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6巻
6-3
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次は、パイ生地作りだ。
工程はタルト生地とほぼ一緒。ボウルの中で、バターと粉類を指ですり合わせていく。ただしパイ生地の場合は、バターの粒が半分くらい残る程度で止めておくのがポイントだ。
その状態で水を加えてざっくりと混ぜたら、ひとかたまりにまとめて、タルト生地と同じように濡れ布巾をかけて冷蔵庫に入れる。
続いてメレンゲ生地を作る。
ミキサーにかけていた卵白はしっかりと泡立てられ、ふわふわしたホイップ状になっていた。
そこに砂糖を加え、さらに角が立つくらいまで泡立てる。
そうして出来上がったメレンゲに、ナッツを粉末状にしたものと粉糖を数回に分けて加え、泡を潰さないようにヘラでざっくりと混ぜ合わせた。
そこまで出来たら、丸い口金をセットした絞り袋に詰め、オーブンの天板に絞っていく。時計回りにくるりと絞り、直径五センチくらいの渦巻き状の円にするのだ。
それをあらかじめ熱しておいたオーブンに入れ、焼き上げていく。
リサがメレンゲ生地をオーブンに入れ、タイマーをセットしたところで、入り口の方から物音が聞こえた。
ややあって、ヘレナが厨房に顔を覗かせた。
「おはようございます、リサさん。早いですね」
「おはよう、ヘレナ。ちょっと作りたいものがあって」
「そうなんですか。今回も楽しみにしてますね」
そう言って、ヘレナは着替えのために二階へ向かった。
その後ろ姿を見送ると、リサは作業を再開する。
まずは、寝かせておいたパイ生地を冷蔵庫から取り出す。
調理台に打ち粉をして、その上に生地をのせ、めん棒で伸ばしていく。
一センチほどの厚さの長方形に伸ばしたら、生地を三つ折りにする。折り重ねることで層が出来、焼き上がった時にサクサクとした食感が出せるのだ。
その生地の向きを変え、また伸ばし、三つ折りにして……という作業をさらに五回ほど繰り返す。
すると初めは凹凸があり、ぼそぼそしていた生地が、滑らかになる。
最後に五ミリほどの厚さに伸ばし、それをパイ型に敷いていく。縁が傾斜状になった、直径六センチの浅いパイ型だ。
パイ生地を型に敷いたら、フォークで万遍なく穴を空けていく。これは空気穴となり、焼いた時歪に膨らむのを防いでくれる。
そこまで出来たら、メレンゲ生地を焼いているのとは別のオーブンに入れ、焼いていく。
ちょうどメレンゲ生地の方は焼き上がったようなので、焼き上がりを確認して、オーブンから取り出した。
うっすら焼き色のついたメレンゲ生地からは、甘く香ばしい匂いが漂ってくる。それをケーキクーラーにのせて、しっかりと粗熱を取っておく。
次に、タルト生地を冷蔵庫から取り出す。
こちらはパイ生地とは違って折りたたむことはせず、そのまま薄く伸ばして型に敷いた。タルトの型もパイ型と同じく直径六センチの大きさだが、縁がひだ状になっている。
パイ生地と同様、フォークで穴を空けてから、オーブンに入れた。
「おはようございます! お、何作ってるんですか?」
「おはよう、アランくん。ちょっと新作……っていうほどでもないけど、試作中なの」
朝から元気いっぱいに出勤してきたアランに、リサは小さく笑った。
アランはケーキクーラーの上で冷ましているメレンゲ生地や、オーブンの中を、興味深そうに眺めている。
「たぶん、賄いの時間には間に合うと思うから、期待してて」
リサの言葉を聞いて、アランはウキウキした様子で仕事を始める。今にも鼻歌を歌いだしそうなので、リサはますます笑みを深めた。
アランが開店準備を始めたのを横目に見ながら、リサはモンブランの要であるクリーム作りに入る。
栗に似たブブロンは普段からモンブランに使っているため、甘露煮を作り置きしてある。今日もそれを使うことにした。
まずは甘露煮のブブロンを小さく刻んで鍋に入れ、生クリームと一緒にコンロで加熱する。沸々と泡が立ってきたら、木べらで潰すようにかき混ぜながら、水分を飛ばしていく。
ブブロンが柔らかくなりドロッとしてきたら、火を止めて鍋の中身をブレンダーに入れる。香りづけに蒸留酒を少しだけ加え、ブレンダーでさらに撹拌するのだ。
そしてペースト状になったものを、目の細かいザルで裏ごしする。
ここでしっかり裏ごししておかないと、絞った時に口金に詰まってしまうことがあるので、塊が残らないよう丁寧に作業をする。
これでブブロンのクリームの出来上がりだ。
かぼちゃに似たプルエ、サツマイモに似たナナット芋は、洗ってから適度な大きさに切って蒸しておく。
