上 下
22 / 179
少年編 2章

第22話 潰しますか!

しおりを挟む
証拠などを集めた僕らは急いで準備を終える。

向かうはアルマー侯爵領。

捕まえた長男のダンの引き渡しと自白を取るために。

証拠はある程度を司法に引き渡しており、すぐにでも取り調べが行われるだろう。

だが、取り調べが始まると取り潰すのは難しい。

貴族は金と権力に物を言わせて捜査の邪魔や証拠隠滅は当たり前、常識だ。

だから、それをされる前に証拠をこちらが突きつけて自白を促すことで取り潰せる。

まあ、本当の意味の取り潰しにはならない。

捜査の始まる前の自白だから罪は軽くなり、爵位の格下げと領地替え、罰金が課されるだろう。

僕はそれで満足する。


さて、僕らは魔物狩りと称してアルマー家の領地に入った。

向こうの家は嫡男が捕まったなどで色々と慌ただしくなっていると間者から報告があった。

証拠の隠滅に動いているようだが遅すぎる。

こちらは大体を掴んでいる。


僕らは形だけの軽い魔物討伐をやり、アルマー家の本拠の街に宿泊をした。

当然僕は特別待遇でアルマー家の邸宅の敷地にある客館に止まることになった。

「ようこそ、いらっしゃいました」

青筋を立てながらもなるべく穏やかに挨拶をしてくるアルマー侯爵家当主。

「ああ、世話になる」

軽く返事を返すとさらに青筋を立てた。

「ルイ殿、急な魔物討伐でしたね。我が領内でどうして行ったのですか?私共は特に兵士不足はありませんでしたよ」
「気分だ、気分」
「ですが、」

はぁ~察しは付いてるだろうに何をそんなに聞いてくる?

まさか未だに僕が潰しにかかっている、と知らないわけ無いだろうに。

「今は眠いんだ。また明日話をする」

最後の審判の話を。

「・・・・・・分かりました」

少しの沈黙の後、返事をしてくる。

まあ、こいつの魂胆は丸分かりだ。

今夜襲撃をかけてくるのだろう。

客館に連れてきた護衛は、アルスとレーナ、オールド、他騎士二名。

少ないように見えるが実力は十二分すぎる。

街の宿には連れてきた五十人の騎士が宿泊している。

戦闘になっても負けはしない布陣だ。


次の日

僕は気持ちよく目覚めた。

近くにいたアルスが汗だくだったのでどうしてか聞いてみると、昨晩襲撃があったと言った。

十人ほどの暗殺者が送り込まれたらしいが、五人で全てを返り討ちにして三人を捕らえたらしい。

僕は暗殺者が送り込まれたことを気にすること無く朝食を食べ、服に着替えた。

「あの、ルイ様」

着替えをしている途中、レーナが神妙な顔をして聞いてくる。

「何だ?」
「どうしてそこまで私の為にしてくれるのですか」

一瞬、何を言っているのだと思ったが、少し考えて納得する。

「・・・なるほど、確かに僕はお前のために、救うために行動をするのはおかしいと思われるだろう。お前に恋をしていると思われても仕方がないが、別にそういう訳では無い」
「では何故?」
「そうだな、あえて言うならお前が、レーナが子供だからだ。僕と変わらない子供だから」
「???」

上手く説明なんてできない。でも、救うべきだと思ってしまった。

「と、とりあえず行くぞ。戦う覚悟はできたか」
「はい」

ちょうど着替えが終わる。

さて、潰しに行くか。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...