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妹と未来の夫
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「お姉さま!」
アリシアが屋敷の中を歩いていると、後ろから可愛らしい声がする。振り返ると妹のメリッサが緩いウェーブのかかったライラック色の髪を靡かせて足速に近寄ってきた。
「メリッサ、体調はもう大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です」
メリッサは濃い青色の瞳をアリシアに向け静かに微笑む。アリシアとフレデリックの婚約が決まったその日、突然メリッサは体調を崩し寝込んでいたのだ。ようやく体調が回復したメリッサは、アリシアの横にいるフレンに気づいて目を見開いた。
「お姉さま、その方は……?」
「そういえばメリッサはまだ知らなかったわね。フレデリック様の親戚の騎士様で、フレデリック様の計らいで私の護衛をしてもらうことになったの」
アリシアがそう言うと、フレンは胸に手を当ててお辞儀をした。
「フレン・ヴァイダーです」
「フレデリック様の……そうでしたの、親戚だからお顔立ちが似ていらっしゃるのね。お姉さまのこと、どうぞよろしくお願いします。お姉さま、フレデリック様が今度お屋敷にいらっしゃる日はいつですか?」
「まだわからないわ。近々迎えに来るとはおっしゃっていたけれど」
「そう、ですか。わかりました」
残念そうな顔をしてメリッサはお辞儀をし、アリシアたちに背を向けて立ち去る。そのメリッサの後ろ姿をフレンは怪訝そうに目を細めて見つめ、アリシアはそんなフレンを不思議そうに見つめた。
◇
「そういえばフレン様はメリッサのことをご存知なのですよね?」
部屋に到着したアリシアはフレンに尋ねる。するとフレンはアリシアを見てからすぐに目線を逸らし返事をした。
「ああ、もちろん知ってる」
そう言って、すぐに沈黙してしまった。なぜかフレンはこれ以上メリッサの話をしたくないような雰囲気だ。どうしてなのか詳しく聞きたいが、フレンの纏う空気がそれを許さない。
(未来のメリッサと何かあったのかしら?メリッサはフレデリック様のことを好きみたいだし)
アリシアとフレデリック、そしてメリッサは皆同じ学園に通っていた。それぞれ学年は違うのでメリッサとフレデリックはほとんど接点はないはずだ。だがフレデリックは侯爵家の次男で見目麗しい見た目をしており、女学生からの人気が高かった。
メリッサも他の女学生と同じようにフレデリックへ憧れのようなものを抱いているだけなのだと思っていたが、アリシアの婚約相手がフレデリックと知って、父親に激しく抗議をしたらしい。どうして自分ではなく姉が婚約者になるのか、自分にしてほしいと駄々をこねたらしい。
アリシアがフレデリックの婚約者になったのはフレデリックがアリシアを指名したからで、アリシアの父親の一存で婚約者を変更できるわけがない。それを知るとメリッサは体調を崩して寝込んでしまった。
(まさかそこまでフレデリック様のことを好きだったなんて。メリッサにはなんだか悪いことをしてしまったわ。でも、私にもどうすることもできない)
もしかしたら、未来のフレデリックと未来のメリッサには何かがあったのかもしれない。それを自分に知られなたくなくて口をつぐんでいるのかもしれないとアリシアは思った。
(あれ?)
