その溺愛は行き場をさまよう

七天八狂

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【おまけSS】R18メインの話です

おねだりしてみた生田くんの独り言②

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 この高級ホテルの部屋に入ってまず目につくのは、床から天井まで続く壁一面の窓である。つまり、絶景を楽しむことができるわけである。
 コーヒーの置いてあるリビングスペースに出ると、その窓から溢れんばかり日光が差していて、思わず目をつむってしまうくらいだ。
 前回来たときは夜で最上階だったから、ビル街の照明がイルミネーションのようにキラキラとして、まごうことく絶景だった。
 しかし今回は別の部屋であり、フロアもずっと下のほう──目の前にはビルが立ちふさがっており、平日の昼間である今は、忙しなく働いている人が同じ目線のビルにいる。
 バスローブを羽織っているとはいえ、布一枚でその下は全裸というのは、なんとも気恥ずかしい。

「少しぬるいかもしれない」

 コーヒーを注ぎ入れた透が、カップを差し出してくれた。

「ありがとう」

 透の座るソファの隣に腰を下ろしながらカップを受け取り、一口すすって、また窓のほうへと目が向いてしまう。
 室内は日光のせいで薄暗く、目を引くものがないからだろう。
「せっかくの絶景仕様も、ビルで塞がっていたら台無しだな」
「ああ。ホテルが建ったときにはなかったから、あのビルが建って以来しばらくの間、下のフロアは不人気だったらしい」
「そりゃそうだ。こんな目の前にあったらカーテンを引いていなきゃ落ち着かない」
 そうだ。カーテンがあるのだから、閉めておけばいい。絶景が売りのホテルだとはいえ、下のフロアは最初から閉めておくべきだろうに。
「しかし、窓を変えてから以前よりも人気が出たんだ」
「窓?」
 カーテンを閉めるべく立ち上がろうとしたとき、かちゃんと陶器がぶつかる音がして、透の匂いがふわりと漂った。
 手に感触があり、透の手が重なったことに気づく。

「なに?」
「窓を見てみるといい」

 透の手が僕の持っていたカップを掴んで、テーブルに置いてくれた。
 カーテンを閉めるついでだと考えて立ち上がり、窓のほうへと向かう。

「なにが変わったんだ?」

 窓に近づいて手を触れてみるも、いたって普通の窓という感じだ。しかし、近づくと少し足がすくむというか、バスローブの下から覗き込んだら見えるのではという羞恥が湧いてくる。

「よくわかんない」

 言いながら振り返ろうとしたとき、透に後ろから抱きしめられた。驚いて肩を震わせると、すすっとバスローブの裾がめくれる感触があり、後ろに透の手が触れた。

「ちょ、何してるの? ……あっ」

 太ももから尻のほうへと透の指が這う。ぞくぞくと肌が粟立ち、後孔をすっと撫でられ、びくと震えた。
「だめだって」
 目の前には日常が広がっているというのに、こんなところでする行為じゃない。
 止めようとしても、なぜか手が動かない。どきどきして、汗ばんでいるからだろうか。せめて前がはだけないよう、押さえつけるのが精一杯だ。
「んっ」
 透は気にしない様子で、手を止めようとしない。快感にくわえて混乱と羞恥で身体が熱くなり、頭がくらくらとしてきた。
「戻ろうよ」
 嬉しいけど、するならベッドに戻ってからするべきだ。
「戻りたい?」
 耳に息がかかってまたもぞわりとする。答えはイエスに決まってる。
 口に出そうとしたら、指がぬぷりと入ってきた。
「な……んっ」
 抵抗の手を透のほうへ回すも、押し入るその動きに身体が反応してしまい、拒否しきれない。
 入っては戻り、中の感触を確かめるようにくいっと動く。前立腺を確かめるように擦られて、声が出てしまいそうになる。
 目をつむれば目の前の光景は見えない。しかし、そうすると感触に意識が向いて、ますますぞわりとくる。
「んんっ」
 透は器用にも前へと手を入れて、僕のを再び握ってくちゅくちゅとやりだした。
「あっ」
「気持ちいい?」
 首筋にキスを点々としながら透が何かを言った。気持ちいいか聞かれたのかな? 気持ちいいよ。まじで巧いんだって。
 いつの間に指が増えたのだろう。中で動くたびに身体がびくっと震えてしまう。
「戻りたい?」
 戻りたい。
 言いたいのに声が出ない。
 どうしてだろう。
 戻るべきだし、透は問いかける前に冷静になるべきだし、僕も早くイエスと答えるべきなのに。
「挿れていい?」
 いいわけない。
 そう答えたいのに、黙って期待に胸を高鳴らせてしまっている。
 指よりも熱く大きなものが触れた。
 それにより、少し冷静な頭が戻ってきた。ここでするべきではないと、慌てて腰を引いたとき、同時に透によって掴まれて、ぐぐっと押し入ってきた。
「だめっ」
 ああ、気持ちいい。大好きな感触。ゆっくり押し広げるように入ってくるとき、めちゃくちゃ感じてしまう。
「だめ?」
 うん。だめ。やめて。今すぐ抜いて。
 心では拒否しているのに、口からは出てこない。そのうえ身体は受け入れようとして腰を動かしてしまっている。
「……嫌?」
 問いかけながら、じわじわと透のものが侵入してくる。疼くほど遅々としてたまらない。迎え入れるように収縮させてしまう。一気に奥まで挿れて欲しい。
「い、いや」
 いやじゃない。続けて欲しい。
「あっ」
 ずるりと抜かれて、思わず名残惜しげな声を出してしまった。
「雅紀」
 挿れて欲しい。奥まで深く突き刺して、真っ昼間の窓際での痴態を演じたい。
「愛してるよ」
 透の声が聞こえた直後に、ずいっと奥まで貫かれた。
「ああっ」
 待ち望んだ間隔に、悦びの声をあげてしまう。はあ。窓に両手をついて、透が打ち付けてくる衝撃を受ける。
 奥まで届いたそれが、敏感な中を抉りながら入り口へと戻っていく。
 目の前には労働しているサラリーマンたちが必死に業務に励んでいる。普段なら僕もその中の一人として忙しなくしているの。それなのに、こんな行為をしているなんて。
「んあっ、んっ」
 下を見れば、老若男女がどこかへ向かって足早に歩いている。こんなただのビルを見上げる人はいないはずだ。はずだが、大きな窓に映る肌色の人形は目立つ。
 見られているかもしれない。
 そう考えるたびにぞくりとして、後ろから激しく奥を穿つ透のものをぎゅうと締め付けてしまう。
「っ、んっ」
 透の手が僕のをまたも捌き始めた。バスローブがはだけてしまう。見られてしまう。嫌なのに、やめてほしくない。見られたくないのに、見てほしい。
 なんて恐ろしく卑猥なことを考えているのだろう。
 ぞっとしていると、いきなり透は動くのをやめて引き抜いてしまった。
 くるりと反転され、バスローブがはだけた肩にひんやりとしたガラスの感触があたる。
「透……」
 言いかけた口を塞がれた。頭に手を添えられて、かつんとその手が窓に当たる音が聞こえた。反対の手は僕の足を持ち上げて、なんと窄まりに彼のものが触れる。一度受け入れ、ローションで濡れたそこは簡単に迎え入れてしまう。
 こんなところでガンガン突かれたら、窓が割れる。いや、外が見えなくなったからまだマシか。
 マシじゃない。マシなわけがない。見られてしまうのは変わらない。
「あう、んっ」
 透に両足を持ち上げられ、突き上げられる。背中がべったりと窓についた感触が襲う。そこにがつんと当たる鈍い痛み。同じリズムで後孔が擦られて、快楽をえぐられる。
 透の首に回していた腕を引き寄せて、唇を求めた。
 透の舌が熱い。息が甘い。肌が艶めかしい。目つきがエロい。
 もう、なんでもいい。この状況に興奮してしまっていようが、どうでもいい。
「雅紀が好きだと思って」
「あ、ん、なにが? んっ」
「……こういうのが」
 こういうの? 陶然とする頭で考えるも、動くたびに窓にガツガツあたる、そのベッドのきしみとも違う音に痺れて考えられない。
「雅紀、横を見て」
「えっ?」
 言われるがまま、顔を横に向けると、目の前にはオフィスビルと眼下には通行人の海だ。
「……きゅってなった」
「なに……がっ、あっ、んっ」
 締め付けたらしい。中で透のものがぎちぎちに膨らんだ。抽挿のリズムが早くなる。
「見える?」
 見えるよ。見られてしまうことをいや応なしに突きつけられ、恥ずかしい。その背徳的な恥辱が、快楽を押し上げる。人目につくところで突き上げられて悦んでるなんて、気持ちよすぎて、意識が遠のきそう。
「それ、やばい……出るかも」
 またも締め付けてしまったらしい。こちらも限界が近い。
「んっ、ん、んあっ」



 その後二回戦に突入し、あまりの興奮で終わったあとソファで倒れるように眠ってしまい、結局、タチ役なんてしている暇もなく、精力を使い果たしてしまった。

「いつもと変わらないじゃん」
 
 セックスも同じなら、いつもと同じく透に甲斐甲斐しく服を着せられているのも同じ。
 ソファに寝そべる僕の足を持ち上げて、スラックスを履かせてくれている。

「今のままでいい」

 ん?
 ぽつりと答えたが、ちゃんと聞こえていたぞ。

「まさか、最初からネコになる気がなかったんじゃないか?」
「いや……雅紀が喜ぶと思って」
「なにが?」
 聞くと、窓ガラスはマジックミラーになっており、こちらからは見えても外からは鏡のように反射して見えない仕様になっているらしい……ことをようやく白状してくれた。
 ビルが建ち、景色が悪くなって不人気になったことを逆手に取り、ガラス窓を変えることでそういった趣味の人が利用するようになったのだと言う。
「そういった趣味ってなんだよ」
「……雅紀は見られながらするのが好きなのかと」
「誤解だそれは!」
 なんてことだろう。確かに二度も悠輔たちの前でしてしまったが、それは媚薬のせいであって、僕の趣味じゃない……はずだ。多分。少しは興奮したけど、いやめちゃくちゃ興奮したかもしれないけど、だからと言って、そんな趣味は……
「ていうか答えてない。僕が喜ぶと思ってくれたのはありがたいけど、わざわざこんなところに連れてきたってことは、やっぱネコ役をやるつもりなんてなかったんだろ?」
 スラックスを履き終えて、次に靴下を履かせてくれていた透に詰め寄った。
 すると、びくっと身体を震わせた透は、おずおずとしたいつもの調子でぽつりと答えた。
「……まあ、そう、とも言える……」
「やっぱりな!」

 僕の望みを叶えるように見せかけて、あらゆる手で回避しようとする。やっぱりいつもの透だった。
 僕の望みはなるべく叶えたいと常々言う透は、その願いを無下にしたくはないものの、だとしてネコ役はやりたくないと考えて、受諾しつつも気を逸らして有耶無耶にしようとしたのだろう。一度承諾したという面目も立つうえに、僕の秘めた性癖を発見して楽しませたつもりで満足に浸っているに違いない。
 くそ。なんとかやり返してやりたい。
 ……そう思ったが、透はやりたくないことを正直に打ち明けられず、こんなふうに代替で誤魔化さなければならなかったわけだから、そもそも提案しなければよかった話だ。
 まあ、嫌なら嫌だと言ってくれたら話は早いのだが。
 そこは、これからじっくり腰を据えて話し合っていけばいいだろう。
 突き詰めれば、僕への愛がゆえの配慮なのだから。
 ただ、僕のほうも同じくらい、透がしたいことをしてあげたいと思っていることを、わかってもらえたらいいんだけど。
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