21 / 188
少年編 2章
第21話 思い
しおりを挟む
「さて、これからアルマー侯爵家を潰すための会議を始める」
僕の部屋に今いるのはアルス、セバス、オールドの三人。
「一つ質問よろしいですか、坊っちゃま」
オールドが手を上げる。
「何だ?」
「このことは当主様はご存知なのですか?」
「それについては心配ない。父様は静観を貫くらしい。だから全ての責任はセバスが背負う」
「はっ!」
セバスが答えるように返事をする。
僕が責任を全て被るべきだって?馬鹿言っちゃいけない。そんなの部下に押し付けるのは当然だろ。
まず子供がそれを背負えるはず無いじゃないか。
「しかし、坊っちゃま。本当に潰しに行くんですか?」
「何?不満か?」
「いいえ。ただ不安です。仮にも相手は侯爵家。簡単にはいけません」
オールドは諭してくるが、彼自身潰せないとは発言していない。ただ、不安であるとしか言っていない。
「潰せるから潰す。僕だって無謀なことはしないよ」
「それならまあ、いいですけど」
反対意見など言語道断だ。
「ルイ兄様、発言いいで―」
「却下だ」
「何で!」
「冗談だ。発言は何だ?」
頬を膨らませながらアルスは質問してくる。
「どうしてあの奴隷を助けるような事をなさるのですか?」
「助ける?僕はただ自分の奴隷を奪おうとしたことへの報復だが」
「それでも、潰す必要は無いように感じます。あくまで奪ってきたのはダン令息です。その家にまで報復する理由はありません」
「・・・・・・」
「ですから、もしかするとあの奴隷の為にかと」
・・・言われて、確かに自分の主義に反することだと思う。
レーナが元伯爵令嬢とはいえ、今は僕の奴隷。しかも本来、敵になるはずのやつだ。
たかだか奴隷を奪われそうになったからって、侯爵家を潰すと言う行為はおかしな話だ。
レーナに恋をして、彼女のために陥れた侯爵家を潰すという方が筋書きとしては納得行くかも知れない。疑問に思われるかも知れない。
別に僕はレーナに恋をしてるわけではなく、助けようとしているわけでもない。
「そうだな、敢えて言うならレーナを救おうと思ったんだ」
「「「???」」」
三人とも意味も分からず首を傾げた。
まあ、そういう反応するよな。
本来家柄、血筋、身分が絶対!何て言ってるやつが奴隷を救うなどと発言するのだから。
もう一度言うが、自分の主義に反する行動だ。
だが、レーナは前世の僕と似た部分があった。
家に恵まれながらも僕と違った形で落ちぶれてしまい、持っていたものを全て奪われ、親にも捨てられる。
唯一違うとしたら生への個質。
僕は生を求めながらも何処かで諦めていた。そりゃ~そうだよ。大人なんだから現実ぐらい多少分かる。
だが、レーナはまだ生に個質している。何処かで救われると願っている。そして子供だから夢見がちで現実を知らない。
自分みたいにはなって欲しくない。
こんなガチガチの思想を持つ僕みたいのにはなって欲しくない。
第二の人生を生きているものとして前世での後悔は拭っても拭いきれない。
せめて、レーナには、似たような奴には、子供には。
救われてほしい。
それが僕の中に残っている唯一の善心。
三度目だが自分の主義に反する行為だ。
だが、それでも救う価値はあるかもしれない。
もしかすると救ったことで僕に忠誠を誓って・・・
そうだよ、僕は打算的に救うんだ。侯爵家を潰すんだ。
自分に言い聞かせるように言う
「まあ、とりあえず本題に移る。作戦は簡単だ。証拠を突きつけて自白させ、そのまま裁判に掛けて取り潰す。正攻法だ」
「そんなに上手くいくのですか?」
「心配ない。上手くやる。セバス、証拠は?」
セバスを見ると自信満々そうな顔を浮かべる。
「既に頼まれた奴隷商人、不正な金の動き、アルダリース伯爵家を陥れた実行役の貴族の証言も取れました」
「よろしい。では潰しに行く。出立だ」
「「「はっ!」」
公爵家の下の身分のくせにいい気になっている奴を蹴り倒してやる。