二人のことを考えた瞬間、胸がチクリと痛む。
(どうして胸が痛むのかしら?私は別に、フレデリック様のことが好きと言うわけではないのに)
素敵な男性だと思うし、婚約者にと望まれたことは純粋に嬉しかった。だが、学生時代に他の女学生のようにフレデリックに対して強い憧れを抱くようなこともなかったし、メリッサのようにフレデリックに対して恋心を持っているわけでもない。
それなのに、どうして胸が痛むのだろう。
じっとフレンを見つめると、フレンと目が合う。死ぬ間際、どうしても自分に会いたいと願って過去へと戻ってきたらしいが、本当にそこまで未来の自分は思われていたのだろうか。
なぜか胸がざわついて、アリシアはすぐに目を逸らした。
アリシアが屋敷の中を歩いていると、後ろから可愛らしい声がする。振り返ると妹のメリッサが緩いウェーブのかかったライラック色の髪を靡かせて足速に近寄ってきた。
「メリッサ、体調はもう大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です」
メリッサは濃い青色の瞳をアリシアに向け静かに微笑む。アリシアとフレデリックの婚約が決まったその日、突然メリッサは体調を崩し寝込んでいたのだ。ようやく体調が回復したメリッサは、アリシアの横にいるフレンに気づいて目を見開いた。
「お姉さま、その方は……?」
「そういえばメリッサはまだ知らなかったわね。フレデリック様の親戚の騎士様で、フレデリック様の計らいで私の護衛をしてもらうことになったの」
アリシアがそう言うと、フレンは胸に手を当ててお辞儀をした。
「フレン・ヴァイダーです」
「フレデリック様の……そうでしたの、親戚だからお顔立ちが似ていらっしゃるのね。お姉さまのこと、どうぞよろしくお願いします。お姉さま、フレデリック様が今度お屋敷にいらっしゃる日はいつですか?」
「まだわからないわ。近々迎えに来るとはおっしゃっていたけれど」
「そう、ですか。わかりました」
残念そうな顔をしてメリッサはお辞儀をし、アリシアたちに背を向けて立ち去る。そのメリッサの後ろ姿をフレンは怪訝そうに目を細めて見つめ、アリシアはそんなフレンを不思議そうに見つめた。
◇
「そういえばフレン様はメリッサのことをご存知なのですよね?」
部屋に到着したアリシアはフレンに尋ねる。するとフレンはアリシアを見てからすぐに目線を逸らし返事をした。
「ああ、もちろん知ってる」
そう言って、すぐに沈黙してしまった。なぜかフレンはこれ以上メリッサの話をしたくないような雰囲気だ。どうしてなのか詳しく聞きたいが、フレンの纏う空気がそれを許さない。
(未来のメリッサと何かあったのかしら?メリッサはフレデリック様のことを好きみたいだし)
アリシアとフレデリック、そしてメリッサは皆同じ学園に通っていた。それぞれ学年は違うのでメリッサとフレデリックはほとんど接点はないはずだ。だがフレデリックは侯爵家の次男で見目麗しい見た目をしており、女学生からの人気が高かった。
メリッサも他の女学生と同じようにフレデリックへ憧れのようなものを抱いているだけなのだと思っていたが、アリシアの婚約相手がフレデリックと知って、父親に激しく抗議をしたらしい。どうして自分ではなく姉が婚約者になるのか、自分にしてほしいと駄々をこねたらしい。
アリシアがフレデリックの婚約者になったのはフレデリックがアリシアを指名したからで、アリシアの父親の一存で婚約者を変更できるわけがない。それを知るとメリッサは体調を崩して寝込んでしまった。
(まさかそこまでフレデリック様のことを好きだったなんて。メリッサにはなんだか悪いことをしてしまったわ。でも、私にもどうすることもできない)
もしかしたら、未来のフレデリックと未来のメリッサには何かがあったのかもしれない。それを自分に知られなたくなくて口をつぐんでいるのかもしれないとアリシアは思った。
(あれ?)
二人のことを考えた瞬間、胸がチクリと痛む。
(どうして胸が痛むのかしら?私は別に、フレデリック様のことが好きと言うわけではないのに)
素敵な男性だと思うし、婚約者にと望まれたことは純粋に嬉しかった。だが、学生時代に他の女学生のようにフレデリックに対して強い憧れを抱くようなこともなかったし、メリッサのようにフレデリックに対して恋心を持っているわけでもない。
それなのに、どうして胸が痛むのだろう。
じっとフレンを見つめると、フレンと目が合う。死ぬ間際、どうしても自分に会いたいと願って過去へと戻ってきたらしいが、本当にそこまで未来の自分は思われていたのだろうか。
なぜか胸がざわついて、アリシアはすぐに目を逸らした。
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