君に春を届けたい。

ノウミ

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episode 1

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僕は春の季節になると思うことがある、学校近くの花屋の前に並ぶ、桜の鉢について。


辺りを見渡せば、もっと大きい桜が咲いている、何もしなくても勝手に咲いて、眺める事が出来る。


なのに、小さな鉢を買って眺めるとは。


そんな事を考えながら、始業式を終え家に帰る。


春は過ぎ、売れ残った鉢は捨てられるのだろうか。
店前ではなく、奥に移されその時を待つのか。


外で咲けば、皆に愛されていたのに。


可哀想に…と、そう思わなくもない。


ーーーーーー。


季節は移ろい、春が終わろうとしている。


僕は通っている高校のバスケ部に入っており、昨年の一年生から始めている。


初めは慣れないことも多く、苦労はした。


一年も経つとそれなりに動けるようになり、二年生ながらレギュラーの座も勝ち取れそうな位置にいる。


今年の夏は、全国大会優勝を目指している。


決して強い高校とは言えないが、地区大会では毎度いい成績を残せているらしい。


これから始まる地区大会に向けて、部活内では余念がないように練習に打ち込んでいた。


僕もレギュラーを勝ち取る為に、毎日励む。


そんな中、部活終わりや休みの日にいい練習場所を見つけた。


学校の方向とは逆なのだが、バスケコートのある公園を近所に見つけたのだ。


これならと、空いた時間には練習を繰り返す。


一人の時にしかできない事を、集中しながら。


この頃には、桜色の木々は緑色に移ろう。


桜が散った時期など、知るよしもない。
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