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学園編 4章

第122話 帝立学園祭③

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初日には色々とあったものの、無事に三日目を迎えた。

二日目は特に大きな事件も起きず、フリーの時は演劇などを見て時間を潰した。

そして最終日の三日目。

思わぬ人が来店する。

「げっ!」

たまたま調理場から顔を出していた僕は、入ってきた客を見て、気が動転した。

入ってきたのは、父とセバス、オールド。それに母と妹のアンナまで来ていた。

「おい、ルイ。顔を出しなさい」

すぐに顔を引っ込めた僕に声をかける父。

「ルイ様、旦那様がこう言っていますよ」

セバスも促すが知らん顔をする。

「ルイ、顔を見せなさい」

母の言葉も無視する。

「にいさまは何処ですか?」
「ここだぞ!!!」

アンナに呼ばれて顔を出す。

「「「はぁぁ~~~」」」

大人たちのため息が重なる。

何か不満なのか?兄が妹の呼びかけに答えるのは当然だろ?

「あ、ルイにいさまでしたか・・・」
「アンナ、その反応は兄が悲しむぞ」

明らかに落胆した顔。

「いえ、ルイにいさまにもあいたかったですが、アルスにいさまとレーナねえにもあいたいです!」

よし、可愛いから良しとしよう!いまさっきのことは忘れる!

「妹って、貴方と真逆の純粋な子ね」

話を聞いていたのか、ナータリが顔を出す。

「おい、それどういう意味だ?」
「そのまんまよ。兄に似てないという意味」

それは間違った認識だ!

「これからどれだけ家柄が偉大で大事なのかを教えていく!」

ナータリは僕の言葉を無視して両親に挨拶をしに行く。

「お初にお目にかかります、ナータリ・デ・フットナと申します、ブルボン家―」
「そんな畏まらなくて結構だよ。ここは社交界でもなんでも無いからね」

貴族の堅い挨拶を始めたナータリを父が制止する。

「君の話はよく聞いているよ。ウチの息子が世話をかけたね。ああ、長男の方だよ、もちろん」

おい父、最後のは本当にいらないぞ!!!

「あら、貴方がナータリちゃん!あのフットナ家の長女さんよね!よろしくね」

スキンシップの激しい母がナータリにハグをする。

その行動に困惑するナータリ。

無理もない。

僕の家族は公爵家のくせに異様にフレンドリーなのだ。

父は社交界では厳格なイメージだが、いざ領地に帰ると平民と交流したり積極的に公共事業をする、所謂「良い当主」である。

母も昔ほど身分の低い者への差別も無くなり、より明るくなった。

社交界などに行くとごく自然に婦人たちの輪の中心となる、活発な人だ。

アルスもアンナも明るい性格で(アルスの場合は外面だけだが)非常に人気が・・・・

あれ?で、僕は?

僕はこの家族の中では、はぐれ―――

いやいや、そんなことはない!

僕こそ名門ブルボン公爵家次期当主、ルイ・デ・ブルボンだ!

それ以上でも以下でも無い。

そして僕以上は存在しない!


先程からナータリと喋っていた母だが、突然何かを思い出したかのようにセバスに目線を送る。

「レーナ、貴方が言っていたものを取り寄せて持って来たわよ」
「!ありがとうございます、奥方様」
「いや、私も見てみたかったしね!ウフフ」

何やらこそこそ話す二人。

セバスが持っていたカバンから取り出したのは、白と黒の・・・!!!

セバスが広げると、それはメイド服だった。

「母上、それは一体?」
「ええ、これはアルスに着せるやつよ」

!!!!!!!

「え、ちょ、ど、どういうことですか?」

言われた本人はあんぐりと口を開ける。

「そのままの意味よ、さ、アルス、これを着てみて」
「ま、待ってください、奥方様!理由を―」
「理由は、その私の呼び方よ。昔は色々と言って私も反省している。だから母上と呼びなさいと言ったはずなのに、全然直してくれないじゃない。だから、これは罰よ」

アルスは赤面する。

これは見ものだ。なかなか見れないぞ、こんなアルス!

「レーナ、謀ったな!」
「何のこと?ちなみに、この前、友達自慢してきたことはまだ根に持っていますから」
「この友達無しのぼっち女が!」

すごい形相でレーナを睨むアルスは、捨て台詞を残して裏の更衣室へと姿を消す。

しばらくするとレーナもメイクをするためにいなくなる。

しばし、また二人の喧嘩する声が聞こえた後、ついにアルスが出てきた。

その姿に皆が息を飲む。

「やっぱりオーダーメイドにして正解だったわ!」

少し長めの髪を左右に纏め、僕より一個年下のまだ幼さの残る顔立ちに化粧をしているためか、完全に女子と見間違えてしまう。

黒と白のピッタリのメイド服は、膝までしかスカート丈が無く、アルスは恥ずかしそうに前からおさえる。

ワザとなのかそれとも恥ずかしさからなのか、足が内股になっており、赤面している顔も相まって妙な色気を出している。

「母上と呼びなさい」
「母、上・・・」

「プッ」

僕は必死に笑いをこらえる。

「絶対殺す、殺す、殺す」

レーナを睨みながら呪詛のように唱える。

普段見れない困り顔の赤面アルス。

面白いものが見れた!
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