貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

98.鍛錬2※

無事にクレアさんの許可ももらったので次の日の朝、私は王都に来てから一番早く目を覚ました。

自分でカーテンを開くとバルトが眩しそうに布団の中に隠れる。

その様子に私は笑って、昨日のうちにクレアさんが用意しておいてくれた服に着替えようとクローゼットに向かおうとするとトントンと扉をノックされた。

こんな朝早くに誰だろうと恐る恐る返事をする。

「おはようございますローズ様」

クレアさんの声が扉越しに聞こえてきた！

「クレアさんこんな早くにどうしたんですか？」

私は慌てて扉を開くとクレアさんを部屋へと招き入れる。

「ローズ様のお着替えに立ち会うのはメイドとして当然ですからね」

クレアさんは朝からクレアさんだった。

クレアさんにしっかりと準備をしてもらうとお礼を言って鍛錬場へと向かう。

初めて来た鍛錬場の扉をそっと開くと中ではスチュアートさんがもう既に来ていて素振りをしながら体を温めていた。

「おはようございます」

私はスチュアートさんのそばに行くと挨拶をした。

「ロ、ローズ様？  なぜここに！」

スチュアートさんが珍しく驚いた顔を見せた。

「昨日ロイ王子達が朝一で鍛錬すると聞いて私も参加したいって言ったら、許可して下さいました」

ニコニコと嬉しくて笑っているとスチュアートさんが困り顔を見せる。

「そ、それは……」

スチュアートさん困惑した様子に私は不安になった。

「すみません迷惑でしたか？  帰った方がいいでしょうか？」

しょぼんと下を向くと申し訳無くてギュッと手を握りしめた。

「いえ！  驚いただけですよ、今日はロイ様とカイル様を扱く予定でしたがローズ様がいるなら違うメニューにしましょうか」

スチュアートさんの言葉にこれ以上迷惑はかけられないと首を振った。

「いえ！  私も予定通り同じくメニューで大丈夫です。それと……もし時間が余ったら少し剣舞の練習も見ていただきたくて……」

負担ばかりかけてしまって申し訳なくうかがうように上目遣いで聞いてみる。

「わかりました。では同じ様に鍛錬をみましょう。ローズ様の頑張りを見ればロイ様達もやる気を出すかも知れませんしね」

スチュアートさんはいつものようにニッコリと笑ってくれた。

二人が来るまでスチュアートさんと少し剣を打ち合いながら体を温めているとようやく眠そうな二人が現れた。

「スチュアート、おはよう～」

「おはよう……ございます」

ロイ王子とカイル様が伸びをしながら鍛錬場に顔を出した。

そして私を見るなりピクっと足を止める。

「ロ、ローズ！  もう来てたのか？」

「ローズおはよう。早いな」

私に気がつくと気まずそうにスチュアートさんを見つめている。

なんだろうとスチュアートさんを見るが笑顔で変わった様子は無かった。

「お二人共、早く準備を初めて下さい」

スチュアートさんが声をかけると急いで準備を始める。

「ロイ王子もカイル様も遅いですよ！  もうスチュアートさんと軽く打ち合いしちゃいましたよ」

私は汗を拭いながら声をかける。

「生き生きしてるな」

そんな私をみて二人は苦笑する。

「それはもう！」

楽しそうに剣を握りしめた。