7 / 101
大食い競争
しおりを挟む
「ピンポーン」
玄関チャイムが鳴ったのは、夜9時を過ぎた頃だった。
「誰だろ……こんな時間に?」
「宅配じゃないっぽいね。ママりん出た?」
「いまお風呂。パパry……は寝落ち中……」
ふたりで顔を見合わせ、私が仕方なく玄関へ向かう。
ドアを開けると、そこに立っていたのは――
「やあ、久しぶり!」
「……タカシ!?」
そこには、どこか懐かしい顔があった。いとこ――タカシだ。
小さい頃は一緒によく遊んだけど、ここ数年は会ってなかった。なんか身長がめっちゃ伸びてて、髪もちょっとだけサラっとしてて……なんか、少年Aから青年Bくらいには進化してる。たしか今年から高校2年生だっけ。
「こっちに来てたから、ちょっと顔出してみた! 突然だけど、お邪魔してもいい?」
「え、あ……うん。まあ、いいけど……」
軽く戸惑いながらも家に招き入れると、居間でお菓子の空き皿を囲んでいたかおりんが、ぱっと顔を上げた。
「あ、タカちゃん!」
――あ、笑った。
――しかも、可愛く笑った。
「久しぶりだな、かおり。相変わらずだな~!」
「うふふ~」
……な、なんだそのやり取りは。
なんか男子の前で可愛いモードになってるんですけど!?!
「……それで? 突然なにしに来たの?」
少しだけトゲを含んだ声で聞くと、タカシはにやっと笑った。
「んー、今日はおばさんがご馳走してくるっていうからさ。それに、しおりが最近食べるの早いって聞いて……で、挑戦しに来た!」
「挑戦?」
「そう、大食い勝負! 俺の高校、食堂の大食い大会で優勝したばっかなんだ。」
「なにその自称チャンピオンみたいな理由……」
「ってことで、勝負だ! 大食い対決、今から開催!」
「ま、まじで!? 夜だよ!?」
「お腹空いてるし、むしろちょうどいいよ~」
ちゃっかりかおりんも乗ってきてる……。
*
そして、台所にはママりん。冷蔵庫を開け、次々とストック食材を取り出す。
「オムライス、からあげ、焼きそば、冷凍パスタ、冷凍チャーハン、全部使っちゃおうかしら」
「ちょ、ママりん!? 夜食のテンションじゃない!」
「いいじゃない、楽しそうだし。女子と男子で勝負なんて、青春って感じでしょ♪」
「色気ないなーー」
*
30分後。
リビングのテーブルの上には、夜とは思えない豪華な炭水化物フェスティバルが展開されていた。
ルールは簡単。3人で同時にスタートして、10分間で食べた量を競う。
ママりんがストップウォッチ係で、優勝者には「ママりん特製パフェ」が贈られるとのこと。
「準備はいい~?」
「オッケー!」
「バッチリ!」
「……一応、頑張る」
ママりんの「よーい、スタート!」の声とともに、一斉に食べ始める。
タカシくんは勢いで押すタイプ。まるで掃除機のように焼きそばを吸い込んでいる。
私は速度よりもペース重視。戦略的に、食べやすいものから崩していく。
……が、一番驚いたのは。
「……んぐっ、もぐもぐ、ん~これ美味しい♪」
かおりんだった。
「……え、かおりん、そんなに食べれる子だったっけ?」
「ふふふ、最近、お腹すぐ減っちゃうの!」
「にしても、そのスピードおかしいだろ!」
「私ね、たぶん“ふわもち食感”系の食べ物は無限にいけるの!」
「なにその限定スキル!」
残り3分、私は焼きそばに苦しみながら、タカシを見る。
顔が若干青くなってる。チャーハンの米粒をつまんで止まってる。
――これは勝ったか……!
しかし、その横でかおりんは。
「パスタ、ゲットー♪ しおりん、がんばれ~」
ニコニコしながら励ましつつ、自分はどんどん食べ進めている。
いや、絶対手加減してない。
そして、時間切れ。
「ストーップ!」
ママりんが拍手とともに終了を宣言。みんな、ぜえぜえと肩で息をする。
「では……結果発表!」
パパりんが持ってきた体重計(なぜ)と皿の重さを駆使して、ママりんが計測する。
――1位、かおりん(明らかに1.2キロ以上消費)
――2位、しおりん(1キロくらい)
――3位、タカシ(850gくらいでギブ)
「か、かおりん……おそろしい子……!」
「ふふふ、だてにスイーツバイキング行ってないもん♪」
「くそっ……こんな……しおりの前でこんな……」
……ん?何か聞いちゃいけないことを聞いたような……
タカシは、完敗という顔でクッションに倒れ込んだ。
その様子を見ながら、私は静かにほほ笑む。
――やっぱり、うちのかおりんが最強だ。
「しおりん、あとでパフェ半分こしよ?」
「うん、もちろん」
かおりんが一番可愛い。それだけは、絶対に揺るがない事実だ。
玄関チャイムが鳴ったのは、夜9時を過ぎた頃だった。
「誰だろ……こんな時間に?」
「宅配じゃないっぽいね。ママりん出た?」
「いまお風呂。パパry……は寝落ち中……」
ふたりで顔を見合わせ、私が仕方なく玄関へ向かう。
ドアを開けると、そこに立っていたのは――
「やあ、久しぶり!」
「……タカシ!?」
そこには、どこか懐かしい顔があった。いとこ――タカシだ。
小さい頃は一緒によく遊んだけど、ここ数年は会ってなかった。なんか身長がめっちゃ伸びてて、髪もちょっとだけサラっとしてて……なんか、少年Aから青年Bくらいには進化してる。たしか今年から高校2年生だっけ。
「こっちに来てたから、ちょっと顔出してみた! 突然だけど、お邪魔してもいい?」
「え、あ……うん。まあ、いいけど……」
軽く戸惑いながらも家に招き入れると、居間でお菓子の空き皿を囲んでいたかおりんが、ぱっと顔を上げた。
「あ、タカちゃん!」
――あ、笑った。
――しかも、可愛く笑った。
「久しぶりだな、かおり。相変わらずだな~!」
「うふふ~」
……な、なんだそのやり取りは。
なんか男子の前で可愛いモードになってるんですけど!?!