蒸して柔らかくなったら皮をむき、ブブロンと同じように生クリームと一緒に煮ていく。
木べらで潰しながら加熱し、水分が少なくなったら、蒸留酒を加えてブレンダーでペースト状にする。
最後に裏ごしすれば完成だ。
集中して作業をしていたリサがふと横を見ると、いつの間にかアランとジークがクリームを作るリサの様子を見ていた。
「わっ! ジークくんも来てたんだね、おはよう」
リサが慌てて挨拶すると、ジークは呆れたように肩を竦めた。
「おはようございます。だいぶ前に来てましたよ」
ジークの顔を見た途端、リサの頭に、昨日の出来事が浮かんでくる。
少し気まずく思っていると、それが顔に出てしまったのか、ジークが心配そうな顔でリサを見つめた。
リサは笑顔を取り繕ってから口を開く。
「今、新しいモンブランを作ってるんだ。賄いの時、みんなに試食してもらおうと思って」
そう言って、作業を再開する。
するとジークも笑みを浮かべ、「楽しみにしてます」と言って、自分の仕事を始めるのだった。
第六章 秋の味覚はおいしいです。
カフェ・おむすびの二階は、かつてこの建物を使っていたお店の主人が生活していた場所だ。
そして今現在は、カフェのメンバーが休憩を取ったり着替えをしたりするためのスペースになっている。
ダイニングにはテーブルセットが置かれていて、開店前にここで賄いを食べるのが習慣となっていた。
今日の賄いは、アランが作った海鮮のパスタとサラダ。メンバー全員でそれを食べると、次はリサが作ったケーキの試食に移った。
ダイニングテーブルに並んでいるのは、数種類のモンブランだ。
クリームの色はどれも黄色だが、微妙に濃淡が違う。種類ごとに刻んだナッツやブブロンの甘露煮をのせてあるので、見分けがつくようになっていた。
「土台をメレンゲ、タルト、パイの三種類、クリームをブブロン、プルエ、ナナット芋の三種類で作ってみました。食感や味のバランスを見て組み合わせを決めたいので、どんどん意見を言ってください」
リサが作ったモンブランは、計九種類。各三種類の生地とクリームをそれぞれ組み合わせたのだ。
一人一個ずつ試食するとなると量が多すぎるので、一口分ずつフォークで切り分け、試食してもらうことにした。
ヘレナは、自分が試食する分をフォークで取り分けながら、リサの様子を見ていた。
リサが突然、新作料理を考えることは、今に始まったことではない。だが、今回は何か意図があるのでないかとヘレナは推測していた。
特に理由はないが、女の勘とでもいえばいいのだろうか。
最近カフェにやってくるようになったヴィルナのことが、ヘレナは引っかかっていた。
ヘレナは接客担当という立場上、お客さんと話をすることが多い。ヴィルナは基本的に一人で来店することもあり、カウンター越しによく世間話をしていた。
彼女はジークと学生時代からの知り合いらしいので、ジークという共通の話題があって、ヘレナとしても話しやすい。
けれど、リサとはあまり話をしている様子がなかった。
もちろん挨拶を交わしたり、オーダーを聞いたりと、必要最低限は言葉を交わしているのだが、他の客に比べると明らかに少ない。
おそらく避けているのはリサの方だと、ヘレナは思っていた。
リサは誰とでも気さくに話す。あまり店員と話をしたがらない客もいるので、そういう場合は空気を読んでそっとしておくが、そうでない場合はリサから世間話をふることが多いのだ。
そんなリサが、ヴィルナとは距離を置いている。ヘレナの予想では、ジークのことでわだかまりがあるのだと思う。
リサのいる前で、ジークがヴィルナと仲良さそうに話していることがたびたびある。
再会した旧友と親交を深めるのは大いに結構だが、それを恋人であるリサが快く思わないのも当然だろう。
そんなことを考えながら、ヘレナは誰にも気付かれないようにハァと息を吐いた。
適度な嫉妬は、恋愛のスパイスになると思う。ヘレナも人並みに恋愛をしてきているので、それはわかる。だが、リサがヴィルナとジークの仲に嫉妬しているとしたら、その辛さも同じ女としてよくわかった。
しかもリサがここに来て、いきなり新作のモンブランを作った。何やらいつも以上に仕事に燃えているリサを見ると、どういう心境の変化なのかと、なんだか心配になってくる。
ともかく、今は余計な口を出すタイミングではないし、リサもジークも自分より大人なのだ。だから黙って二人のことを見守ろうと思いながら、ヘレナは新作のモンブランを頬張るのだった。
「うん、この三種類でいこう!」
試食から二日後。閉店後の厨房で最後の試作を終えたリサは、自信をもって頷いた。
カフェのメンバーからの意見も取り入れて、モンブランの生地とクリームの組み合わせを決めた。
