貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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331.約束

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前の二人の甘い空気に気が付かず…クリスは馬車に近づくと…

「お疲れ様でした、何事もなくてよかったですね」

やっと解放される嬉しさから笑顔で話しかけると…

「はい!本当にありがとうございます!あっ!クリス様…これ今回の護衛の報酬です!受け取ってください」

ドリーがお金が入った袋を取り出しクリスにさし出した。

「いえ、ここに来るついででしたしあの後何事もありませんでしたから大丈夫ですよ」

「いえ!それでは私達の気持ちがおさまりません!」

ドリーがそう言うと、リナリーとイブもウンウンと頷き熱い視線をクリスに送る。

「では…そのお金は町でたくさん使ってくれませんか?ここは僕の生まれた町でもあるんです。町の人達の為になるならその方が嬉しいです」

「クリス様…」

「素敵…」

「え?」

イブの声に顔をしかめる。

「い、いえ…なんでもないです」

イブはクリスに見つめられて頬を染めると下を向いた。

「そうだ!ならクリス様に町でご馳走させて貰えませんか?やはり助けていただいたお礼がしたいです」

リナリーがいい考えだと手を叩くと

「嬉しい申し出ですがすみません…主人の世話もありますし…」

クリスはロイ王子達の方をチラッと見て断ろうとするが…

「少しだけでもお時間無理ですか?どうしてもお礼がしたいです…」

両手を組んで瞳を潤ませクリスをじっと見つめると…

「じゃあ…少しだけ…本当に少しだけですよ」

「はい!ありがとうございます!」

イブはパァーっと顔を輝かせた。

「では私はロイ様達と領主にご挨拶に行きますので…あそこにいる町民のハンズが皆さんを町まで案内しますから…」

「えっ!クリス様達と一緒に行けるんじゃないんですか…」

残念そうに顔を曇らせた。

「ここの領主様とロイ様はお知り合いなので…私達は領主様の屋敷に向かいますので…」

「はい…じゃ、じゃあ食事はよろしくお願いします!絶対に待ってますから…」

イブはクリスの手を掴むとギュッと握りしめた。

クリスはそっとイブの手を離すと…

「わかりました…では後ほど…」

笑って会釈するとロイ王子の方へと向かう…すると話が終わったとわかったハンズが交差するようにこちらに来た。

「なんだよ…クリスモテモテだな!」

ハンズがすれ違いざまにコソッと笑いかけると

「そんなんじゃないですよ、じゃああの人達頼みますね」

「はい、はい!任せてくださいな!」

ハンズは笑いながら手をあげて了承すると馬車に向かいドリー達と話し出した。

耳を傾けるとどうやら自分の事を聞いている…

「クリス様がここの生まれだと聞いたのですが!」

「クリス様はどのような方なんですか!?」

ハンズに詰め寄るように質問攻めにしていた。

「全く…僕の事を聞いてどうするんだが…」

クリスはため息をつくともう聞きたくないと前に集中した。

「ロイ様、お待たせしました」

二人に近づくと…

「ん…ああ、全然待ってないから大丈夫」

ロイ様がにっこりと笑うとキャシー様が疲れた様子でぐったりとロイ王子に支えられていた。

「……キャシー様…大丈夫ですか?」

「え!?は、はい!何もないです!大丈夫です!」

キャシーはビシッと姿勢を正すと

「もう少しで屋敷に着きますからね、頑張って下さい」

「はい」

「もう着くんだ、なんかすごく早く感じるなぁ~俺としてはもう何日かかかっても良かったんだけど…もう少し遠回りする?」

ロイ王子が本気か冗談かそう聞くと…

「「無理です」」

キャシーとクリスがやめてくれと声を合わせた。
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