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二章
選択肢
しおりを挟む受験も終え、自由登校になっていたため、俺が数週間休んでいても問題になることはなかった。
朝、「行ってきます」と部屋を出ると何故か、チカも付いてきて。
どうしたの?と聞くと、送ってく、と学校まで車で送ってくれた。あのフルスモークの高級車だ。
だからか、学校に来てから視線が痛い。注目されることに慣れてないんだけどなぁ。
友人と呼べる人がいないから、話しかけてくる人がいないのが救いだ。
あの人誰?なんて聞かれて、俺が言える情報なんて何一つないんだから。
「燈和」
教室に着いて、1人ホームルームが始まるのを待っていると、前に座った幼馴染が俺の顔を覗いてきた。
「健…おはよ」
「お前、何してたんだよ。携帯繋がんないし、心配した」
この学校で唯一話しかけてくる、幼馴染。幼稚園からの縁で健は何かと世話を焼いてくれる。優しいやつだ。
「携帯無くしちゃってさ」
「ほんと、鈍臭いな。まぁ、無事で良かった……てか、髪切ったのか?」
あ、やっぱり気づく?
極力空気になって過ごしたかった俺は、前髪を伸ばして伊達眼鏡をかけて、存在を消すように学校生活を送っていた。
今日もお馴染みの格好でリビングに行ったら、驚いた3人が、ショックな顔して騒がれた。
「俺のトーワが!!」
「トワ、流石にそれは…‥ダサすぎる」
「時間は…まだ、大丈夫だよね…」
「ダイ!」
「分かってる」
何故か時間を確認していたダイが、鋏を持ってこちらに近づいてくる。
「大丈夫、俺、手先は器用だからさ」
キッラキラな笑顔で近づいてきたダイは、俺の手を取って洗面台へ連れて行き、俺の育てた前髪を遠慮なく切っていった。
「ほら、この方が視界がクリアでしょ」
それは、確かに。スッキリとした視界に、少し照れくさくなる。
リビングに戻ると、チカとサンがグッっと親指を立てた。みんなの前では、前髪分けてたり、上げてたりしてたから、驚いたんだろうな。
「帰ってきたらプロにもう少し整えてもらおうね」
「え、このままでいいよ」とダイに答えると。
サンがいつもよりキリっとした顔で「美意識大事」と言ってきたので、帰宅後美容室と、予定が決定してしまった。
「眼鏡はかけてもいい?」
人見知りは相変わらずだから、せめてレンズ越しで学校生活は送りたいと3人に伺うと、「可愛いからいいよ」なんて意味のわからない褒め言葉を貰った。
そんな変な朝を思い出して、クスっと笑みが漏れると、教室がざわっとして驚く。なんだ、何事だ。
健も少し顔が赤いし、体調でも、悪いのかな?
「まぁ、いつもの不審者みたいな見た目より、いいんじゃね?」
と健からもお褒めの言葉をいただいた頃、担任がやって来た。そして、授業が始まる。
卒業間近なので、自習時間が多く、俺は1人で英語の復習をしてた。
放課後になり、帰宅しようとすると、何故かクラスの女子から囲まれた。
「藤宮くん、もう帰るの?」
「K大合格したんだよね。私達に勉強教えて欲しいなぁって思って」
「ね?お願い」
細い腕が俺の腕に絡む。その途端、ブワっと鳥肌が立ち、慌ててその腕を離した。
「キャッ」
「ご、ごめん、お、おれ、今日用事あるから」
教室から走り去る。後ろでは、女子達が非難の声を上げていた。
急いで靴を履き、校門について、息を整える。
注目されるのは朝に乗った高級車のせいだって思ってたのに、なんだか、違うみたい。今も、下級生だろう女の子達が、俺をジロジロと見てくる。
なんだ、俺の服に何かついてるのか?
息を整えて、家に帰ろうとすると、さっきコチラを見てた女の子達が俺の方に近付いて来た。
また、だ。なんで。なんで、今日は女子にこんなに絡まれるんだ。
足が動かなくなる。呼吸が浅くなる。
「あ、あの~」
間延びした高い声が耳に入ってきて、もう無理だと思った時、後ろから首に腕が回された。
まるで首を絞めるような格好だが、漂う香りに安心して力が抜ける。
「はいストップ。こいつ、貰ってくわ」
「…チカ」
「お待たせトーワ。帰ろ」
首に回していた手を、俺の肩に回して車まで誘導してくれる。
「…迎えに来てくれたの?」
「おぅ、これからは俺ら3人の誰かが迎えにくるよ」
「……ありがとう。何故か今日は、女子達の様子がおかしくて、俺のこと見てたり、近づいて来たりで、怖かったんだ。チカが、来てくれて良かった」
車に乗り込んで、情けなく涙目になってしまう。本当に怖かったんだ。今までも少しくらい会話したことはあった、でも、今日の女子達の瞳が義母に似てたから。なぜか、怖かった。
「あー、これは俺らが失敗したな」
「なんで?チカ達は何も悪くないよ?」
「んや、お前が綺麗だってことがバレちまった」
恥ずかしげもなく、そう言ったチカに驚く。
「お、俺が!?!?綺麗!?何言ってるのチカ。大丈夫?」
「自覚ないのも、やばいよな」
クスクス笑ってるけど、大丈夫なの?本当に!俺が綺麗に見えるなんて、チカは一旦、眼科に行くべきだと思う。
「あー、トーワ。学校って自由登校だったよな?」
「ん?そうだよ。俺は受験も終わったし、特に自由かな」
「じゃぁ、学校は行かずに、俺らと遊ぼうぜ」
「え?い、いいの?」
学校は俺の安住の地だった。だから、別に嫌いじゃなかったけど、今日、学校に行きたくないって初めて思った。学校に行きたくない。チカ達といたい。
「ほ、本当にいいの?」
「誘ってるのは俺。だからお前が選ぶんだよ。学校に行くか、俺らと遊ぶか、好きな方を選べ」
そんなのもちろん。
「チカ達と遊ぶ!!!」
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