タルト生地に、水気の多いプルエのクリームをのせたモンブラン。パイ生地に、あっさりしたナナット芋のクリームをのせたモンブラン。メレンゲ生地に、ブブロンの渋皮煮で作ったクリームをのせた、少しビターな風味のモンブラン。
これに元々販売していたモンブラン――スポンジケーキにブブロンのクリームをのせたもの――を加えた四種類を販売することにしたのである。
今日の試作には、ジークも付き合ってくれていた。
「この四種類を販売するのか」
調理台に並べられているモンブランを見て、ジークが呟いた。
今まで同じケーキを数種類同時に販売することはなかったため、どうなるのか想像がつかないのだろう。
「ねえ、食べ比べしてみない?」
リサがそう提案すると、ジークは頷いた。そして二人分のフォークを用意してくれる。
それぞれ好きなものを選び、フォークで切り分けて口に運ぶ。
ジークが選んだのは、メレンゲ生地にブブロンの渋皮煮で作ったクリームをのせたものだ。
リサはタルト生地にプルエのクリームをのせたモンブランを味わいつつ、ジークの顏を窺う。
「どう? おいしい?」
ジークはコクリと頷くと、表情を緩ませた。
「うん、おいしい。甘いメレンゲ生地とコクのある渋皮煮のクリームの組み合わせが、すごく合ってると思う」
「本当!? 私もそう思って、この組み合わせにしたんだ!」
ジークから賛同を得られたことが嬉しくて、リサはパアッと表情を明るくした。
「どのモンブランもおいしいが、俺はこのモンブランが一番好きだな」
そう言いながらもう一口頬張るジークに、リサはニコニコと笑う。
ジークはそれに微笑み返した後、ハッとして笑みを消す。
「もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと。急いで片づけを始めよう」
ジークの言う通り、かなり遅い時間になってしまっている。けれど、せっかくいい雰囲気だっただけに、リサは少しがっかりした。
自分のいいところをアピールするという目的が果たせたかといえば、それも微妙だった。
そしてリサの頑張りは、思わぬ結果を生んでしまうことになる。
ジークとの試食から二日後。
カフェでは四種類のモンブランを、モンブランフェアと銘打って大々的に売り出したのだが――
「このクリーム、すごくおいしい! 何個でも食べられそう!!」
新作のモンブランに感激の声を上げているのは、なんとヴィルナだった。
フェアは客に好評だったが、一番気に入ってくれたのは、今や常連となりつつあるヴィルナだったのである。
この結果に、リサは苦笑するしかなかった。
もちろん、自分の作ったものをおいしいと言って食べてくれるのは嬉しい。しかし、ヴィルナが相手となると複雑な思いがあり、素直に喜べない。
リサは上手くいかないものだなと、ため息をこぼした。
第七章 おかしいことに気付きます。
最近、リサの様子が少しおかしいことに、ジークは気付いた。
いつからかはわからない。しかしここ数日、リサがジークを見て顔を曇らせたり、取り繕ったような笑顔を見せることが多くなったのだ。また、ジークに何か聞こうとして結局やめることも、しばしばある。
その理由がわからず、ジークはリサのことを注意深く観察するようになった。だが、まだその理由はわかっていない。
いつもと違うリサのことが、どうも気掛かりだった。
ハァ、とついつい出てしまったため息。それを、近くの席に座っていたヴィルナに聞かれてしまったらしい。
「なになに? なんか悩み事でもあるの?」
その声の方を振り向くと、ヴィルナが面白そうに目を細めてジークを見ていた。
「……あっても、お前には相談しない」
女性でありながら、さばさばした性格のヴィルナは、ジークにとっては女友達というより男友達に近い存在だ。だからこそ、今も変わらず親交があると思っている。
王都へ異動してきてからというもの、彼女はほぼ毎日カフェ・おむすびに通っている。
売り上げに貢献してくれるのは助かるし、騎士団を辞めて料理人になった自分を認めてもらえたようで嬉しく思う。
しかし一方で、騎士団にいた時とは全く違う仕事ぶりを見られることに、妙な気恥ずかしさも感じていた。
そんなジークの気も知らず、ヴィルナは最近始まったモンブランフェアに、すっかり心を奪われている様子だ。
今日も、既に二つのモンブランを完食している。
ジークは空になった皿に目をやり、呆れ顔で口を開いた。
「そんなにケーキばっかり食べてたら太るぞ」
「なっ!! 失礼ね! その分、勤務中に動くから大丈夫ですよーだ!!」
ムッとして言い返すヴィルナに、はいはいとおざなりに返事をしたジークは、空いたお皿を持って厨房へ戻る。
すると、たまたま厨房の入り口にいたリサとぶつかりそうになった。
「あ……」
ジークからパッと目を逸らしたリサは、回れ右をして厨房へ戻っていく。
てっきりホールに出ようとしていたのだとばかり思っていたジークは、そんなリサの姿に首を傾げた。
そして、ふと思った。
もしかしたらリサは、自分とヴィルナの様子を見ていたのではないかと。
では、なぜリサはあんなによそよそしく目を逸らしたのか。
ジークは仕事をしながら、その理由を考え始めた。
リサが、ジークとヴィルナが会話しているところを見ていたと仮定する。その後に目を逸らしたということは、リサは自分たちに対して、何かしら後ろめたい感情を持っていたと思われる。
ジークがヴィルナと話しているのを見て、リサが感じることといえば……
「……あ」
ジークは、あることに思い至った。
それは、リサがヴィルナに嫉妬しているのではないかということだ。
その可能性が思い浮かんだ途端、ジークの心に、じわじわと喜びが広がる。
リサが嫉妬しているということは、逆に考えると、それだけ自分のことを想ってくれているということだ。
才能あふれるリサには、これまで色々な男が近づいてきた。
フェリフォミア王国のエドガー王太子。
王宮の副料理長だったキース。
隣国のマスグレイブ公爵。
いずれもジークより年上で、クセはあるものの魅力的な男たちだった。
そんな中、リサが自分を選んでくれたことは嬉しい。しかし一方で、好きなのは自分だけで、リサの方はそれほどでもないのではという思いもあった。
もちろん、どちらがより相手を好きかなんてことは、計れるものではない。
しかし、これまではリサに近づく男にジークが嫉妬するという状況が多かっただけに、どうしてもそう思ってしまっていた。
その分、ジークは嫉妬する側の気持ちがよくわかる。
リサと付き合っているのは自分だという自信はあるが、リサをもっと独占したくてたまらない。他の男と話してほしくない。
リサを信じていないわけではないのだが、どうしても嫉妬する気持ちは抑えられないのだ。
それを今、リサも感じているとしたら……
思えば、リサの様子がおかしくなり始めたのは、ヴィルナが王都にやってきた頃ではなかっただろうか?
パズルのピースが嵌まっていくように、どんどんつじつまが合っていく。
複雑な気持ちを抱えているであろうリサにすまないと思いつつも、ジークの頬は自然と緩んだ。
第八章 避けられている理由はなんでしょう?
「なんか私、嫌われてるのかなぁ?」
ヴィルナは、独り言にしては大きな声で呟いた。
それは意図したわけではなく、心の中で思っていたことが口に出てしまったのだ。
あ、と思った時には、時既に遅し。一緒に街を巡回しているラインハルトの耳に入ってしまったようで、彼から訝しげな目を向けられる。
「は? 誰に?」
聞かれていたのなら仕方ないと思い、ヴィルナは苦笑しつつ打ち明けた。
「えっと、カフェ・おむすびの店長さんにね」
「リサさんか? むやみに人を嫌うような人じゃないと思うけど……もしかして、お前何か失礼なことでもしたんじゃねぇ?」
「え!? そんなことはしてない、はず……」
ラインハルトに指摘されて、ヴィルナは今までの自分の行いを振り返る。
初めてカフェに行ったのは、ラインハルトからジークが騎士団を辞めて、今は料理人になったと聞かされた日だ。
ジークとは学生時代からの付き合いだが、ヴィルナが地方に配属されて以来、まったく連絡を取っていなかった。
仲は良かったけれど、いちいち手紙をやり取りして近況を報告し合うほど、べったりした関係ではない。
てっきり自分と同じように騎士団で頑張っているとばかり思っていたジークが、まさかとっくに辞めていて、しかも全く畑違いの仕事についているとは思いもしなかった。
ジークが勤めているカフェ・おむすびは、今や王国中で知らない人がいないほどの有名店。地方にいたヴィルナの耳にさえ、その名は届いていた。
さらにジークは、昨年学院に新設された料理科で講師まで務めているというではないか。
料理の世界のことは、ヴィルナはよく知らない。だが、ラインハルトから聞く限り上手くやっているようだった。
せっかく王都に戻ってきたことだし、カフェ・おむすびにも行ってみたい。そのついでに、旧友に会いたいと思ったのだ。
だが、カフェ・おむすびを初めて訪ねた時、ジークは不在だった。ちょうど混雑している時間帯だったらしく、席が空くまで時間がかかりそうだったので、カウンターにいた女性店員に伝言を頼んで帰ったのだった。
その女性が、まさかカフェの店長兼オーナーのリサであるとは思いもしなかった。
しかも、てっきり同い歳くらいかと思いきや、自分より四歳も年上だなんて……
ヴィルナは、リサに興味を持った。
それだけではなく、カフェ・おむすび自体にも大きな関心を持ったのだ。
工程はタルト生地とほぼ一緒。ボウルの中で、バターと粉類を指ですり合わせていく。ただしパイ生地の場合は、バターの粒が半分くらい残る程度で止めておくのがポイントだ。
その状態で水を加えてざっくりと混ぜたら、ひとかたまりにまとめて、タルト生地と同じように濡れ布巾をかけて冷蔵庫に入れる。
続いてメレンゲ生地を作る。
ミキサーにかけていた卵白はしっかりと泡立てられ、ふわふわしたホイップ状になっていた。
そこに砂糖を加え、さらに角が立つくらいまで泡立てる。
そうして出来上がったメレンゲに、ナッツを粉末状にしたものと粉糖を数回に分けて加え、泡を潰さないようにヘラでざっくりと混ぜ合わせた。
そこまで出来たら、丸い口金をセットした絞り袋に詰め、オーブンの天板に絞っていく。時計回りにくるりと絞り、直径五センチくらいの渦巻き状の円にするのだ。
それをあらかじめ熱しておいたオーブンに入れ、焼き上げていく。
リサがメレンゲ生地をオーブンに入れ、タイマーをセットしたところで、入り口の方から物音が聞こえた。
ややあって、ヘレナが厨房に顔を覗かせた。
「おはようございます、リサさん。早いですね」
「おはよう、ヘレナ。ちょっと作りたいものがあって」
「そうなんですか。今回も楽しみにしてますね」
そう言って、ヘレナは着替えのために二階へ向かった。
その後ろ姿を見送ると、リサは作業を再開する。
まずは、寝かせておいたパイ生地を冷蔵庫から取り出す。
調理台に打ち粉をして、その上に生地をのせ、めん棒で伸ばしていく。
一センチほどの厚さの長方形に伸ばしたら、生地を三つ折りにする。折り重ねることで層が出来、焼き上がった時にサクサクとした食感が出せるのだ。
その生地の向きを変え、また伸ばし、三つ折りにして……という作業をさらに五回ほど繰り返す。
すると初めは凹凸があり、ぼそぼそしていた生地が、滑らかになる。
最後に五ミリほどの厚さに伸ばし、それをパイ型に敷いていく。縁が傾斜状になった、直径六センチの浅いパイ型だ。
パイ生地を型に敷いたら、フォークで万遍なく穴を空けていく。これは空気穴となり、焼いた時歪に膨らむのを防いでくれる。
そこまで出来たら、メレンゲ生地を焼いているのとは別のオーブンに入れ、焼いていく。
ちょうどメレンゲ生地の方は焼き上がったようなので、焼き上がりを確認して、オーブンから取り出した。
うっすら焼き色のついたメレンゲ生地からは、甘く香ばしい匂いが漂ってくる。それをケーキクーラーにのせて、しっかりと粗熱を取っておく。
次に、タルト生地を冷蔵庫から取り出す。
こちらはパイ生地とは違って折りたたむことはせず、そのまま薄く伸ばして型に敷いた。タルトの型もパイ型と同じく直径六センチの大きさだが、縁がひだ状になっている。
パイ生地と同様、フォークで穴を空けてから、オーブンに入れた。
「おはようございます! お、何作ってるんですか?」
「おはよう、アランくん。ちょっと新作……っていうほどでもないけど、試作中なの」
朝から元気いっぱいに出勤してきたアランに、リサは小さく笑った。
アランはケーキクーラーの上で冷ましているメレンゲ生地や、オーブンの中を、興味深そうに眺めている。
「たぶん、賄いの時間には間に合うと思うから、期待してて」
リサの言葉を聞いて、アランはウキウキした様子で仕事を始める。今にも鼻歌を歌いだしそうなので、リサはますます笑みを深めた。
アランが開店準備を始めたのを横目に見ながら、リサはモンブランの要であるクリーム作りに入る。
栗に似たブブロンは普段からモンブランに使っているため、甘露煮を作り置きしてある。今日もそれを使うことにした。
まずは甘露煮のブブロンを小さく刻んで鍋に入れ、生クリームと一緒にコンロで加熱する。沸々と泡が立ってきたら、木べらで潰すようにかき混ぜながら、水分を飛ばしていく。
ブブロンが柔らかくなりドロッとしてきたら、火を止めて鍋の中身をブレンダーに入れる。香りづけに蒸留酒を少しだけ加え、ブレンダーでさらに撹拌するのだ。
そしてペースト状になったものを、目の細かいザルで裏ごしする。
ここでしっかり裏ごししておかないと、絞った時に口金に詰まってしまうことがあるので、塊が残らないよう丁寧に作業をする。
これでブブロンのクリームの出来上がりだ。
かぼちゃに似たプルエ、サツマイモに似たナナット芋は、洗ってから適度な大きさに切って蒸しておく。
蒸して柔らかくなったら皮をむき、ブブロンと同じように生クリームと一緒に煮ていく。
木べらで潰しながら加熱し、水分が少なくなったら、蒸留酒を加えてブレンダーでペースト状にする。
最後に裏ごしすれば完成だ。
集中して作業をしていたリサがふと横を見ると、いつの間にかアランとジークがクリームを作るリサの様子を見ていた。
「わっ! ジークくんも来てたんだね、おはよう」
リサが慌てて挨拶すると、ジークは呆れたように肩を竦めた。
「おはようございます。だいぶ前に来てましたよ」
ジークの顔を見た途端、リサの頭に、昨日の出来事が浮かんでくる。
少し気まずく思っていると、それが顔に出てしまったのか、ジークが心配そうな顔でリサを見つめた。
リサは笑顔を取り繕ってから口を開く。
「今、新しいモンブランを作ってるんだ。賄いの時、みんなに試食してもらおうと思って」
そう言って、作業を再開する。
するとジークも笑みを浮かべ、「楽しみにしてます」と言って、自分の仕事を始めるのだった。
第六章 秋の味覚はおいしいです。
カフェ・おむすびの二階は、かつてこの建物を使っていたお店の主人が生活していた場所だ。
そして今現在は、カフェのメンバーが休憩を取ったり着替えをしたりするためのスペースになっている。
ダイニングにはテーブルセットが置かれていて、開店前にここで賄いを食べるのが習慣となっていた。
今日の賄いは、アランが作った海鮮のパスタとサラダ。メンバー全員でそれを食べると、次はリサが作ったケーキの試食に移った。
ダイニングテーブルに並んでいるのは、数種類のモンブランだ。
クリームの色はどれも黄色だが、微妙に濃淡が違う。種類ごとに刻んだナッツやブブロンの甘露煮をのせてあるので、見分けがつくようになっていた。
「土台をメレンゲ、タルト、パイの三種類、クリームをブブロン、プルエ、ナナット芋の三種類で作ってみました。食感や味のバランスを見て組み合わせを決めたいので、どんどん意見を言ってください」
リサが作ったモンブランは、計九種類。各三種類の生地とクリームをそれぞれ組み合わせたのだ。
一人一個ずつ試食するとなると量が多すぎるので、一口分ずつフォークで切り分け、試食してもらうことにした。
ヘレナは、自分が試食する分をフォークで取り分けながら、リサの様子を見ていた。
リサが突然、新作料理を考えることは、今に始まったことではない。だが、今回は何か意図があるのでないかとヘレナは推測していた。
特に理由はないが、女の勘とでもいえばいいのだろうか。
最近カフェにやってくるようになったヴィルナのことが、ヘレナは引っかかっていた。
ヘレナは接客担当という立場上、お客さんと話をすることが多い。ヴィルナは基本的に一人で来店することもあり、カウンター越しによく世間話をしていた。
彼女はジークと学生時代からの知り合いらしいので、ジークという共通の話題があって、ヘレナとしても話しやすい。
けれど、リサとはあまり話をしている様子がなかった。
もちろん挨拶を交わしたり、オーダーを聞いたりと、必要最低限は言葉を交わしているのだが、他の客に比べると明らかに少ない。
おそらく避けているのはリサの方だと、ヘレナは思っていた。
リサは誰とでも気さくに話す。あまり店員と話をしたがらない客もいるので、そういう場合は空気を読んでそっとしておくが、そうでない場合はリサから世間話をふることが多いのだ。
そんなリサが、ヴィルナとは距離を置いている。ヘレナの予想では、ジークのことでわだかまりがあるのだと思う。
リサのいる前で、ジークがヴィルナと仲良さそうに話していることがたびたびある。
再会した旧友と親交を深めるのは大いに結構だが、それを恋人であるリサが快く思わないのも当然だろう。
そんなことを考えながら、ヘレナは誰にも気付かれないようにハァと息を吐いた。
適度な嫉妬は、恋愛のスパイスになると思う。ヘレナも人並みに恋愛をしてきているので、それはわかる。だが、リサがヴィルナとジークの仲に嫉妬しているとしたら、その辛さも同じ女としてよくわかった。
しかもリサがここに来て、いきなり新作のモンブランを作った。何やらいつも以上に仕事に燃えているリサを見ると、どういう心境の変化なのかと、なんだか心配になってくる。
ともかく、今は余計な口を出すタイミングではないし、リサもジークも自分より大人なのだ。だから黙って二人のことを見守ろうと思いながら、ヘレナは新作のモンブランを頬張るのだった。
「うん、この三種類でいこう!」
試食から二日後。閉店後の厨房で最後の試作を終えたリサは、自信をもって頷いた。
カフェのメンバーからの意見も取り入れて、モンブランの生地とクリームの組み合わせを決めた。
タルト生地に、水気の多いプルエのクリームをのせたモンブラン。パイ生地に、あっさりしたナナット芋のクリームをのせたモンブラン。メレンゲ生地に、ブブロンの渋皮煮で作ったクリームをのせた、少しビターな風味のモンブラン。
これに元々販売していたモンブラン――スポンジケーキにブブロンのクリームをのせたもの――を加えた四種類を販売することにしたのである。
今日の試作には、ジークも付き合ってくれていた。
「この四種類を販売するのか」
調理台に並べられているモンブランを見て、ジークが呟いた。
今まで同じケーキを数種類同時に販売することはなかったため、どうなるのか想像がつかないのだろう。
「ねえ、食べ比べしてみない?」
リサがそう提案すると、ジークは頷いた。そして二人分のフォークを用意してくれる。
それぞれ好きなものを選び、フォークで切り分けて口に運ぶ。
ジークが選んだのは、メレンゲ生地にブブロンの渋皮煮で作ったクリームをのせたものだ。
リサはタルト生地にプルエのクリームをのせたモンブランを味わいつつ、ジークの顏を窺う。
「どう? おいしい?」
ジークはコクリと頷くと、表情を緩ませた。
「うん、おいしい。甘いメレンゲ生地とコクのある渋皮煮のクリームの組み合わせが、すごく合ってると思う」
「本当!? 私もそう思って、この組み合わせにしたんだ!」
ジークから賛同を得られたことが嬉しくて、リサはパアッと表情を明るくした。
「どのモンブランもおいしいが、俺はこのモンブランが一番好きだな」
そう言いながらもう一口頬張るジークに、リサはニコニコと笑う。
ジークはそれに微笑み返した後、ハッとして笑みを消す。
「もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと。急いで片づけを始めよう」
ジークの言う通り、かなり遅い時間になってしまっている。けれど、せっかくいい雰囲気だっただけに、リサは少しがっかりした。
自分のいいところをアピールするという目的が果たせたかといえば、それも微妙だった。
そしてリサの頑張りは、思わぬ結果を生んでしまうことになる。
ジークとの試食から二日後。
カフェでは四種類のモンブランを、モンブランフェアと銘打って大々的に売り出したのだが――
「このクリーム、すごくおいしい! 何個でも食べられそう!!」
新作のモンブランに感激の声を上げているのは、なんとヴィルナだった。
フェアは客に好評だったが、一番気に入ってくれたのは、今や常連となりつつあるヴィルナだったのである。
この結果に、リサは苦笑するしかなかった。
もちろん、自分の作ったものをおいしいと言って食べてくれるのは嬉しい。しかし、ヴィルナが相手となると複雑な思いがあり、素直に喜べない。
リサは上手くいかないものだなと、ため息をこぼした。
第七章 おかしいことに気付きます。
最近、リサの様子が少しおかしいことに、ジークは気付いた。
いつからかはわからない。しかしここ数日、リサがジークを見て顔を曇らせたり、取り繕ったような笑顔を見せることが多くなったのだ。また、ジークに何か聞こうとして結局やめることも、しばしばある。
その理由がわからず、ジークはリサのことを注意深く観察するようになった。だが、まだその理由はわかっていない。
いつもと違うリサのことが、どうも気掛かりだった。
ハァ、とついつい出てしまったため息。それを、近くの席に座っていたヴィルナに聞かれてしまったらしい。
「なになに? なんか悩み事でもあるの?」
その声の方を振り向くと、ヴィルナが面白そうに目を細めてジークを見ていた。
「……あっても、お前には相談しない」
女性でありながら、さばさばした性格のヴィルナは、ジークにとっては女友達というより男友達に近い存在だ。だからこそ、今も変わらず親交があると思っている。
王都へ異動してきてからというもの、彼女はほぼ毎日カフェ・おむすびに通っている。
売り上げに貢献してくれるのは助かるし、騎士団を辞めて料理人になった自分を認めてもらえたようで嬉しく思う。
しかし一方で、騎士団にいた時とは全く違う仕事ぶりを見られることに、妙な気恥ずかしさも感じていた。
そんなジークの気も知らず、ヴィルナは最近始まったモンブランフェアに、すっかり心を奪われている様子だ。
今日も、既に二つのモンブランを完食している。
ジークは空になった皿に目をやり、呆れ顔で口を開いた。
「そんなにケーキばっかり食べてたら太るぞ」
「なっ!! 失礼ね! その分、勤務中に動くから大丈夫ですよーだ!!」
ムッとして言い返すヴィルナに、はいはいとおざなりに返事をしたジークは、空いたお皿を持って厨房へ戻る。
すると、たまたま厨房の入り口にいたリサとぶつかりそうになった。
「あ……」
ジークからパッと目を逸らしたリサは、回れ右をして厨房へ戻っていく。
てっきりホールに出ようとしていたのだとばかり思っていたジークは、そんなリサの姿に首を傾げた。
