123 / 179
学園編 4章
第123話 交渉②
しおりを挟む
「これ、本当に今日一日着なければならないのですか!?」
不機嫌さ丸出しでアルスが言う。
長居してはいけないと帰ったブルボン家一行だが、着替えをしようとしたアルスを僕は止めた。
「ああ、面白そうだからな」
僕に対しても睨んでくる。
「これから大事な話し合いですよね」
ああ、そうだ。
閉幕式の前に第一皇子に呼び出しをされた。
第一皇子派からの勧誘はすでに受けていたが、本人からはまだだったからね。
「その格好で行くぞ!」
それから数時間。
特に行くところも無かった僕は、適当に教室で時間を潰した。
そして最後のパンケーキを出し終え、ようやく僕たちの模擬店カフェ終了となった。
そこから全員で片付け・・・は明日以降にやるため、各々休憩に入った。
僕とアルスは指定された別の校舎の小さな部屋に向かった。
部屋の前でまず僕らを出迎えたのは、あの生徒会長だった。
「くれぐれも粗相の無いように」
何故、注意する?!
部屋へ入ると、以前第二皇子と話したときのように、二つのテーブルと椅子が向かい合うように置かれていた。
そして反対側に座っているでっぷりとした男が第一皇子だ。
ガタイの良さそうな体つきではあるが、それを台無しにするポッコリ出たお腹。
指には豪華な指輪をいくつもはめ、首からは高そうなネックレスを垂らしている。
「お初にお目にかかります、第一皇子殿下。ルイ・デ・ブルボンでございます」
僕の挨拶に満足そうに頷く。
「うむ、我こそはフランシーダ帝国第一皇子、モハッド・ド・フランシーダだ」
僕は下げた頭を上げる。
「それで、どういったご用件でしょうか?」
「まあ、そう焦るでない。ここには生徒会長もいるのだから、閉幕式の時間ぐらいずらせるぞ」
僕はとりあえず席につく。
それにしても目の前の男の姿は何だか・・・小説内での僕、ルイに似ている。
ぶくぶくと太った挿絵を思い出し、心の中で顔を振る。
絶対こうならないぞ!
「さて、本題に・・・・?その前に、その後ろに控えているメイド服の茶髪の女子は誰だ?」
モハッドが好色そうな目でそちらを見る。
「よかったら教えてくれないか?」
僕はやれやれといった感じで教えてあげる。
真実をな!
「あれは女装をした僕の従者で弟のアルスと申す者です」
「・・・・・・弟っ!!!」
驚いたようにアルスをまじまじと見る。
モハッドの後ろに控えていた二人、特に生徒会長は目を見開いた。
「えっ!あ、あれがあのアルスだと・・・」
僕は笑みを浮かべてしまう。
こいつらに、一杯食わせることができたな。
「まさか、第一皇子はそちらの方に趣味がお有りで?」
僕の質問にモハッドが首を振る。
「そんな根も葉もないことを言うな!」
チッ、この男の性癖は噂程度にしか広められないか・・・
「オホンッ、そろそろ本題に入っていいか」
咳払いを一つしてモハッドは話し始める。
「話は単純だ、こちらの陣営に入ってくれ!」
「お断りします」
もちろん即答だ。
「提示条件も聞かずにか?」
僕は一瞬口をつぐむ。
そう、今回の交渉に関しては条件があまり分からない。
おそらく前回の第二皇子との交渉内容は知られているはず。
つまり、条件も変えてくるだろう。
「では一応聞きます」
「そうだな、色々とあるが、貴様が一番欲しそうなものをあげよう」
「何ですか?」
「公爵家を継いだあかつきには、新たな位、王爵を上げようではないか」
王爵、だと?
