」
「どうぞ」
「今回の件に、ラノルド殿は関わっているのかね?」
なるほど、父が関与しているのかどうか気になるか。
「関わっていないが把握はしているぞ。だから手荒な真似をしたら・・・」
父が黙っていないはずだ。
「分かっておる。そこまで馬鹿な真似はせぬ」
「ならいい」
では、最後の質問をしよう。
「精霊術についてそちらはどこまで知っているんだ?」
―――
「おや、本当に来ていただけるとは思いませんでした」
「嘘をつけ。最初から全てを知っていたんだろ!」
はて?何のことやら。
「まぁ~~~とにかくぅ~~~、行きましょうよぉ~~」
いつもよりも語尾を長めに伸ばすイルナ。
「ねえ、これどういう状況よ!」
「後で話す」
ナータリの質問を無視して僕たちは後に付いて行く。
襲撃があるかもしれないとオールドが周りを警戒するが、特に何も起こらない。
アリオスとイルナは後ろを振り返ることなく無言のまま歩き続ける。
階段を下り、くねくねと右へ左へと複雑に通路を曲がること数十分。
「着いたぞ」
アリオスが示したのは何も無い壁。
だが、アリオスが詠唱をした瞬間、大きな音をたてて壁が動き出す。
しばらくして、目の前に通路が現れた。
所謂隠し部屋に続く通路だろう。
アリオス先頭、オールド最後尾で横幅の狭い道を進む。
更にうねうねと蛇行した後。
ついに目的の部屋・・・ではなく行き止まりの壁に到着した。
そこでまたアリオスが詠唱すると、先程と同じように壁が動く。
ようやく現れたのが、隠し部屋だった。
中に入ると、予想以上の大きな部屋で正面の円形テーブルにずらりと椅子が並ぶ。
壁には何人もの肖像画がかかり、壁面の棚には重要そうな本が並ぶ。
まあ、室内の様子はどうでもいい。
問題は正面の円形テーブルに座る二人の男だ。
見覚えのある顔だった。
一人は顎にヒゲを蓄えた老人。たしか魔法協会の会長だった気がする。
もう一人は禿頭をした会長よりは若そうな男。たぶん魔法協会の会計担当だ。
資料に一通り目を通したが、そこまで詳しく覚えている訳じゃないし。
「おお、やっと来たな。ご足労をかけた」
「全くだ。遠すぎる。次回は瞬間移動だな」
僕の返答を聞いて隣の禿げがこちらをギロリと睨んでくる。
「そうじゃな、この老体にはキツイものだよ。改めて、魔法協会会長のフアンズと申す。機密情報ゆえ姓は割愛するぞ」
「魔法協会のテッペンだ」
こちらは姓も役職も言わない。無礼な奴だ。
これで姓がハーゲだといいのに!
とりあえず、こちらも挨拶をする。
「ルイ・デ・ブルボンだ」
「アルスと申します」
「レーナです」
「護衛を務めるオールドです」
「え、あ、ナータリと言います」
「ラオスです」
ん?僕だけ姓を名乗ってしまった。ま、気にすることでもないか。
「ルイ君や、急に魔法協会に押しかけてきて何の御用かね?」
この爺、とぼけてやがる。さっき、はっきりと、ご足労をかけた、とかお爺ちゃん言ってたよな?ぼけてるのか、とぼけてるのか、はっきりしろ!分かっているくせに。
「おやおや?逆に聞くが、どうして急にここに連れてきたのかを教えてもらいたい」
フアンズがニヤリと笑う。
「暗殺するため、と言ったら・・・?」
「馬鹿馬鹿しい、成功するわけ無いじゃないか」
このジジイは、やっぱり極悪タヌキだな!かまをかけてきたな。
だが、今ここには僕とアルス、レーナ、更にオールドまでいる。ましてや、公爵家の人間が負けるはず無い。
「・・・どうぞ座って」
話の間にアリオスが入る。
言われるがまま僕らは座る。
しばらく沈黙が続いた後、耐えきれずナータリが小声で話しかけてくる。
「ちょっと、本当にこれ、どういう状況よ!なんでアリオス先生とイルナ先生がいるの?どうしてこんなところで話が行われるの!?」
一から答えてもいいが、その前にフアンズが口を開いた。
「さて、ルイ君。早速交渉に入ろうじゃないか?」
「もう入るのか?」
僕の返答に笑って答える。
「ホッホッホッ!すまんのぉ、この状況は老人にとってキツイものでの。早く終わらせたいんだ」
だが、その目は笑っておらず、鋭く光っていた。
おそらく僕がらみの件は早く無かったことにしたいんだろう。
「その前に色々と整理だ。まずは僕が集めた資料に目を通していただきたい」
そう言うと、オールドが資料を配布する。
ちなみに確実な証拠がこちらにある件については、チェックを入れている。
「チェックの入っているところに間違いは無いな?」
「ホッホッホッ、公爵家は本当に怖いの。ここまで調べ上げているとは」
つまり、事実だと認めたな。
「後、質問だ。アリオス先生とイルナ先生はそちら側の人間で間違いないか?」
その質問にアリオスが答える。
「本来はそうだが、今回は司会のような役回りを担う」
なるほど、分かった。
「こちらからも質問をしていいかね?」
「どうぞ」
「今回の件に、ラノルド殿は関わっているのかね?」
なるほど、父が関与しているのかどうか気になるか。
「関わっていないが把握はしているぞ。だから手荒な真似をしたら・・・」
父が黙っていないはずだ。
「分かっておる。そこまで馬鹿な真似はせぬ」
「ならいい」
では、最後の質問をしよう。
「精霊術についてそちらはどこまで知っているんだ?」
13
あなたにおすすめの小説
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる