39 / 188
少年編 3章
第39話 子供
しおりを挟む
「おい、まだか!」
既に騎士を呼びに行って二十分。未だに連絡すら無い。
「ここの町の騎士は大丈夫なのかよ。後で文句言ってやる」
僕はソワソワしながら孤児院の入り口で待っていた。
何か嫌な予感が先程からするため、余計に苛立つ。空は既に暗くなりつつあり、孤児院全体に不安が募っていく。
「あの~、そのことなのですが」
僕の呟きを聞いてか一人の孤児院で働く男が近寄ってくる。
「実は、ここの孤児院は町から嫌われているのです」
「何故?」
「町のお金で一部支援して貰っているためです。町の人々からは無駄に税金を使っていると言われまして・・・。町の役場の方々にも下に見られていまして」
なるほど、そういうことか。こういう時に面倒くさいな。
「おい、僕の名前―」
グァアアァァァァ!!!!
大きな咆哮が森の奥から聞こえてくる。
「チッ」
思わず舌打ちをしてしまう。
恐らくレーナか子供たちのどちらかが見つかったのだろう。
「糞、僕は何を焦っているんだ」
イライラが止まらず、早く行きたい衝動に駆られる。
どうしてこんなにも焦っている?そう自問せずにはいられない。
たかが孤児院の子供、特別でも何でも無い死んでも誰も悲しまない存在。貴族である僕が心配する問題でもなくほっといて任せればいいい話。
自分の所有物だからか?だったらもっと余裕があっただろう。
この孤児院が楽しかったからか?否、中身が大人な僕がそんな事を思うはずなど・・・ほんの少しだけ思ったが置いておこう。
では、どうしてか?
「子供、か」
答えを呟く。
もし前世に心残りがあるとしたら置いてきてしまった自分の子供の事だ。
好きでもない妻が産み、両親に奪われた家族。
家族や周囲の中で唯一僕の姿を知らない人。
「まさか自分の子供に会いたいなんて思ってしまうとは」
自分から命を捨て、前世からの繋がりを断ったというのに。
何処かで心残りになっていた。
孤児院の子たちを見て、自分の子供を想像してしまった。
もし成長していたらこのぐらいなんだなー、と。
だから、あのクソガキに付き合ってしまったのかも知れない。
「行くかー」
「?ルイ兄様、先程から何を呟いているのですか?」
戦闘服を着たアルスが近寄ってくる。
「おい、アルス。僕の名前を出して早く騎士を連れてこい」
「!分かりました」
指示を出すと僕は森の方へと歩き出す。それを見てアルスが言う。
「ルイ兄様はどちらに?」
「ちょっくら、散歩してくるよ」
「え!?」
アルスの驚きを無視して、詠唱した。
「【リミット・ブースト】」
聖級の身体強化魔法リミット・ブーストは、速さを極限まで高める魔法。人が耐えうるギリギリまで強化させるのだ。
僕が一歩踏み出すごとに数十メートル進む。
木々を避け探知をしながら進んでいく。
グアアアア、コケーーーー!!
近くから咆哮が聞こえてきた。
「相手はコカトリスか」
独特な鶏の様な鳴き声。
探知をそちらの方に向けると、十の魔力の流れを感じた。
「全員まだ生きているな」
つい安堵の声を漏らしてしまった。
「あ”あ”糞!僕らしくないな。後でたっぷりと孤児院から搾り取ろう」
近くへと来た時、一気に視界が開ける。前方数十メートルにコカトリスと倒れて動かなくなっているレーナを目視する。よく見ると脇腹から血が流れ出ていた。どうやらレーナが一発御見舞したらしい。
コカトリスはこちらに気づかず自分を傷つけたレーナへと鋭い鉤爪で殺ろうとする。僕は地面を力強く踏み、一気にレーナの前へと行く。
「う、」
息はしているようだが体中は傷だらけ。
「コカトリスに一撃入れたとは大したもんだ」
僕は気を失っているレーナを小声で褒める。
「おっと、そうだった。壁となれ、【トリプルシールド】」
頭上から切り裂くように振ってきた大きな鉤爪をシールドで防ぐ。一枚目と二枚目は割れたが、最後の一枚までは割られなかった。
グアアアア、コケーーーー!!
自分の攻撃を何処からか現れた人間に防がれ、怒り狂うように雄叫びを上げる。
「鶏風情が。第二ラウンドだ」
既に騎士を呼びに行って二十分。未だに連絡すら無い。
「ここの町の騎士は大丈夫なのかよ。後で文句言ってやる」
僕はソワソワしながら孤児院の入り口で待っていた。
何か嫌な予感が先程からするため、余計に苛立つ。空は既に暗くなりつつあり、孤児院全体に不安が募っていく。
「あの~、そのことなのですが」
僕の呟きを聞いてか一人の孤児院で働く男が近寄ってくる。
「実は、ここの孤児院は町から嫌われているのです」
「何故?」
「町のお金で一部支援して貰っているためです。町の人々からは無駄に税金を使っていると言われまして・・・。町の役場の方々にも下に見られていまして」
なるほど、そういうことか。こういう時に面倒くさいな。
「おい、僕の名前―」
グァアアァァァァ!!!!
大きな咆哮が森の奥から聞こえてくる。
「チッ」
思わず舌打ちをしてしまう。
恐らくレーナか子供たちのどちらかが見つかったのだろう。
「糞、僕は何を焦っているんだ」
イライラが止まらず、早く行きたい衝動に駆られる。
どうしてこんなにも焦っている?そう自問せずにはいられない。
たかが孤児院の子供、特別でも何でも無い死んでも誰も悲しまない存在。貴族である僕が心配する問題でもなくほっといて任せればいいい話。
自分の所有物だからか?だったらもっと余裕があっただろう。
この孤児院が楽しかったからか?否、中身が大人な僕がそんな事を思うはずなど・・・ほんの少しだけ思ったが置いておこう。
では、どうしてか?
「子供、か」
答えを呟く。
もし前世に心残りがあるとしたら置いてきてしまった自分の子供の事だ。
好きでもない妻が産み、両親に奪われた家族。
家族や周囲の中で唯一僕の姿を知らない人。
「まさか自分の子供に会いたいなんて思ってしまうとは」
自分から命を捨て、前世からの繋がりを断ったというのに。
何処かで心残りになっていた。
孤児院の子たちを見て、自分の子供を想像してしまった。
もし成長していたらこのぐらいなんだなー、と。
だから、あのクソガキに付き合ってしまったのかも知れない。
「行くかー」
「?ルイ兄様、先程から何を呟いているのですか?」
戦闘服を着たアルスが近寄ってくる。
「おい、アルス。僕の名前を出して早く騎士を連れてこい」
「!分かりました」
指示を出すと僕は森の方へと歩き出す。それを見てアルスが言う。
「ルイ兄様はどちらに?」
「ちょっくら、散歩してくるよ」
「え!?」
アルスの驚きを無視して、詠唱した。
「【リミット・ブースト】」
聖級の身体強化魔法リミット・ブーストは、速さを極限まで高める魔法。人が耐えうるギリギリまで強化させるのだ。
僕が一歩踏み出すごとに数十メートル進む。
木々を避け探知をしながら進んでいく。
グアアアア、コケーーーー!!
近くから咆哮が聞こえてきた。
「相手はコカトリスか」
独特な鶏の様な鳴き声。
探知をそちらの方に向けると、十の魔力の流れを感じた。
「全員まだ生きているな」
つい安堵の声を漏らしてしまった。
「あ”あ”糞!僕らしくないな。後でたっぷりと孤児院から搾り取ろう」
近くへと来た時、一気に視界が開ける。前方数十メートルにコカトリスと倒れて動かなくなっているレーナを目視する。よく見ると脇腹から血が流れ出ていた。どうやらレーナが一発御見舞したらしい。
コカトリスはこちらに気づかず自分を傷つけたレーナへと鋭い鉤爪で殺ろうとする。僕は地面を力強く踏み、一気にレーナの前へと行く。
「う、」
息はしているようだが体中は傷だらけ。
「コカトリスに一撃入れたとは大したもんだ」
僕は気を失っているレーナを小声で褒める。
「おっと、そうだった。壁となれ、【トリプルシールド】」
頭上から切り裂くように振ってきた大きな鉤爪をシールドで防ぐ。一枚目と二枚目は割れたが、最後の一枚までは割られなかった。
グアアアア、コケーーーー!!
自分の攻撃を何処からか現れた人間に防がれ、怒り狂うように雄叫びを上げる。
「鶏風情が。第二ラウンドだ」
21
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい
えながゆうき
ファンタジー
停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。
どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。
だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。
もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。
後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる