その溺愛は行き場をさまよう

七天八狂

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【おまけSS】R18メインの話です

おねだりしてみた生田くんの独り言①

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 珍しく二人の休みが重なったその前夜、たまには攻め手を交代してみないかと透に提案してみた。

「理由は?」

 驚いた様子もなく、透は問い返してきた。
 いや、四秒も間を空けるなんて透にしては遅い反応を見せたからには、多少は意表を突かれたのかもしれない。

「興味本位だよ」
「今のままで十分だ」
 おや? 珍しくも目を逸らしてきた。何か深読みでもしたのだろうか。
「いや、飽きたとかじゃないよ?」
 もしかしてと思って言い添えた反応を見るに、やはり考えすぎではないっぽい。透は何も答えないどころか一瞥もせずに立ち上がり、寝室のほうへと向かってしまった。
 だから追いかけて、就寝準備を始めているその背中を抱きしめてみた。
「お風呂では途中だったから、する?」

 しかし、透は「いい」とぼそっと答えただけで、ベッドにもぐってしまった。
 透が僕に苛立つことはないようだが、自分の殻に閉じこもってしまうことはある。透とは喧嘩はおろか、口論なんてこともしない。受け入れがたい提案をしたとき、よくこんな反応を見せる。反論はしたくとも、口では戦いたくないかららしい。
 とにかく、よほど気に食わない提案だったようだ。
 ノンケの僕をネコにしたのは透なんだから、愛があるなら試してみるくらいしてくれてもいいのに。

 多少の不満を覚えつつも、これ以上透を刺激してはいけない。バカな提案をしたせいでせっかくの休日前夜をつぶしてしまったのだから。
 おとなしく透の背中にくっつくだけにして、その日は早めに眠りについた。
 そんなやって10時前には就寝したからか、翌朝目が覚めるとまだ7時だった。休日前日はいつも深夜までいちゃいちゃしているから、仕事の日のごとくの早さに起きたことはない。
 清々しいが、昨夜の物足りなさが後を引いている。
 いや待てよ。だったら、今からすればいいんじゃないか? 一晩経ったのだから、さすがに透の機嫌も直ってるだろう。
 そう考えて、隣にいるはずの透に触れようと手を伸ばしたら、すかっとくうを切ってしまった。
 ……いない。
 どこにいったんだろう? 起き上がってみるも、寝室にはいないようだ。
 下着一枚のうえにローブをひっかけて、リビングへと向かってみた。
 すると、シャネルのスーツをビシッとキメた透が、どこぞのモデルかのごとく、ダイニングテーブルでコーヒーカップを片手に新聞を読んでいた。

「おはよ」
 声をかけると、愛する男の美しき顔に微笑が浮かんだ。やはり機嫌は直っているようだ。
「おはよう。コーヒー飲む?」
「うん……どうしたの?」
「雅紀は、今日何かしたいことある?」
 そう言えば、何の話もしていなかった。休日の被る日は前夜に予定を決めるのが恒例だ。
 今一番やりたいのは、前夜おあずけされた行為だが、ベッドのうえならまだしも、朝日が煌々と差す部屋で、スーツ姿の透を前にそんなことを言うのは少々気恥ずかしい。
「特にない、けど」
「……じゃあ、ホテルへ行かないか?」

 頭の中が透けて見えたのかと思うような誘いを受けて驚いた。
 朝食を済ませたあと、透に連れられて向かった先は、まだ恋人になる前に一度連れて来られたことのある高級ホテルだった。
 なにかイベントでもあるのか、それともランチをとるために来たのかと考えていたところ、透はまっすぐ部屋へと向かっていった。
 以前とは別の部屋らしいが、入ってみても特別変わったところはない。
 透はルームサービスを取って、コーヒーと軽食を運ばせたあと、おずおずとしながらも改まった様子を見せた。

「雅紀……」
「どうしたの?」
「その、シャワーを一緒に浴びよう」
「いいけど……」

 なにをそんなに改まる必要があるというのだろう。
 不思議に思いつつ、透に連れられてバスルームへと行くと、なぜか恥ずかしげに自らのを準備をし始めた。
 いやいや、透はタチのはずだ。準備をするのは僕のほうであり、透がする必要はない。
 まさか……

「ネコ側をやってくれるの?」
 
 思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、それほど驚いたのだから仕方がない。

「雅紀がやりたいことなら、なんでもしてあげたい」

 ぼそりと言った透の言葉を聞いて、感激で胸がいっぱいになった。アイドルを見て騒ぎ立てる人たちの気持ちがわかる。身体の底から湧き上がるこの想いを、放出しないと胸が詰まってしまうからだ。

「大好き……いや、愛してるよ、透」
「ああ……嬉しいんだが、いま途中だから」
「うん。僕がやろうか?」
「いや、だめだ」
「でも、嬉しいから」
「俺のほうが慣れてる」

 確かに、僕の準備をするときも絶対に透がやろうとする。正直なところ、本番をするよりも恥ずかしいし、最初の頃はそれだけで死にたくなるほどだったが、「雅紀は何もしなくていい」と言って強引にも始めるので、今や任せきりになっている。
 それならばと、単にシャワーを浴びていたら、透から「念のために」と言われて、なぜか僕のほうもいつものごとく準備をされてしまった。

 透は後で物足りなくなるとの懸念があるのかもしれない。満足させるつもりではあるが、なんせ透がネコ役をするのは初めてだから……待てよ。
 本当に初めてなんだろうか。僕は男を相手に挿入するのは初めてだ。だけど、根っからの同性愛者である透は、もしかしたら、悠輔のときとか……考えたくない。考えないでおこう。

 バスローブをひっかけて、ベッドのある部屋へと二人で向かう。
 酒でも飲むかと聞かれて断った。透一筋になってからと言うものまるっきり使ってないため、土壇場で役立たずになっては困る。いや、絶対に避けたい。
 透は酒に強いから、どれほど飲んでも僕の求めに応えてくれるけど、透に付き合って記憶をなくすレベルの僕は念の為でもアルコールは止めておく。

 ベッドのうえでバスローブを剥ぎ、寝転ばせた彼のうえからキスをする。

「緊張するな」

 これから攻めるという段で透を見下ろすのはどきどきする。
 ちゅっとにキスをすると、首元に透の手が回ってきて押さえつけられ、舌が入ってきた。
 透の舌に応えながら、歯茎をなぞり、唇をついばむ。
「んっ、んふ……」
 息ができなくなりそう。唾液が口の端から垂れてしまう。それをぺろりと吸った透がエロい。ぱくりと再び口を塞がれ、透の舌が中で動き回る。うっとりするほど柔らかで、溶けるように甘い。まだ触れられていないのに屹立してしまう。
「んっ……」
 屹立した途端に握られ、軽くなぞられる。透のキスでじわりと先からこぼれる透明なそれを、ぬるりと指に絡めて引っかかりをわざと擦り上げてくる。
「んっ」
 女の子に触れられても声なんて出ないのに、なぜなのか、いまだに不思議だ。透の手にかかるとすぐに先走って蕩けてしまう。
 くぷくぷと溢れ湧くそこに親指をひっかけて、手のひらで根元のほうまで上下にこすってくる。
「はんっ……んんっ」
 絶妙な手さばきには惚れ惚れとするほどだが、感心している余裕はなく、頭はぐずぐずで、喘ぐばかりだ。
 というか、こんなことをされている場合じゃない。僕も透を攻めなければ。
 透の腰から指を這わせて胸の突起にたどり着き、くいと指の平でこすってみる。ん、と漏らした声を聞いて、よしよしとほくそ笑む。が、すぐに気が逸れてしまう。透の手さばきは速度を増し、絶妙な力加減で締めあげてくるから、まだ数分と経っていないのに高まってくる。
「透……も、いいから」
 出してしまったら、またすぐに回復するのか不安である。若いし、透が相手だから大丈夫だとは思うけど、万が一ということもある……
「あっ」
 いきなりくわえられて、全身が粟立った。ぞくぞくとして……ちょっとやばいって。まじでいきそう。熱いし、キスだけで屹立するほどの透の舌が絡みついて、気持ちいい。そんなに奥まで入れなくても……唾液と先走りが混じって、透が動くたびにぬるぬるとしてやばい。ああ……だめだ。考えられない。気持ちいい。
 もう無理かも。
 こうなったら、一回出して、回復する間に透のほうを攻めればいい。そうだ……それがいい……
「透、も、いく」
 いくと言ったら、さらに唇をすぼめてきた。まじで出る。
「離れ、て……」
 言ったが遅かった。瞬間、ぐっと速度を増した透の口内にそのまま放出してしまった。ああ……情けない。
「ごめん」
 むせもせず、出しもせず、ほっそりとした首がごくりと嚥下したのを見て、身体中が熱くなった。エッロ……。

「雅紀」
 口の端を拭いながら上目で見つめてくる透を見て、背筋がぞくりとする。
「な、なに?」
 虚脱感がすっと消えていった。本当に透が相手だと不安は杞憂のようだ。
「コーヒーを飲もう」
「えっ?」

 もしかしたらと、ちょっと期待をしてしまった。透も出したいから一度普通にさせてくれって言われるのかと思って……
 いや、今日は僕がタチ役だから、透を襲わなきゃならない。だけど、なんというか、やっぱり一度くらい、なんて考えてしまった。
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