「……それで? 突然なにしに来たの?」
少しだけトゲを含んだ声で聞くと、タカシはにやっと笑った。
「んー、今日はおばさんがご馳走してくるっていうからさ。それに、しおりが最近食べるの早いって聞いて……で、挑戦しに来た!」
「挑戦?」
「そう、大食い勝負! 俺の高校、食堂の大食い大会で優勝したばっかなんだ。」
「なにその自称チャンピオンみたいな理由……」
「ってことで、勝負だ! 大食い対決、今から開催!」
「ま、まじで!? 夜だよ!?」
「お腹空いてるし、むしろちょうどいいよ~」
ちゃっかりかおりんも乗ってきてる……。
*
そして、台所にはママりん。冷蔵庫を開け、次々とストック食材を取り出す。
「オムライス、からあげ、焼きそば、冷凍パスタ、冷凍チャーハン、全部使っちゃおうかしら」
「ちょ、ママりん!? 夜食のテンションじゃない!」
「いいじゃない、楽しそうだし。女子と男子で勝負なんて、青春って感じでしょ♪」
「色気ないなーー」
*
30分後。
リビングのテーブルの上には、夜とは思えない豪華な炭水化物フェスティバルが展開されていた。
ルールは簡単。3人で同時にスタートして、10分間で食べた量を競う。
ママりんがストップウォッチ係で、優勝者には「ママりん特製パフェ」が贈られるとのこと。
「準備はいい~?」
「オッケー!」
「バッチリ!」
「……一応、頑張る」
ママりんの「よーい、スタート!」の声とともに、一斉に食べ始める。
タカシくんは勢いで押すタイプ。まるで掃除機のように焼きそばを吸い込んでいる。
私は速度よりもペース重視。戦略的に、食べやすいものから崩していく。
……が、一番驚いたのは。
「……んぐっ、もぐもぐ、ん~これ美味しい♪」
かおりんだった。
「……え、かおりん、そんなに食べれる子だったっけ?」
「ふふふ、最近、お腹すぐ減っちゃうの!」
「にしても、そのスピードおかしいだろ!」
「私ね、たぶん“ふわもち食感”系の食べ物は無限にいけるの!」
「なにその限定スキル!」
残り3分、私は焼きそばに苦しみながら、タカシを見る。
顔が若干青くなってる。チャーハンの米粒をつまんで止まってる。
――これは勝ったか……!
しかし、その横でかおりんは。
「パスタ、ゲットー♪ しおりん、がんばれ~」
ニコニコしながら励ましつつ、自分はどんどん食べ進めている。
いや、絶対手加減してない。
そして、時間切れ。
「ストーップ!」
ママりんが拍手とともに終了を宣言。みんな、ぜえぜえと肩で息をする。
「では……結果発表!」
パパりんが持ってきた体重計(なぜ)と皿の重さを駆使して、ママりんが計測する。
――1位、かおりん(明らかに1.2キロ以上消費)
――2位、しおりん(1キロくらい)
――3位、タカシ(850gくらいでギブ)
「か、かおりん……おそろしい子……!」
「ふふふ、だてにスイーツバイキング行ってないもん♪」
「くそっ……こんな……しおりの前でこんな……」
……ん?何か聞いちゃいけないことを聞いたような……
タカシは、完敗という顔でクッションに倒れ込んだ。
その様子を見ながら、私は静かにほほ笑む。
――やっぱり、うちのかおりんが最強だ。
「しおりん、あとでパフェ半分こしよ?」
「うん、もちろん」
かおりんが一番可愛い。それだけは、絶対に揺るがない事実だ。
0
あなたにおすすめの小説
百合活少女とぼっちの姫
佐古橋トーラ
青春
あなたは私のもの。わたしは貴女のもの?
高校一年生の伊月樹には秘密がある。
誰にもバレたくない、バレてはいけないことだった。
それが、なんの変哲もないクラスの根暗少女、結奈に知られてしまった。弱みを握られてしまった。
──土下座して。
──四つん這いになって。
──下着姿になって。
断れるはずもない要求。
最低だ。
最悪だ。
こんなことさせられて好きになるわけないのに。
人を手中に収めることを知ってしまった少女と、人の手中に収められることを知ってしまった少女たちの物語。
当作品はカクヨムで連載している作品の転載です。
※この物語はフィクションです
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
ご注意ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる