上 下
6 / 179
少年編 1章

第6話 卑しい子

しおりを挟む
「よ、よろしく、お、お願いします」

茶髪で背の低い、可愛らしい男の子が頭を深々と下げる。

「アルス、今日からはしっかり家の為に励めよ」
「は、はい、父上・・・?」
「私のことは・・・まあそのままでいい」

父が母を気にしながら言う。

母はそんな父と茶髪の男の子を睨みつける。

「汚らわしい」

ボソリという母の声が男の子の耳に入ったらしい。悲しい表情を浮かべて縮こまる。

「あなた、どういうことなのか説明してもらうわ。ルイ、貴方は下がっていなさい。そこのお前は・・・自分の部屋に行きなさい。私の視界に入らないで」

いつもとは違う荒々しい言葉遣いで言う母。

僕はそんな地獄の雰囲気な部屋からそそくさと立ち去った。


僕の誕生日の次の日。

突然父が子供を連れてきた。

茶髪のその男の子の名前はアルス。父の隠し子だった子だ。

どこぞの娼婦との間に生まれたようで、最近母親が死んだらしい。

そのため父が引き取った。

そんなアルス・デ・ブルボンは僕の家族となった。一歳年下だ。


実は僕はこいつの存在を知っていた。

前世の記憶内にしっかりあった。

僕の天敵、蹴落とす一人として。


小説内でのアルスはあまり登場しない。
名前がチラッと出るぐらい。

しかし、系列作品いわゆるスピンオフ作品の主人公として出てきた。

不幸な生まれのアルスは最初、家の中で虐げられていた。
しかし、段々と剣の才能に目覚めていき、ある女性に出会うことで魔法の力も付けていく。
だんだん強くなっていき、父、そして義母(ヨーハナ)にも気に入られていく。
ルイ(僕)はそんなアルスを目の敵にして嫌がらせをしようとするが、それを物ともせず成長していく。

物語は本編ともかぶる。

本編での終盤、ルイは自分を認めない公爵家を乗っ取ろうと反乱を起こして失敗したと書かれていた。

そして、その立役者がアルス。詳細はスピンオフで語られた。

ルイがごろつきや傭兵を雇って公爵家を乗っ取ろうとしたが、規格外の力でアルスが退け、敗退。

そのままアルスが次期当主となった・・・というわけだ。

つまり、僕の天敵の身分が低いが成り上がっていくやつだ。


身分は卑しい娼婦の生まれ。前世の時代でも差別されるぐらいだ。

この世界での差別は計り知れない。

僕自身血筋がよろしく無い奴は嫌いだ。


さて、この後のことを考えよう。

このままあいつをいじめ倒しても最悪の未来しか無い。

何か、無いか・・・



そんな事を数日間考えていたある日。

いつものように魔法の練習を終わらせて、歩いていた。

中庭を通り抜けようとした時、誰かの罵声が聞こえた。

「卑しい身分の生まれが、何もできないじゃない!」
「ご、ごめんなさい・・・」
「謝って済む問題ではないわ!あんたは奴隷も同然よ!」
「す、すいません・・・」
「ふん、汚らわしい」

覗き見てみると、複数のメイドがアルスをいじめていた。

地面に転がっていたアルスを軽蔑した目で見て罵倒している。

メイドからもいじめられるとは。

「早く私達の分もしっかり洗うこと」

そう言って洗濯物をアルスに渡す。

なるほど、やりたくないから押し付けようとして、拒否されて怒っているわけか。

「しかし・・」
「口答えするんじゃないの!」

 バチッン

強烈なビンタがアルスに飛ぶ。

わぁ~お、痛そう。

「すいません、すいません・・・」

何度もアルスは謝る。

そこは従わないと。

さて、どうしよう。

これからの行動で未来が変わってくる。


 ・・・・・・引き込むか。


手元においていたほうが安心できるし、味方にいれば心強いやつだ。

専属護衛騎士にでも仕立て上げるか。

僕は意を決して中庭へと歩く。

「おい、お前ら」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界で俺はチーター

田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。 そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。 蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?! しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【創造魔法】を覚えて、万能で最強になりました。 クラスから追放した奴らは、そこらへんの草でも食ってろ!

久乃川あずき(桑野和明)
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ『面白スキル賞』受賞しました。 2022年9月20日より、コミカライズ連載開始です(アルファポリスのサイトで読めます) 単行本は現在2巻まで出ています。 高校二年の水沢優樹は、不思議な地震に巻き込まれ、クラスメイト三十五人といっしょに異世界に転移してしまう。 三ヶ月後、ケガをした優樹は、クラスメイトから役立たずと言われて追放される。 絶望的な状況だったが、ふとしたきっかけで、【創造魔法】が使えるようになる。 【創造魔法】は素材さえあれば、どんなものでも作ることができる究極の魔法で、優樹は幼馴染みの由那と快適な暮らしを始める。 一方、優樹を追放したクラスメイトたちは、木の実や野草を食べて、ぎりぎりの生活をしていた。優樹が元の世界の食べ物を魔法で作れることを知り、追放を撤回しようとするが、その判断は遅かった。 優樹は自分を追放したクラスメイトたちを助ける気などなくなっていた。 あいつらは、そこらへんの草でも食ってればいいんだ。 異世界で活躍する優樹と悲惨な展開になるクラスメイトたちの物語です。

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在三巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...