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もういいかい?もう、いいよ。
もういいかい?もういいよ。
しおりを挟む唯子との今後を相談し、まずはリフォームをすることになった。なんと、唯子はとんでもない財産を隠し持っていたのだ。俺の預貯金の倍。
「おばあちゃんが遺してくれました」
さらりとそう言いのけたが、俺は深く聞くことはしなかった。きっと、小村さんがいい様にしたのだろう。そう思うことにした。
「玄関はさ、引き戸でもいいけどよセキュリティがなー」
「今は引き戸でもいいのがありますよ。おうちの雰囲気ですと、引き戸の方がいいですよね?」
「まぁ、そうだよな! あとは廊下だよなー。老化してるし。あ、シャレじゃねーぞ?」
「ははは……かなり老朽化も進んでますしね。本当は建て替え」
「は?! それはダメだって言ってんだろ?!あそこは……」
リフォーム会社との打ち合わせ中に担当がまたとんでもないことを言い出した。ふざけるな!と一言言ってやろうとした。すると、隣に座っていた唯子に、思い切り太ももを捻り上げられた。
「いっ!」
「無茶言ってすみません。ダメならまた考えますので……」
「はは、大丈夫ですよ。まずはしっかり調査してからになりますが……」
「あ! あと庭はちゃんと残せよ!? あそこはなぁ……」
「有志!」
静かに! と左手で制される。
唯子の薬指に光るプラチナの指輪が目の前に出された。それを見ると怒りも何処へやら。しおしおと萎んできてしまう。
「へへ」
「……はぁ、もうほっといて話を進めましょう?」
「え、いいんですか?」
「いいんです。こうなると長いですから」
いらないという唯子に押し切って渡してよかった。柔らかい手に柔らかいカーブを描いたシンプルな指輪は唯子のようだ。自分のチョイスを褒め称えたい。
未来に向かって少しずつ俺も、唯子も進み始めている。それを一つ一つ実感するたびに、心がむず痒く感じる。
おそらく、これが幸せなんだろうなぁ。とすっかりおなじみになった、詩を読む。
「旦那様、何処かお加減でも」
「いえ、いつもの事ですから気にしないでください」
そんな冷たい会話が隣でなされていた。幸せボケに浸っていた俺は知らないことだった。
粗方の打ち合わせを終え、俺たちは手を繋いで帰路につく。
「買い物して帰るか?」
「はい! 今日は寒いのでお鍋にしましょう」
「いいなぁ! 鶏団子がいい」
「じゃあ、お肉屋さんに寄っていきましょう」
「おばちゃん、またおまけしてくれたらいいな」
すっかりと馴染みになった商店街に向かって、俺たちは歩いていく。
ゆっくりと、ふたりで進んでいこう。
どちらとも無く、顔を合わせる。
そして、笑った。
隠れんぼは、終わりだ。
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