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一章
認めてくれる人
しおりを挟む「この子のせいで、私たち家族はバラバラになった。あの女と一緒に死んでくれてたら、ヤマトさんはこの家に帰ってきて、元通りやり直せたのにッ…」
耳に入る義母の声は涙に濡れていて、恐る恐るチカの背から顔を離し、義母の様子を伺うと、赤くなった目で俺を睨みつけていた。
震えた義母は俺と視線が合うと、
「あんたさえいなければぁぁぁぁあ!!」
大きな声で発せられた言葉に肩が揺れる。
慣れてしまった言葉だ。この人が最低なことは変わりないけど、女性を泣かせてしまったということに、罪悪感が募る。
チカの前に拘束されている自分の腕を、離して欲しくて動かすと、チカが、いいのか、という瞳でこちらを見てきた。それに頷いて、俺はチカの横に並んだ。
「どうして、どうして私がこんな思いをしなくちゃいけないの。………あなたそっくりなのよ、あの女に。あなたの顔見るたび、あの女がチラついてイライラする」
「それはあんたの勝手だろ。勘違いするな。お前の夫を奪ったのはトーワの母親で、こいつじゃない。こいつは何も悪くない」
真っ直ぐな声で、チカが義母の言葉を否定する。
「お前の細腕なんて、本気を出せばトーワでも折ることができる…。でも、トーワはただ黙って耐え続けてた」
チカが俺の頭に手を乗せて、褒めるように俺の頭を撫でた。
「……俺にはできない。俺だったら暴力は暴力で返す。それが一番楽だからだ。でも、こいつは一番きつい道のりを18年間も耐えてきた。こんなに強くて優しい人間会った事ねぇよ」
チカの言葉に止まっていた涙がまた出てきた。
強いなんて、優しいなんて、そんなふうに褒められたの生まれてはじめてだ。
まだ出会って、数週間だけど、俺はこの3人と離れたくない。一緒にいたい。俺、こんなに人に認められたのはじめてなんだ。
チカが義母に近づいていく。
「お前、まだ言えるか?こいつに死ねっていらねぇって、お前が悪いって、言えんのか!?」
義母の前に立ったチカは、義母が座っていたソファーの背もたれをガッと蹴り義母の耳元へ近づく。
「…━━━、……━━━━……」
チカが何か耳打ちした途端、義母の顔が青ざめ、震えだした。
何を言ったんだろと疑問に思っていると、今まで後ろで静かにしていたサンが俺の手を引く。
「じゃぁ、トワの荷物取りに行こうよ。部屋に案内して~」
「え、ま、まってまだ話が…」
「大丈夫大丈夫、あとはチカとダイが話しつけるから」
有無を言わさず、サンの足は扉へ向かう。
急に動き出したサンに疑問ばかり募って、ダイに目を向けるとダイはにこやかに手を振っていた。
口にはいってらっしゃい。
部屋の扉が閉まる時に見えたのは、震える義母と怒ってるチカと、その2人に黒い笑顔で近づくダイの姿だった。
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