そして、ふと思った。
もしかしたらリサは、自分とヴィルナの様子を見ていたのではないかと。
では、なぜリサはあんなによそよそしく目を逸らしたのか。
ジークは仕事をしながら、その理由を考え始めた。
リサが、ジークとヴィルナが会話しているところを見ていたと仮定する。その後に目を逸らしたということは、リサは自分たちに対して、何かしら後ろめたい感情を持っていたと思われる。
ジークがヴィルナと話しているのを見て、リサが感じることといえば……
「……あ」
ジークは、あることに思い至った。
それは、リサがヴィルナに嫉妬しているのではないかということだ。
その可能性が思い浮かんだ途端、ジークの心に、じわじわと喜びが広がる。
リサが嫉妬しているということは、逆に考えると、それだけ自分のことを想ってくれているということだ。
才能あふれるリサには、これまで色々な男が近づいてきた。
フェリフォミア王国のエドガー王太子。
王宮の副料理長だったキース。
隣国のマスグレイブ公爵。
いずれもジークより年上で、クセはあるものの魅力的な男たちだった。
そんな中、リサが自分を選んでくれたことは嬉しい。しかし一方で、好きなのは自分だけで、リサの方はそれほどでもないのではという思いもあった。
もちろん、どちらがより相手を好きかなんてことは、計れるものではない。
しかし、これまではリサに近づく男にジークが嫉妬するという状況が多かっただけに、どうしてもそう思ってしまっていた。
その分、ジークは嫉妬する側の気持ちがよくわかる。
リサと付き合っているのは自分だという自信はあるが、リサをもっと独占したくてたまらない。他の男と話してほしくない。
リサを信じていないわけではないのだが、どうしても嫉妬する気持ちは抑えられないのだ。
それを今、リサも感じているとしたら……
思えば、リサの様子がおかしくなり始めたのは、ヴィルナが王都にやってきた頃ではなかっただろうか?
パズルのピースが嵌まっていくように、どんどんつじつまが合っていく。
複雑な気持ちを抱えているであろうリサにすまないと思いつつも、ジークの頬は自然と緩んだ。
第八章 避けられている理由はなんでしょう?
「なんか私、嫌われてるのかなぁ?」
ヴィルナは、独り言にしては大きな声で呟いた。
それは意図したわけではなく、心の中で思っていたことが口に出てしまったのだ。
あ、と思った時には、時既に遅し。一緒に街を巡回しているラインハルトの耳に入ってしまったようで、彼から訝しげな目を向けられる。
「は? 誰に?」
聞かれていたのなら仕方ないと思い、ヴィルナは苦笑しつつ打ち明けた。
「えっと、カフェ・おむすびの店長さんにね」
「リサさんか? むやみに人を嫌うような人じゃないと思うけど……もしかして、お前何か失礼なことでもしたんじゃねぇ?」
「え!? そんなことはしてない、はず……」
ラインハルトに指摘されて、ヴィルナは今までの自分の行いを振り返る。
初めてカフェに行ったのは、ラインハルトからジークが騎士団を辞めて、今は料理人になったと聞かされた日だ。
ジークとは学生時代からの付き合いだが、ヴィルナが地方に配属されて以来、まったく連絡を取っていなかった。
仲は良かったけれど、いちいち手紙をやり取りして近況を報告し合うほど、べったりした関係ではない。
てっきり自分と同じように騎士団で頑張っているとばかり思っていたジークが、まさかとっくに辞めていて、しかも全く畑違いの仕事についているとは思いもしなかった。
ジークが勤めているカフェ・おむすびは、今や王国中で知らない人がいないほどの有名店。地方にいたヴィルナの耳にさえ、その名は届いていた。
さらにジークは、昨年学院に新設された料理科で講師まで務めているというではないか。
料理の世界のことは、ヴィルナはよく知らない。だが、ラインハルトから聞く限り上手くやっているようだった。
せっかく王都に戻ってきたことだし、カフェ・おむすびにも行ってみたい。そのついでに、旧友に会いたいと思ったのだ。
だが、カフェ・おむすびを初めて訪ねた時、ジークは不在だった。ちょうど混雑している時間帯だったらしく、席が空くまで時間がかかりそうだったので、カウンターにいた女性店員に伝言を頼んで帰ったのだった。
その女性が、まさかカフェの店長兼オーナーのリサであるとは思いもしなかった。
しかも、てっきり同い歳くらいかと思いきや、自分より四歳も年上だなんて……
ヴィルナは、リサに興味を持った。
それだけではなく、カフェ・おむすび自体にも大きな関心を持ったのだ。
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