僕の部屋に今いるのはアルス、セバス、オールドの三人。
「一つ質問よろしいですか、坊っちゃま」
オールドが手を上げる。
「何だ?」
「このことは当主様はご存知なのですか?」
「それについては心配ない。父様は静観を貫くらしい。だから全ての責任はセバスが背負う」
「はっ!」
セバスが答えるように返事をする。
僕が責任を全て被るべきだって?馬鹿言っちゃいけない。そんなの部下に押し付けるのは当然だろ。
まず子供がそれを背負えるはず無いじゃないか。
「しかし、坊っちゃま。本当に潰しに行くんですか?」
「何?不満か?」
「いいえ。ただ不安です。仮にも相手は侯爵家。簡単にはいけません」
オールドは諭してくるが、彼自身潰せないとは発言していない。ただ、不安であるとしか言っていない。
「潰せるから潰す。僕だって無謀なことはしないよ」
「それならまあ、いいですけど」
反対意見など言語道断だ。
「ルイ兄様、発言いいで―」
「却下だ」
「何で!」
「冗談だ。発言は何だ?」
頬を膨らませながらアルスは質問してくる。
「どうしてあの奴隷を助けるような事をなさるのですか?」
「助ける?僕はただ自分の奴隷を奪おうとしたことへの報復だが」
「それでも、潰す必要は無いように感じます。あくまで奪ってきたのはダン令息です。その家にまで報復する理由はありません」
「・・・・・・」
「ですから、もしかするとあの奴隷の為にかと」
・・・言われて、確かに自分の主義に反することだと思う。
レーナが元伯爵令嬢とはいえ、今は僕の奴隷。しかも本来、敵になるはずのやつだ。
たかだか奴隷を奪われそうになったからって、侯爵家を潰すと言う行為はおかしな話だ。
レーナに恋をして、彼女のために陥れた侯爵家を潰すという方が筋書きとしては納得行くかも知れない。疑問に思われるかも知れない。
別に僕はレーナに恋をしてるわけではなく、助けようとしているわけでもない。
「そうだな、敢えて言うならレーナを救おうと思ったんだ」
「「「???」」」
三人とも意味も分からず首を傾げた。
まあ、そういう反応するよな。
本来家柄、血筋、身分が絶対!何て言ってるやつが奴隷を救うなどと発言するのだから。
もう一度言うが、自分の主義に反する行動だ。
だが、レーナは前世の僕と似た部分があった。
家に恵まれながらも僕と違った形で落ちぶれてしまい、持っていたものを全て奪われ、親にも捨てられる。
唯一違うとしたら生への個質。
僕は生を求めながらも何処かで諦めていた。そりゃ~そうだよ。大人なんだから現実ぐらい多少分かる。
だが、レーナはまだ生に個質している。何処かで救われると願っている。そして子供だから夢見がちで現実を知らない。
自分みたいにはなって欲しくない。
こんなガチガチの思想を持つ僕みたいのにはなって欲しくない。
第二の人生を生きているものとして前世での後悔は拭っても拭いきれない。
せめて、レーナには、似たような奴には、子供には。
救われてほしい。
それが僕の中に残っている唯一の善心。
三度目だが自分の主義に反する行為だ。
だが、それでも救う価値はあるかもしれない。
もしかすると救ったことで僕に忠誠を誓って・・・
そうだよ、僕は打算的に救うんだ。侯爵家を潰すんだ。
自分に言い聞かせるように言う
「まあ、とりあえず本題に移る。作戦は簡単だ。証拠を突きつけて自白させ、そのまま裁判に掛けて取り潰す。正攻法だ」
「そんなに上手くいくのですか?」
「心配ない。上手くやる。セバス、証拠は?」
セバスを見ると自信満々そうな顔を浮かべる。
「既に頼まれた奴隷商人、不正な金の動き、アルダリース伯爵家を陥れた実行役の貴族の証言も取れました」
「よろしい。では潰しに行く。出立だ」
「「「はっ!」」
公爵家の下の身分のくせにいい気になっている奴を蹴り倒してやる。
26
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる