貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

332.久しぶりの再会

屋敷で作業していたスチュアートの元に誰か屋敷を訪れてきた者がいると報告が入った…

｢誰でしょう？来客の予定はありませんが…｣

｢スチュアートさんを呼んで欲しいと言われまして…｣

従者の1人がニコニコと笑って前を歩きながら説明すると、スチュアートはその様子をみて顎をそっとさすった。

｢…とても楽しそうですね…｣

伺うように声をかける。

｢えっ！？わ、私ですか？｣

従者はそんな事を言われて驚き、ビクッ！と肩が跳ねた！

｢ふふ、ええ…まるでイタズラを仕掛ける子供のようです｣

スチュアートさんがにっこり笑うと…従者はタラタラと汗を流し、目をキョロキョロとさせていた。



｢まだかなぁ｣

ロイ王子はソワソワとしながらフードを被ってスチュアートが来るのを待っていた。

｢こんな回りくどい事をしないで早く屋敷に入ればいいじゃないですか…｣

クリスが呆れていると

｢駄目だ！まずはスチュアートを仲間にしないとカイルとローズを驚かせるのは難しくなる！ついでにスチュアートも驚かせるんだ！｣

｢スチュアートさんまで驚かせるんですか？｣

キャシーが聞くと

｢ここまで来て驚かせないでどうする！見たくないか？カイルとローズの驚く顔！特にスチュアート！俺は見たい｣

｢ちょっと…楽しそうです｣

キャシーが想像したのかクスッと笑うと

｢姉さんとスチュアートさんにはそんな事したくないけど…カイル様にはしてみたいですね！｣

クリスもそこだけは同意した。

｢それにしても遅いな…あの人上手くスチュアートを呼んで来れるかな｣

｢どうでしょう…説明した時はノリノリでしたが｣

ロイはなかなか来ない従者に少し嫌な予感がしてきた。

｢クリスはあの従者の事は知らないんだよな｣

｢はい、僕が王都に行ってから雇った人みたいなので…僕らだけの時は人を雇える状態じゃありませんでしたから…｣

クリスが当時を思い出して遠い目をする。

｢すまないな…｣

｢そんな事…本当にあるんですね…｣

ロイとキャシーが哀れんでクリスを見つめた。

少し待っているとあの従者が扉を開き顔を出した！

｢あ、あの…お待たせしました…｣

気まずそうに声をかけると…

｢あれ？スチュアートは？｣

｢それが…｣

従者が後ろをチラッと見る、すると…

｢お久しぶりです、ロイ様、キャシー様｣

従者の後ろからサッとスチュアートさんが笑顔で姿を見せた。

｢スチュアート…｣

いつも通りの落ち着いた態度にロイはガックリと肩を落とす。

｢すみません…スチュアートさんにすぐにバレてしまいました…｣

従者が申し訳なさそうにクリスに謝った。

｢別にいいんだよ、ロイ様が勝手に言ったことだし騙せると思ってなかったからね｣

｢やっぱりスチュアートは無理か…｣

ロイが悔しそうに言うと

｢スチュアートさんお久しぶりです｣

キャシーがすっと頭を下げた。

｢お二人共お元気そうで…クリス様もお久しぶりです｣

｢スチュアートさんただいま帰りました！タウンゼントのことを任せちゃってすみません…でもすごく助かります｣

クリスはガッチリとスチュアートさんと握手を交わした。

｢じゃあ早速スチュアート、カイルとローズはいるかな？｣

｢はい、お二人共部屋で休んでおりますよ。呼んできましょうか？｣

｢いや！いい！これから自分達で行くからな！｣

ロイは今度こそはとニヤリと笑った。