基本的に、国家の王も一つの爵位として言われることがある。
皇帝だったら帝爵、そして王だったら王爵。
つまり、王になれるのだ。
だが、これは毒饅頭だ。
絶対に危ないやつだ。
手を出した瞬間、貴族たちから反感を持たれて、皇帝になった第一皇子に倒されるだけ。
「まあ、どのような条件でもお断りはしますよ」
「何故だ!!!」
僕は第一皇子の家柄も血筋も認めている。
第二皇子時のように見下してはいない。
ただ、
「モハッド殿下、あまり虎の尾は踏まないほうが良いですよ。いずれ痛い目にあいますから」
僕はそう言って立ち上がり一瞥もくれずにその場を後にした。
不機嫌さ丸出しでアルスが言う。
長居してはいけないと帰ったブルボン家一行だが、着替えをしようとしたアルスを僕は止めた。
「ああ、面白そうだからな」
僕に対しても睨んでくる。
「これから大事な話し合いですよね」
ああ、そうだ。
閉幕式の前に第一皇子に呼び出しをされた。
第一皇子派からの勧誘はすでに受けていたが、本人からはまだだったからね。
「その格好で行くぞ!」
それから数時間。
特に行くところも無かった僕は、適当に教室で時間を潰した。
そして最後のパンケーキを出し終え、ようやく僕たちの模擬店カフェ終了となった。
そこから全員で片付け・・・は明日以降にやるため、各々休憩に入った。
僕とアルスは指定された別の校舎の小さな部屋に向かった。
部屋の前でまず僕らを出迎えたのは、あの生徒会長だった。
「くれぐれも粗相の無いように」
何故、注意する?!
部屋へ入ると、以前第二皇子と話したときのように、二つのテーブルと椅子が向かい合うように置かれていた。
そして反対側に座っているでっぷりとした男が第一皇子だ。
ガタイの良さそうな体つきではあるが、それを台無しにするポッコリ出たお腹。
指には豪華な指輪をいくつもはめ、首からは高そうなネックレスを垂らしている。
「お初にお目にかかります、第一皇子殿下。ルイ・デ・ブルボンでございます」
僕の挨拶に満足そうに頷く。
「うむ、我こそはフランシーダ帝国第一皇子、モハッド・ド・フランシーダだ」
僕は下げた頭を上げる。
「それで、どういったご用件でしょうか?」
「まあ、そう焦るでない。ここには生徒会長もいるのだから、閉幕式の時間ぐらいずらせるぞ」
僕はとりあえず席につく。
それにしても目の前の男の姿は何だか・・・小説内での僕、ルイに似ている。
ぶくぶくと太った挿絵を思い出し、心の中で顔を振る。
絶対こうならないぞ!
「さて、本題に・・・・?その前に、その後ろに控えているメイド服の茶髪の女子は誰だ?」
モハッドが好色そうな目でそちらを見る。
「よかったら教えてくれないか?」
僕はやれやれといった感じで教えてあげる。
真実をな!
「あれは女装をした僕の従者で弟のアルスと申す者です」
「・・・・・・弟っ!!!」
驚いたようにアルスをまじまじと見る。
モハッドの後ろに控えていた二人、特に生徒会長は目を見開いた。
「えっ!あ、あれがあのアルスだと・・・」
僕は笑みを浮かべてしまう。
こいつらに、一杯食わせることができたな。
「まさか、第一皇子はそちらの方に趣味がお有りで?」
僕の質問にモハッドが首を振る。
「そんな根も葉もないことを言うな!」
チッ、この男の性癖は噂程度にしか広められないか・・・
「オホンッ、そろそろ本題に入っていいか」
咳払いを一つしてモハッドは話し始める。
「話は単純だ、こちらの陣営に入ってくれ!」
「お断りします」
もちろん即答だ。
「提示条件も聞かずにか?」
僕は一瞬口をつぐむ。
そう、今回の交渉に関しては条件があまり分からない。
おそらく前回の第二皇子との交渉内容は知られているはず。
つまり、条件も変えてくるだろう。
「では一応聞きます」
「そうだな、色々とあるが、貴様が一番欲しそうなものをあげよう」
「何ですか?」
「公爵家を継いだあかつきには、新たな位、王爵を上げようではないか」
王爵、だと?
基本的に、国家の王も一つの爵位として言われることがある。
皇帝だったら帝爵、そして王だったら王爵。
つまり、王になれるのだ。
だが、これは毒饅頭だ。
絶対に危ないやつだ。
手を出した瞬間、貴族たちから反感を持たれて、皇帝になった第一皇子に倒されるだけ。
「まあ、どのような条件でもお断りはしますよ」
「何故だ!!!」
僕は第一皇子の家柄も血筋も認めている。
第二皇子時のように見下してはいない。
ただ、
「モハッド殿下、あまり虎の尾は踏まないほうが良いですよ。いずれ痛い目にあいますから」
僕はそう言って立ち上がり一瞥もくれずにその場を後にした。
25
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。


フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる