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第百九十話 旅人たち
しおりを挟む**お休みしててごめんなさいでした!**
ーー
マッハ達のことも落ち着いて、ドーラとユータは久しぶりに日本に帰った。今は転位扉を使っているので、ドラゴニアに居る時間も日本の世界でも過ぎているので修正する必要もない。楽になったけど、時間が2倍に使えなくなったわけだ。
今の所、その差は実感できない。なのでまぁどーでもいいかと思っているユータ。
ユータの両親は、ユータとドーラがムータンの王宮関係で働いていて、その関係でダンマス王国にも行くこともあると思っている。ユータとドーラがそう説明しているから。
実際、世界こそあっちの世界になってしまうけど、似たようなもんだ。ダンマスのいるドラゴニアで王様とその相棒をやっていて、新ムータンを作ったりヘルプに行ったりしているから。
両親に大量のヒモノを渡してから、日本ではいろいろ食べた。やっぱラーメンとカレーだ。こっちは種類が多い。ユータの街には評判の悪い店はないし、不味い店も無い。安心して食べ歩ける。それとパーラー(喫茶店)でパフェなどを食べる。
和菓子屋でもいろいろ食べる。
「やっぱ、食べ物は多いよなこっちは」
「そうだねぇ、種類が段違いだね」
最近は買い物はほぼしない。あっても自転車用具とか、カメラや現像関係のモノくらい。
なので、近くの大きな街のカメラの中古屋を覗き、その後本屋に寄り、古本屋に寄り、そして家に帰る。
まる3日くらい居ると飽きるので、ドラゴニアに戻る。
ーー
で、ドラゴニアでもドーラとユータは特にやらねばならないことは無かった。
なので、今日は見回りということで、ムータン人達だけで旅をしているグループを見に行ってみた。
「あー、もう帰りてぇ、、」若いの
「なんだ?歩くのが辛いのか?」壮年
「あたりめぇだろ?こんだけ何も通らないって、どんな僻地なんだよ」若いの
「そらー、向こうのウチの国にもあったろうが、、」
「そんなトコ行くヤツもいなかったろーが」
「おまえら、そんなことより、来るぞ!」
愚痴を言っていた若いのと、それと話していた壮年が、初老の男の言葉に身構えた。
皆腰から剣を抜き、周囲を警戒。4人目が、「正面が先、左右が後。連携しているな」と皆に伝える。
「どのくらいだ?」
「それぞれ2-3匹。あまりでかくないし、魔力も強くない。」
「よわっちいやつか!」若いの
「舐めたら死ぬぞ。」
「わかってるよ!」
正面から角が生えた体長1メーター位のうさぎが襲い掛かってきた。3匹。
「ヤニス!」壮年
「おう、いける!」若いの
すぐ壮年は右を向き一歩踏み出る。
初老の男は左に一歩出る。
同時に両側から4匹ずつ角の生えたうさぎが襲ってくる。
4人目の壮年の男はそれを見てから後ろ向きになり、後ろを警戒する。が、サーチには今の所何も引っかからない。
4人目はそのままサーチを全体的に広げる。大体半径50m以内には他に何もひっかからない。
が、そのまま警戒を続ける。
闘いの音が消えた。
4人目が振り返ると、3人が獲物のトドメを刺しているところだった。
獲物をそれぞれがストレージにしまった事を確認し、4人目は警戒を緩めた。
ここは北西王国。元リターニャ、以前ユータたちが居た国。そのダンジョンのある場所の森の方に狩りに入っている。長い長い道があり、ずっと向こうの北に抜けられるようになっている。が、一般人でここを通るものはまず居ない。だから馬車など通るわけがない。道になっているのは、単なる森だと方向を失いやすいから、宿の者達が道を作った。
また、せっかく道を作ったので、北側の森の入り口にも宿を作った。ラットビア国境に近い街道の、森への入り口の道の角にだ。だからラットビアの冒険者達も、この森に狩りに来るようになったし、
たまにその北の宿と南の宿の用事のために荷馬車が通る。が、週に何度か程度。定期旅客馬車は無い。客が居ないから。
今は双方の宿で、魔法の訓練を冒険者達につけてくれている。そこで訓練を受けてストレージを持てた者も多い。
基本、身体強化と回復魔法を教えるが、その基本を出来た者にはそれ以上を教えてもらえる。
なので結構人気だ。ストレージを持った者達は、森で狩りをしながら南下や北上する者も少しは居る。というか気づいたら北側に居たとか南側に居たとか、結果的に南下や北上なのだ。だから馬車の客にはならない。
宿の主人は今は冒険者上がりの者になっている。ニヤから譲られたのだ。なのでドラゴニアとは関係ないのだが、ドラゴニアから防衛隊の冒険者が何人かこちらに魔法の教官として住み込んでいる。
ドラゴニアやゴンザールと違って、それ以外の土地ではまだまだ魔法が以前のままだ。冒険者達の危険性は高いままなのだ。
ムータンから来た者達は、その辺は恵まれている。ムータンで市やタカから基本を教えられ、更に幾分の攻撃魔法や便利魔法や治癒魔法を教えられており、更に、こっちの世界に来た時の初期の研修先で、魔法を鍛えられ、いつの間にか彼等の魔法は必要十分くらいにはなっていた。研修先の周囲(子どもたち)がそれ以上だからだった。
なので、最初に滞在した南側の宿では羨ましがられた。
「ドラゴニアから来た」
というだけで、もう魔法に関しては凄いはずだと思われており、実際そうだからだ。
そして武術に関しては、ドラゴニアだからって特に数段秀でているというわけでもない。また、向こうの世界から来た者達は武術は一般的ではなかったので、こっちに来て習った程度ではまだまだ初心者レベルだ。
でも魔法があるから、身体強化した上に剣に魔力をまとわせて使えば、かなり上級剣士みたいなことになる。
また、魔法による攻撃もできるし。
そこらへんも、ムータンの者達が広く出始めると、知られ始めるだろう。
さてヤニス達。
「どうする?こっちで野営するか、宿に戻るか」壮年の男。ネイサニョ。
「俺は戻りたい。野営より飛ぶほうが疲れない」4人目の男。ニイサニ。
「俺はどちらでもいいわ。」初老のニョージン。
「俺帰りたい!風呂入りてー!!うまい飯食いてー!!」ヤニス
そらそーだな、と全員が思った。
で、皆そのままふわっと浮かび、そのまま南の方に飛んでいく。まだ転位魔法は使えなさそうだ。
宿の前に到着する4人。他の冒険者達も丁度帰ってきた頃で、宿は立て込んできている。
丁度訓練を終えた者達も戻ってきた。裏にでかい訓練場があるのだ。
「ネイサニョ達も戻ってきたんだ」
と、教官をやっている冒険者のタチバナ。ドラゴニア防衛軍でもある。ネイサニョは彼に付いて狩りを習った。
「ええ、やっぱ野宿よりこっちがいいかな?って。風呂あるし、、」
「そりゃそーだなー、風呂とココの飯はいいからなぁ、、」
そりゃ冒険者にしてみれば、まともな宿を使えれば、そしてそこに風呂が有れば最高だ。風呂、野宿より美味い飯、安全な寝床。魔法使っての行き来くらいどってこと無いと思える位の価値はある。
5人はぞろぞろと中に入る。
今日の獲物はさっき獲ったうさぎと、その前に獲ったイノシシだ。両方とも食材になるので宿に売れる。
なので3人が裏に行こうとしたら、
「よう!どうだ?」
「あ、ドーラさん!」ヤニス
ドーラは基本、必要無い時はドーラを国王とよばないで名前で呼べと皆に言っている。
「今日も獲物獲ってきたんで宿に買ってもらおうかなって」
「おう、先に行って来い。俺ら食堂にいるわ」
「「「はい、失礼します!」」」
ドーラとユータが食堂に入ると、ニョージンが一人で座っていた。
