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330.嘘

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「ロイ様…」

クリスはロイとキャシーに近づくと…

「あれは町の警備兵かい?それにしては普通の格好してるけど…」

ロイが興味深げに少し離れて待っているハンズを見つめる。

「いえ、あれはタウンゼントの町民ですよ。みんなで交代で町の警備に当たってるんです」

「ああ!ローズがそんな事を言ってました!町のみんなで国境を守っていると」

キャシーが思い出してパンと手を叩いた。

「そういやそうだったな…後で少し手合わせしてもらおうかな…」

ロイ王子は体を動かしたそうにうずうずすると

「みんな喜びますよ。ここの町の人達は父に鍛えられてすごく強いですから、あっそれと町の皆にはお二人の事をって一応説明してありますので…王子と言わないようによろしくお願い致します」

コソッとつぶやく。

「了解!クリスありがとな!」

ロイは笑ってガシガシとクリスの頭を撫でた。

「な、なんですか!?」

急に子供のように撫でられて戸惑うと…

「いや、よく出来た奴だと思ってさ。どうだこのまま王都で俺の下でずっと働いてくれないか?」

ロイが笑ってクリスの顔を覗き込んだ。

「本気ですか?」

「嘘でこんな事言わないよ、カイルがいなくなって…なかなか心から信頼出来るやつがいないからね」

ロイ王子が少し寂しそうに笑った。

「すみませんが俺はタウンゼント家の長兄です」

「ここにはローズもカイルもいるだろ?」

「あの二人には…そんな事に縛られずにのびのびと幸せになって欲しいんです…ずっと僕の為に自分を犠牲にしてきた姉さんに為にも…だから…申し訳ございません…」

クリスはロイに深く頭を下げた。

そして王子の反応が気になりなかなか頭をあげられずにいると…

「まぁそう言うと思ったけどな」

軽い口調のロイ王子の声が頭の上から聞こえた。

「もしかして…からかってます?」

ジロっと上を向いてロイ王子を睨むと

「バレた?いやぁクリスってついからかいたくなるんだよな」

ロイ王子が可笑しそうに笑っている。

「もう!知りません!僕は真剣に考えたのに!」

クリスはブツブツ文句を言いながら今度はドリー達に状況を伝えに足音をドスドス立てながら向かった。

笑いながらクリスを目で追うロイをキャシーは見上げると…

「ん?何?」

ロイが視線に気がついてキャシーに微笑んだ。

「さっきの…クリスさんに行ったこと、本気…でしたよね?」

「いや」

ロイが苦笑する。

「何故あんなからかうような事を?」

「んーいやなんかクリスが可愛くてね…弟がいたらあんな感じかな?ついからかいたくなるんだよ」

ロイが笑って答えるがキャシーは訝しげな顔をして見つめ返す。

「嘘ですね」

「え?」

キャシーの言葉に驚いていると

「クリスさんが気にしないように冗談にしてあげたんですね…」

「いや…そんな事ないよ。キャシーの考えすぎじゃない?」

ロイが苦笑しながらキャシーの髪をいじる。

「いえ…ロイ様本当に残念そうな顔をしてますから…あの時ローズを諦めた時みたいな…」

ロイは自分の頬を触った。

「そんなにわかりやすい顔をしてるかな?嘘は得意な方なんだけど…」

キャシーは自分を大事そうに支えてくれるロイの腕をぎゅっと掴むと…

「わかりますよ…ずっと見てますから…」

ボソッと小さなため息のような声を発した。

「ん?」

ロイがキャシーの見えなくなった顔を覗き込もうとすると…キャシーがばっと振り返りながらロイの方を向く。

鼻先が触れ合うほどの近くに顔があるのにキャシーは恥ずかしがる事無くロイの瞳をじっと見つめた。

「私にまでそんな嘘は言わなくていいんです…だって…今はあなたの妻…なんですから…」

言ってて恥ずかしくなったのか、次第に赤らみ恥ずかしがるキャシーに愛しさが込み上げる。

「ありがとう…キャシーはずっとそばに居てくれるかな?」

「ええ!婚約者で妻ですよ!ずっといます。だから私にも頼ってください。クリスさんほど色々出来るわけではありませんが…」

「十分だよ…」

ロイはキャシーを抱きしめる腕に力を込めた。







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