異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
7 / 188
少年編 1章

第7話 生涯の主君 (アルス視点)

しおりを挟む
ボクは嫌われていた。

だれもボクが生まれてくることを望んでいなかった。

父さんも母さんも誰も。


小さい頃から父さんはいないものだと思っていた。

しかし、実際は違った。

ボクは公爵家、ブルボン家の血が半分入っていた。

ボクの父さんは公爵家の当主だったようで、母さんが亡くなると同時に迎えに来てくれた。

正直公爵という位がどれほど偉いかわからない。

でも、街で一番でかい家を持っていることにはビックリした。

まさかいつも眺めていた家に父さんが居るなんて思わなかった。


ボクは喜んだ。

父さんが迎えに来てくれたこと、これからも一緒に居られることを。

でも、実際は違った。


父さんには別の奥さんがいたようで、その人に怒られていた。

その人のボクを見る目は軽蔑と蔑み。

恐ろしくて堪らなかったけど何とか耐えれた。

新しい生活が始められる!

そう意気込んだけど・・・・・・地獄を見た。


屋敷の人のボクを見る目は父さんのあの奥さんと一緒。

軽蔑と蔑み。

苦しかった、辛かった。

まだ数日しか経っていないのにもう逃げ出したくなった。

ボクに食器洗いや掃除、洗濯。全てを任された。

五歳のボクには辛かった。

ちゃんと出来なければ怒鳴られ叩かれる。

力のないボクは耐えるしか無かった。


父さんはボクを避けて全く会えなかった。


ボクは一人なんだ。



そんなある日。

洗濯を押し付けられ、反抗してしまい、叩かれた時。

「おい、お前ら」

誰かがこちらに声をかけて歩いてくる。

「これはルイ坊ちゃま」

ルイ?ああ、初日に見たあの子。

おそらくこの家の長男で次期当主。ボクの同父異母の兄なんだ。

きっと凄く自尊心が高くて、人を見下すような人なのだと思った。

「私達はですね―」
「言い訳は良い。クビだ」
「そ、そうですよね。こんな汚らわしい―」
「お前らのことを言っているんだ」
「「「・・・はい?」」」

メイドさんたちが首を傾げる。ボクもポカンとする。

「聞こえなかったか?お前らを解雇するって言ったんだ」
「ど、どうしてですか!」

我に返った一人のメイドさんが慌てて聞き返す。

「どうしたもこうしたもあるか。お前らは仕事をサボっていたのだぞ」
「そ、それは」
「言い訳はいい。お前らがサボるために仕事を押し付けていたことは父様に言っておく」
「ま、待ってください」

メイドさんの一人がボクを睨みつけて話し出す。

「どうしてこんな卑しい奴の肩を持つんですか!?」

たしかに・・・そうだ。何故、助けられたんだ?

「たしかに、アルスとは同じ父でも、母の身分は違う。僕は公爵令嬢、そいつは娼婦」
「ですから―」
「勘違いするな。僕のような家柄がしっかりした高貴なものにとって、平民は平民でしか無い。お前らメイドは家で働いて何か思い上がっているようだが、所詮平民の血筋に過ぎない」
「う、うう・・・」
「しかも、仮にも僕の弟だ。これから僕の為に働いてくれる将来の部下だ。だから、手を出したら承知しない」

そう言い放たれるとメイドさんたちは悔しそうな表情を浮かべた。

何かぶつぶつと言いながらその場を去っていった。

後にボクとルイさんが残された。

「あ、あの~」
「お前も勘違いするな。あくまでお前の将来を見込んで助けたんだ。僕を主君として崇めない言うならこの家から追い出す」

厳しい目で見つめられる。でも、

「いいえ、ボクは貴方様にお仕えしていきます」

一人だったボクに手を差し伸べてくれた、守ってくれた人。

どんな理由があろうと、助けてくれた人。

ボクをどんなふうに見てようが救ってくれた人。

ボクに選択なんて無い。

きっとこの人は良い人だ。

子供のボクには見極める力は無いけど、仕えてもきっと後悔しない。

そうボクは感じた。


家臣になるには臣下の礼をやるらしいが分からない。

だから自分なりにやった。

膝を付き、頭を下げて言う。

「ボクは、え~っと貴方様に剣?を捧げます」

剣は持ってないけど、昔物語に出てきた礼の仕方を真似する。

「うむ、その剣僕のためにだけ使え」
「は、はい、え~っと」
「・・・僕のことは様を付けて呼べ」
「はい、ルイ兄様」
「!!!・・・まあ、いい」

多くの人々に嫌われたボクは、生涯の主君を見つけた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...