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疑惑
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「アリシア、迎えにきたよ」
婚約が決まり、フレデリックの屋敷に住むことになったアリシアをフレデリックが迎えに来た。フレデリックは侯爵家の次男で、本家は長男が継ぎ、フレデリックはすでに本家を出て自分の屋敷を持っている。そのフレデリックの屋敷に、アリシアはこれから住むことになるのだ。
「お迎え、ありがとうございます」
アリシアがドレスの裾を摘んでふわりとお辞儀をすると、フレデリックは微笑んでアリシアに歩み寄った。
「いずれ夫婦になるんだからそんな固い挨拶は抜きにしましょう。アリシア、敬語はやめてもいいかな?」
「はい、もちろんです」
「アリシアは?」
まさか自分も敬語をやめろと言われるとは思わず、アリシアは目をぱちくりさせる。
「えっと、私はフレデリック様よりも年下ですし、まだ心の準備も色々とできていないので……」
ぎこちなくそう言うと、フレデリックは苦笑して言った。
「心の準備か、そうだね。ごめん、焦る必要はないよ。これから少しづつ仲良くなろう」
ね?とアリシアの顔を覗き込むフレデリックに、アリシアは思わず胸を高鳴らせる。そんな二人を見て、フレンはどことなく面白くなさそうな顔をしていた。
「フレデリック様!」
パタパタと駆け寄る足音がして、メリッサが玄関先までやってきた。
「メリッサ、久しぶりですね」
「お久しぶりです。お会いできて嬉しいです、フレデリック様」
フワッと花が咲くように笑うメリッサは誰がどう見ても可愛らしく庇護欲をそそる。アリシアがフレデリックを見ると、フレデリックはよそゆきの笑顔をメリッサに向けていた。
(フレデリック様にはメリッサの可愛らしさが通用しないのね。本当に、なぜメリッサではなく私が婚約者に選ばれたのかしら)
アリシアがそんな風に思っていると、メリッサはフレデリックの裾をくいくいっと引っ張る。フレデリックが気づくと、メリッサは背を伸ばし、フレデリックへ何かを耳打ちする。メリッサが言った何かにフレデリックは顔を顰めた。
「お姉さま、すみません。フレデリック様をお借りしても?」
「え、ええ」
「すまない、すぐに戻るから」
アリシアが戸惑いながら返事をすると、フレデリックがアリシアへ申しわけなさそうに返事をする。そしてメリッサはそんなフレデリックの腕を取って屋敷の奥へ歩いて行った。
取り残されたアリシアは何か心の中に言いようのない黒いものが広がっていくのを感じていた。
(やっぱり、あの二人は何かあるのかしら?でも、今まで特に深い接点はなかった気がするし、メリッサからのフレデリック様への一方的な思いだと思っていたけど……違うのかしら)
胸の奥がざわざわするし、重い。アリシアが暗い顔をして屋敷の奥を見つめていると、フレンがそっとアリシアの肩に手を置く。
「大丈夫か?」
アリシアはビクッと肩を振るわせるが、すぐにフレンへ笑顔を向けた。
「大丈夫です」
アリシアのぎこちない笑顔を見て、フレンは小さくため息をつき屋敷の奥を睨んだ。
婚約が決まり、フレデリックの屋敷に住むことになったアリシアをフレデリックが迎えに来た。フレデリックは侯爵家の次男で、本家は長男が継ぎ、フレデリックはすでに本家を出て自分の屋敷を持っている。そのフレデリックの屋敷に、アリシアはこれから住むことになるのだ。
「お迎え、ありがとうございます」
アリシアがドレスの裾を摘んでふわりとお辞儀をすると、フレデリックは微笑んでアリシアに歩み寄った。
「いずれ夫婦になるんだからそんな固い挨拶は抜きにしましょう。アリシア、敬語はやめてもいいかな?」
「はい、もちろんです」
「アリシアは?」
まさか自分も敬語をやめろと言われるとは思わず、アリシアは目をぱちくりさせる。
「えっと、私はフレデリック様よりも年下ですし、まだ心の準備も色々とできていないので……」
ぎこちなくそう言うと、フレデリックは苦笑して言った。
「心の準備か、そうだね。ごめん、焦る必要はないよ。これから少しづつ仲良くなろう」
ね?とアリシアの顔を覗き込むフレデリックに、アリシアは思わず胸を高鳴らせる。そんな二人を見て、フレンはどことなく面白くなさそうな顔をしていた。
「フレデリック様!」
パタパタと駆け寄る足音がして、メリッサが玄関先までやってきた。
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「お久しぶりです。お会いできて嬉しいです、フレデリック様」
フワッと花が咲くように笑うメリッサは誰がどう見ても可愛らしく庇護欲をそそる。アリシアがフレデリックを見ると、フレデリックはよそゆきの笑顔をメリッサに向けていた。
(フレデリック様にはメリッサの可愛らしさが通用しないのね。本当に、なぜメリッサではなく私が婚約者に選ばれたのかしら)
アリシアがそんな風に思っていると、メリッサはフレデリックの裾をくいくいっと引っ張る。フレデリックが気づくと、メリッサは背を伸ばし、フレデリックへ何かを耳打ちする。メリッサが言った何かにフレデリックは顔を顰めた。
「お姉さま、すみません。フレデリック様をお借りしても?」
「え、ええ」
「すまない、すぐに戻るから」
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取り残されたアリシアは何か心の中に言いようのない黒いものが広がっていくのを感じていた。
(やっぱり、あの二人は何かあるのかしら?でも、今まで特に深い接点はなかった気がするし、メリッサからのフレデリック様への一方的な思いだと思っていたけど……違うのかしら)
胸の奥がざわざわするし、重い。アリシアが暗い顔をして屋敷の奥を見つめていると、フレンがそっとアリシアの肩に手を置く。
「大丈夫か?」
アリシアはビクッと肩を振るわせるが、すぐにフレンへ笑顔を向けた。
「大丈夫です」
アリシアのぎこちない笑顔を見て、フレンは小さくため息をつき屋敷の奥を睨んだ。
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