王子がカエルにされた理由(ワケ)

羽衣野 由布

文字の大きさ
12 / 17

11

しおりを挟む
 「…………ん…」

 暗闇の中、ラナは目を覚ました。

 嗅がされた薬のせいで、まだ若干頭がクラクラする。

 少し動いてみると、腕は後ろ手に縛られ自由がきかなくなっていた。

 なんとか起き上がり周りを見回す。

 冷たい石の床、じめじめと湿った空気。

 恐らくどこかの地下室だろうが、暗くてよく分からなかった。

 「……ここは、どこ…?」

 するとラナの後ろの方から声が聞こえた。

 「…その声…ラナか?」

 「っ!、トリィ?!」

 よくよく目を凝らすと、奥に人影があるのを見つけた。

 動きにくいままなんとか近付く。

 「ラナ……なぜここに…」

 「あぁ、良かった!無事だったのね!」

 抱きつきたいけど、腕が動かないんだった。

 「これで無事と言えるかは甚だ疑問だがな。まさかお前も捕まったのか?」

 「そうみたい。あなたの家の前で薬を嗅がされて、気付いたらここにいたの」

 「薬…………。すまない…私のせいだ…」

 「え?…どういう事?」

 「その薬は恐らく、私が作ったものだ」

 トリトマの家に一人の男が訪ねてきた。

 男は猟師で、矢に仕込む眠り薬が欲しいと言ってきた。

 そのような注文はたまに受けるので大して疑問に思わず薬を渡すと、なんと男はトリトマに向かってその薬を振りかけたのだった。

 「獣用の強力で即効性のあるものだったからな。抵抗する間もなかった」

 「それはトリィのせいなんかじゃないわ!悪用したその人が悪いのよ」

 トリィの薬をこんな事に使うなんて許せないわ!

 「その人に見覚えはあるの?」

 「いいや、初めて見る顔だった」

 「じゃあ…こんな風にされる心当たりは?」

 「腐るほどあるな」

 「ええっ!?」

 「私の薬は万能ではない。その効き目に不満を持つ者は、少なからずいるだろうさ」

 「それだってあなたのせいじゃないじゃない!」

 「皆が皆、お前のように聞き分けが良い訳ではないという事だ。……だが、今回はそれとも少し違う気がする」

 「…え?」

 「男は私の魔法を封じるすべを知っていた」

 「そうなの?!トリィ、一体何をされたの?!」

 「目隠しをされた。おかげで何も見えん」

 「そういう事は早く言って!!」

 ラナは慌てて立ち上がり、縛られている手でトリトマの顔の辺りを探った。

 何やら金属製の鎖がぐるぐると巻かれている。

 「ひどい…なによこれ!」

 急いでそれを剥ぎ取った。

 「大丈夫?トリィ」

 「ああ。ありがとう、ラナ」

 「どうして鎖なんか…」

 「それは恐らく銀製の鎖だ。…魔法を扱う者は銀に弱いのだ」

 「え?銀に弱いのって、確か悪魔じゃなかった?」

 「魔法はその悪魔に通じる力なのだ。彼らのように肌を焼かれるほどではないが、触れると力を奪われる」

 「そうだったの」

 「…だがそれはあまり知られていない事だ。加えて、私が目で見ただけで魔法をかけられる事も知っていた。それで目隠しをしたのだろうからな」

 「じゃあ…私達を捕まえたのって…」

 「同じく魔法を扱う者か、もしくは相当に深い知識を持った者…という事だな。いずれにせよ、ただ者ではない」

 「…………」

 そんな人間が相手だなんて……。

 このまま捕まっていて無事で済むはずがないではないか。

 「トリィ、今すぐここを出ましょう」

 「出るって、どうやって…」

 「実は今履いている靴にナイフが仕込んであるの。それで縄を切りましょう!」

 「………お前、本当に王女だよな…?」

 「だって暗い森の中を一人で歩いているのよ?自分の身は自分で守れるようにしておかなくちゃ!」

 「………………そうだな…」

 「でしょ?」

 「だが残念な知らせが一つある」

 「え?なに?」

 「私は腕にも鎖が巻かれている。ナイフを使えるほど力が入るか分からん」

 「ええ!?っもう!だからそういう事は早く言って!!」

 とその時、天井の戸が開いて2人の元にランタンの光が射し込んだ。

 「…出ろ。ローレル様が会いたがっている」



  †††



 進んでも、進んでも、目的の場所は全く見えてこない。

 「はぁっ…はぁっ……!」

 どこだ?!どこなんだっ?!

 木々の間から途切れ途切れに射し込む月明かりを頼りに懸命に目を凝らし、地面に残る足跡を辿る。

 幸いにも、この足跡の主は徒歩で移動をしていた。

 木の根が入り組む森の中では、馬は使えなかったようだ。

 人間一人を担いでいてはそんなに速く進めないだろうと踏んではいるが、このちっぽけな体では、それにすら追いつけているのかどうかも分からない。

 「…っ、のわっ?!」

 気力だけで前に進んでいたら、足がもつれてべしゃりと派手に転んだ。

 「くっ……」

 泥まみれの体、重たい足、終わりの見えない道のり……。

 心が折れそうになり、イベリスはそれまで動かし続けていた足を止めた。

 もういやだ!なぜ、王子である俺がこんな……。

 「………………」

 ……そういえば…あいつに捕まった時も、こうして森を歩き続けていたな……。

 イベリスは、ラナと最初に出会った時を思い出した。

 彼女はキラキラ輝く瞳で自分を見つめていた。

 一瞬…女神のようだと思った。

 あの時の出会えた喜びは、今でも忘れない。

 …………その瞳の輝きが、今何者かによって消されようとしている。

 …そんな事……あってたまるかっ!!

 「く…っそぉお!!」

 おのれを無理矢理奮い起たせ、イベリスは再び歩み始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...