ドーラとユータはその席に座る。テーブルは森の木で作ったデカイテーブル。8-10人が座れる。
「ニョージン、無理していないか?」ドーラ
「年寄りったって、まだなったばかりだ。まだまだ行けそうだ」ニョージン
「うん、良かった。ムータンはこれからだ。あと10年は頑張ってもらいたいな」
「そうですな、、一世代か、、まぁ、大丈夫だ。」
「その後は、南の海辺でのんびり老後を過ごせるようんしてやるから」
「あっはっは、期待しときますわ」
実際、向こうの世界とは違い、老人でも出来ることは多い。年齢、性別など無関係なのが実態。皆自分で出来ることをやっている。することが多いのだ。制限も無い。子供だからやってはダメとかは無い。それができればやっていいのだ。
最初の頃は、ドラゴニアの子どもたちの経験の多さにムータンから来た者達はびっくりしていた。
だからそれを知ったムータンの者達は、子供だからといって舐めることなどなくなった。誰が何を出来るのか全くわからないからだ。
ヤニス達が戻ってきたので、皆で風呂に行く。ここの風呂は外にでかい別の建物で風呂がある。ニヤがこの宿を建てた時、風呂は大きい方がいい、と、そうしたのだ。湯は温泉だ。
それは大当たりで、あまり風呂屋が無いドラゴニア以外の地域から来た者達には無くてはならないものとまでになっている。
じゃぶじゃぶ、じゃぽん・・
「ふぃー、、、あれだね、おうさm・・おっと、ドーラさんや。こりゃいいもんだねぇ。向こうのムータンにもなかったよ」
元の世界のムータンはシャワーだ。冬にバスタブにお湯をはってあたたまる、ということはあるが、一般的ではない。
ニヤはダンマスに手伝ってもらって温泉(鉱泉)を引いてこの風呂を作った。
「温泉だからな。高温で湧いてくるので暖房にも使えるし、いいことだ」
宿の一階の床下に温泉のパイプを周して温めるのだ。
「温泉が暖房になってるなんて、便利ですなぁ」
「雪がめったに降らないから使えるんだろう。寒すぎたら余り効果ないだろうし」
「雪がない土地も有り難いですわ。冬も動ける土地は初めてなので、嬉しいですねぇ」
向こうのムータンは、冬には雪で覆われる。
食堂に戻ると、皆他の冒険者に声掛けられたりかけたりしている。特にヤニスに掛かる声は多い。
「へぇ、、結構ここに滞在しているのか?」
「ええ、もう一月ほどですか。ここは居心地いいですからね。」
話を訊くと、最初は森のこちら側で毎日訓練がてら狩りをして、一月近くなった最近になってはじめて奥の方まで行き始めたということ。
なので、宿の常連達とはもう顔見知りで、森の現場でも助け合いとかもたまにあるらしい。
「そっか、、皆、居心地はどうだ?」
「本音で言って欲しい。改善策とかあるかもしれないし」ユータ
飯を食べながら、その後は酒を飲みながら話した。たまに周囲の冒険者達も話に加わる。
他の冒険者達がスッと話に入ってくるのは、彼等が拒否しない雰囲気を出しているからだろう。
向こうの世界の一部の地域ではそういうのに対し異常に忌避感を持っている所がある。
向こうに居る時にはムータン人にはそういうのは感じられなかったが、こちらでも同じで良かったとドーラもユータも思った。
知らない者に話しかけられても嫌だと思わない。これはとても大事なことであり、また、ごく普通のことでもある。でもしようとしない者も少なくなかった、ユータの国では。
話しかけられることに忌避感を持たなければ、そのうち話しかけることも出来るようになる。
そうして、こっちの者達といろいろ話せるようになる。
与えられた場で話すのではなく、自分でそういう場を作ることが重要だ。
ユータとドーラは、少なくともこのパーティの者達は大丈夫だと安心した。
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