ラ・メジャーネル海の黒き旋風

カリノア

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奴隷の定義

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 ラクソリス帝国において、奴隷商売は犯罪ではない。だが、国に定められた厳格な制約があるのも事実だ。よって、非正規の奴隷商が存在するのも当然と言えた。 

 ラクソリス帝国において、奴隷は二種類いる。 

 罪の重さによって刑期が決まり、その期間奴隷として売買される犯罪奴隷。 

 職を失って食べていけなくなったか、借金のカタとして奴隷落ちした借金奴隷。 

 この二種類の奴隷が市場で売買されるのは、なんの問題もない。 

 比率としては借金奴隷のほうが多いだろうか。治安が少しずつ悪くなっていた近年、まともに働く人々が貧困に喘ぐようになっていた。 

 犯罪奴隷は、財政に悩む国が出した金策の一つだ。賊被害が深刻になる昨今、捕まえた犯罪者をいつまでも牢で養っている余裕は帝国にはない。ならさっさと奴隷として外に出してしまったほうがいい。奴隷を売った金が国庫に入るし、わざわざ犯罪者を養ってやる必要もなくなるのだ。牢の外に出してはいけない犯罪者を除いて、国は積極的に犯罪奴隷を出していた。 

 ラクソリス帝国には金が無い。いや、あるところには有り余るほどあるが、ないところには本当にない。これも国土が広すぎる弊害だろうか。何せ、帝国は世界全域を指すのだから。 

 帝都周辺の、世界西にあるレング大陸に占領する大貴族の領地は豊かだ。土地が豊かで作物が多く採れる。気候も安定していて滅多に凶作の年がない。そういうところでは人々の生活に余裕があるのか犯罪が少なく、よって賊の数も比較的少ない傾向にある。 

 一方で、北のズェーロ大陸は地下資源が豊富で採掘権を持っている一部の人間や領主などは非常に豊かな生活を送っているが、労働者たちは過酷な環境の中で低賃金重労働を強いられていた。こういう労働者は他所で食っていけなくなった人間や奴隷・解放奴隷が多くを占めている。治安は良くないが、雇用主に逆らうと生きていけないし、山も凍る厳しい寒さの中反乱を起こす気力もわかないので、刃を向けられる心配のない支配者階級はぬくぬくと暖炉であたたまる家の中で暮らしていた。 

 そして、東のラーデ大陸。ラーデは、ズェーロから買った原石や金属を利用して宝飾品を作ったり武具を作ったりして外貨を稼いでいる。稼いだ外貨はレング大陸から食物などを買うのに使われた。気候は基本的穏やかだが雨は殆ど降らず土地は乾燥し痩せていて、殆どが荒れ地か山岳地帯で畑作には向かない。近年良質の塩が採れる死海がラーデ北にあるミレンシェル大公領で見つかり、経済活動の一助になっていた。が、如何せん作物がめったに実らないので生活は厳しい。賊の出身地はラーデ大陸が最も多かった。 

 そう、この世界では、レング大陸以外まともに農業に従事できる土地がないのである。 

 大陸間で経済格差ができるのも当然だった。 

 ラクソリス帝国は、その成り立ちからかそれぞれの領地の独立意識が高い。もともとは全く別個の集団が、英雄王イリューレスの号令のもと半ば無理矢理の形で一つの国になったのだ。これで領地感で協力しろと言っても無茶な話である。 

 その悪習が、かの大戦から1000年経った今でも、根深く残ってしまっているのが現状だ。皇帝の命令には一応答えるが、基本的な統治権はそれぞれの土地の領主が持っている。その土地をどう治めるかは、領主の手にかかっていた。よほどのことがない限り、皇帝は直轄地以外の土地に干渉しない決まりだ。ラクソリス帝国は、それぞれの領地が持つ独立権が強かった。 

 この習慣が海賊被害を増やす一助になってしまっているのも、必然と言える。 

 「どこそこで飢饉があったらしい」と聞いても、「へぇ、大変だね」でほとんどの人間が終わらせてしまう。支援・援助をしようなどという考えは浮かばない。自分たちのことは自分たちでどうにかしろ、というのである。 

 一応もしものときに備えてか各地に国軍の基地があったが、国軍より地元の軍のほうが力が強かったりする。 

 『賞金首制度』は、国軍と領主軍どちらにも適用されるが、この二軍の間で、微妙に賞金価格が違うこともままあることだ。

 【賊狩り】を生業とする人間は、この価格差に割と敏感だった。 

 

 
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