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二章
白蛇
しおりを挟む俺、白蛇って見たことないんだ。
でも、この人を見た時、白蛇ってこんな風に綺麗で妖艶な生き物なんだろうなって思った。
その人は、肌が不健康に見えるほど白く、赤々とした唇にはリングのピアスが2つ。白髪から覗く瞳は赤みを帯びていて、俺は蛇に睨まれたかのように動けなくなってしまった。
そんな俺に気づいたのか、その人は舌を出して「こっちみんなカス」っと親指を下に向ける。
何故だか、めちゃくちゃ威嚇されてる。
でも、次の瞬間ダイがその人の頭を引っ叩いて、俺は赤い瞳から逃れることができた。
「ねぇ鉄、脅すなって言ったよね?」
「っ、分かってますよ。ただの挨拶っす」
「カスが挨拶な訳あるか。ごめんねトウワ。こいつは鉄。こんな形でも、腕は確かだから安心して」
「腕って…?」
「あぁ、今朝言ったでしょ?プロの美容師だよ、こいつ」
「えぇ!?」
ダイに頭を抑えられたまま、俺を睨みつけている鉄と呼ばれるその人に目を向けると、また舌をベッと出された。
というか、さっきからその舌、先っちょが割れてるんてすけど…。こわい、怖すぎる。
「なんだよ、こんななりして美容師かよってか?はぁ、うざうざ。こっちだってお前の髪なんて切りたくねぇよ!」
「鉄、お前、一旦黙れ」
低い声を出したダイが鉄さんに拳骨を落とす。流石に、これは効いたのか、鉄さんは頭を抑えてうずくまってしまった。
「ほんとごめんトウワ。ちゃんと来る前に言っておいたんだけどさ。こいつのことは、ただ威嚇してくる犬だと思って。絶対噛まないから大丈夫、無視してていいよ。でも、トウワが嫌なら他の美容師呼ぶし、無理しないで」
「…いや、俺は全然、切ってもらう立場だし大丈夫だけど、鉄さんの方が嫌じゃないかな?」
「嫌だわ、どあほ」
また悪態をつく鉄さんをダイがひと睨みすると、鉄さんは慌てて咳払いをした。
「………まぁ、俺はプロだ。俺にはわかる。お前のその、こだわりのなさ。無頓着さ。手入れされてない髪を見れば一目瞭然だ」
「でもな…」と鉄さんは先ほどとは違う妖艶な笑みを浮かべた。
「お前のその髪、俺がどうにかしてやるよ」
ただの派手で不健康だという印象の人が、妖艶な魅力を身に纏う。
「それじゃ、ダイさん。こいつ借りますわ」
「あぁ、よろしく」
「やっとスイッチ入ったか」と呆れた声を出して笑っているダイの横を、鉄さんは見かけ通りの指の長さで、俺の腕をしっかりと掴み引っ張った。
「よし、行くぞ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
自分で適当に切っていた髪をプロの美容師に切ってもらえるなんて。
ワクワクした気持ちを胸に、俺は誘導された部屋に大人しく着いて行った。
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