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外伝 大和撫子は泥中の蓮に抱かれる。【コミカライズ版発売記念】
大好物、幼馴染み。
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「それじゃあ、おやすみなさい」
声を掛けると、ロータスは僅かに目を細めて浅く頷いた。
「ああ……おやすみ」
返事にぺこりとお辞儀をして、私は自分にあてがわれた部屋に入った。ロータスは扉が閉っていく間もずっとじっと私を見ていたけれど、扉がパタンと閉じた後に彼が去って行く足音が聞こえた。
それを確認してから、私はふらふらと部屋の中央へ歩いて行く。
怒濤の展開やらお腹が満足したやらで大分眠い。しかもお風呂上がりだし。
夕食はちょっとだけ恥ずかしい始まりになったものの、ロータスがすぐに調理に取り掛かったおかげで特に気にせずに済んだ。彼曰く、この家には使用人が一人もいないので、炊事洗濯は全て自分でこなしているらしい。日本の一人暮らしと変わらない感じだ。
でも、騎士って警察みたいなものだと思うし、疲れてる時はやりたくない日もあるんじゃないかな、と私は自分も一人暮らしだった故に思う。
なのでつい、言ってしまった。
「だったら、これからは私がしますよ。監視とは言え居候するんだし」と。
私自身驚いた。なぜか勝手に口から飛び出てしまったのだ。
それを聞いたときのロータスの顔は……正直ちょっと吃驚しているようだった。
左目が少しだけ見開かれていたように思う。
あまり表情の変わらない人だから、珍しい変化になんだか親しみを感じてしまった。
そんな顔もするんだな、というか。
異世界の人、というので勝手に遠く感じていたのかも知れない。
「それに、料理すごく美味しかったもんねー……あれはポイント高いわ」
客室のやたら可愛いベッドに腰掛けながら、食事だと出された料理を思い出し思う。
ヘンゼルとグレーテルのお話にありそうな木製テーブルの上に出された夕食は、どう見てもオムライスなとろとろ玉子に包まれたチキンライスと、どう見てもポトフなコンソメっぽいスープで煮込まれた野菜達。ウィンナーはそのまんま腸詰めだった。できたてなのでほわほわ白い湯気が立っていて。
勿論めちゃめちゃ美味しかったです。
だけど、そこでふと思ったのだ。
今日の献立は、私が昔子供の頃、お母さんにねだって作ってもらったものばかりだったと。
大好物のオムライス。
必ずつけてもらったコンソメスープ。
そして……私の隣に座っていた男の子。
当時の記憶を思い出すとき、必ずそこにいる一人の少年。
同い年なのにもの静かで、ちょっと大人っぽくて。
私のことを『佳奈ちゃん』と呼んでくれて、いつも二人で遊んでいた。
時々、遊んだ後にはうちで一緒にご飯を食べた―――
私が十歳の頃、つまり十年前に『神隠し』にあった、幼馴染みの蓮くんと片目を隠した彼の顔とが、不思議と重なった。
声を掛けると、ロータスは僅かに目を細めて浅く頷いた。
「ああ……おやすみ」
返事にぺこりとお辞儀をして、私は自分にあてがわれた部屋に入った。ロータスは扉が閉っていく間もずっとじっと私を見ていたけれど、扉がパタンと閉じた後に彼が去って行く足音が聞こえた。
それを確認してから、私はふらふらと部屋の中央へ歩いて行く。
怒濤の展開やらお腹が満足したやらで大分眠い。しかもお風呂上がりだし。
夕食はちょっとだけ恥ずかしい始まりになったものの、ロータスがすぐに調理に取り掛かったおかげで特に気にせずに済んだ。彼曰く、この家には使用人が一人もいないので、炊事洗濯は全て自分でこなしているらしい。日本の一人暮らしと変わらない感じだ。
でも、騎士って警察みたいなものだと思うし、疲れてる時はやりたくない日もあるんじゃないかな、と私は自分も一人暮らしだった故に思う。
なのでつい、言ってしまった。
「だったら、これからは私がしますよ。監視とは言え居候するんだし」と。
私自身驚いた。なぜか勝手に口から飛び出てしまったのだ。
それを聞いたときのロータスの顔は……正直ちょっと吃驚しているようだった。
左目が少しだけ見開かれていたように思う。
あまり表情の変わらない人だから、珍しい変化になんだか親しみを感じてしまった。
そんな顔もするんだな、というか。
異世界の人、というので勝手に遠く感じていたのかも知れない。
「それに、料理すごく美味しかったもんねー……あれはポイント高いわ」
客室のやたら可愛いベッドに腰掛けながら、食事だと出された料理を思い出し思う。
ヘンゼルとグレーテルのお話にありそうな木製テーブルの上に出された夕食は、どう見てもオムライスなとろとろ玉子に包まれたチキンライスと、どう見てもポトフなコンソメっぽいスープで煮込まれた野菜達。ウィンナーはそのまんま腸詰めだった。できたてなのでほわほわ白い湯気が立っていて。
勿論めちゃめちゃ美味しかったです。
だけど、そこでふと思ったのだ。
今日の献立は、私が昔子供の頃、お母さんにねだって作ってもらったものばかりだったと。
大好物のオムライス。
必ずつけてもらったコンソメスープ。
そして……私の隣に座っていた男の子。
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同い年なのにもの静かで、ちょっと大人っぽくて。
私のことを『佳奈ちゃん』と呼んでくれて、いつも二人で遊んでいた。
時々、遊んだ後にはうちで一緒にご飯を食べた―――
私が十歳の頃、つまり十年前に『神隠し』にあった、幼馴染みの蓮くんと片目を隠した彼の顔とが、不思議と重なった。
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