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97.鍛錬※
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「う、美味い!」
「初めて食べる味だ、だが美味しい!」
二人共あまりの美味しさに驚きを隠せない。
「おいしい~」
私もこぼれ落ちそうになる頬を押さえて悶えた。今まで食べたどの果実より甘く、瑞々しくてその中に邪魔にならない酸味があり全てが完璧に思えた。
「なんですかこれ、王都ではこんな美味しい果実がなってるんですね~」
私はさすが王都にある物は違うと感心していた。
「いや、我々も初めて食べたよ」
「そうなんですか? でもこれケーキにしても美味しそうですね」
「ああ楽しみだな!」
「出来たら味見させてくれよ!」
「お、俺も……」
二人がもう一口果実を食べながら頼んでくる。
「それは駄目ですよ。お茶会を楽しみにしていて下さい」
残念そうにする二人に笑いかけた。
暗くなる前に私達は屋敷へと戻って来ると、クレアさんが心配そうに待ち構えていた。
「お帰りなさいませ」
私達の元気そうな顔を見てほっとしながら笑って部屋へと迎えいれてくれる。
「ただいま戻りました!」
クレアさんに笑顔で駆け寄る。
「そのお顔はお目当ての物は手に入ったようですね」
「はい! バルトとお二人のおかげで美味しい果実が手に入りました。明日早速ケーキを作ってみます!」
「それはよかったです。では今日はおつかれでしょうからゆっくり休んで下さい。ロイ様とカイル様もお疲れ様でした」
「いい息抜きになったよ」
「ああ、楽しかった」
私達に笑いかけて部屋を出ようとするとクレアさんが二人を止めた。
「それとスチュアートさんから伝言です。明日の朝一番に鍛錬場で待っているそうなので来るようにと言っておりましたよ」
「「げっ!」」
「まぁ、お二人共そのような言葉遣いはいけませんよ!」
「す、すみません……しかし朝一とは」
「スチュアートさんの朝は早いからなぁ……」
はぁ…とため息をついている。
「いいなぁ…」
私はそんな二人が羨ましくて心の声が漏れてしまった。
「はっ?」
ロイ王子が信じられないとこちらを凝視している。
「私も参加したいなぁ、剣舞の練習もしたいし」
本音は体を思いっきり動かしたかった。
ロイ王子は少し考えるとニヤッと笑ってこちらを見た。
「ローズも来いよ。男の格好をしてりゃ気づかれないだろ?」
朝の鍛錬に誘ってくれた。
「お、おいロイ、勝手な事をしてまた怒られるぞ」
カイル様が止めるとロイ王子はカイル様の肩を組んで部屋の隅に行って二人でコソコソと話し出す。
「馬鹿、よく考えろよ。スチュアートさんだってローズがいればいつもみたいに鬼のようにしごかないだろ? しかも今回嫌に根に持ってるからな……絶対にやばい鍛錬になるぞ」
「た、確かに……」
カイル様はロイ王子に何か言われてこちらをチラッと見ると渋い顔で迷っているようだった。
「そ・れ・に! ローズが行きたいって言ってるんだ。それならスチュアートさんだって断らないだろ」
「それもそうだな……」
カイル様は納得して頷いている。
「よし、決まりだな! 明日ローズも朝の鍛錬に来いよ。朝一なら他の兵士達もほとんどいないし大丈夫だろ」
「いいんですか!」
私は二人の許可を貰って嬉しくて顔を輝かせるが、ハッと気が付きクレアさんを見た。
クレアさんが許可してくれなければ行く訳にはいかない。
クレアさんは仕方なさそうに笑って頷いてくれる。
「いいんですか?」
「そんな顔をされたら仕方ありません。スチュアートさん達のご迷惑にならないようにしてくださいね」
「はい!」
「初めて食べる味だ、だが美味しい!」
二人共あまりの美味しさに驚きを隠せない。
「おいしい~」
私もこぼれ落ちそうになる頬を押さえて悶えた。今まで食べたどの果実より甘く、瑞々しくてその中に邪魔にならない酸味があり全てが完璧に思えた。
「なんですかこれ、王都ではこんな美味しい果実がなってるんですね~」
私はさすが王都にある物は違うと感心していた。
「いや、我々も初めて食べたよ」
「そうなんですか? でもこれケーキにしても美味しそうですね」
「ああ楽しみだな!」
「出来たら味見させてくれよ!」
「お、俺も……」
二人がもう一口果実を食べながら頼んでくる。
「それは駄目ですよ。お茶会を楽しみにしていて下さい」
残念そうにする二人に笑いかけた。
暗くなる前に私達は屋敷へと戻って来ると、クレアさんが心配そうに待ち構えていた。
「お帰りなさいませ」
私達の元気そうな顔を見てほっとしながら笑って部屋へと迎えいれてくれる。
「ただいま戻りました!」
クレアさんに笑顔で駆け寄る。
「そのお顔はお目当ての物は手に入ったようですね」
「はい! バルトとお二人のおかげで美味しい果実が手に入りました。明日早速ケーキを作ってみます!」
「それはよかったです。では今日はおつかれでしょうからゆっくり休んで下さい。ロイ様とカイル様もお疲れ様でした」
「いい息抜きになったよ」
「ああ、楽しかった」
私達に笑いかけて部屋を出ようとするとクレアさんが二人を止めた。
「それとスチュアートさんから伝言です。明日の朝一番に鍛錬場で待っているそうなので来るようにと言っておりましたよ」
「「げっ!」」
「まぁ、お二人共そのような言葉遣いはいけませんよ!」
「す、すみません……しかし朝一とは」
「スチュアートさんの朝は早いからなぁ……」
はぁ…とため息をついている。
「いいなぁ…」
私はそんな二人が羨ましくて心の声が漏れてしまった。
「はっ?」
ロイ王子が信じられないとこちらを凝視している。
「私も参加したいなぁ、剣舞の練習もしたいし」
本音は体を思いっきり動かしたかった。
ロイ王子は少し考えるとニヤッと笑ってこちらを見た。
「ローズも来いよ。男の格好をしてりゃ気づかれないだろ?」
朝の鍛錬に誘ってくれた。
「お、おいロイ、勝手な事をしてまた怒られるぞ」
カイル様が止めるとロイ王子はカイル様の肩を組んで部屋の隅に行って二人でコソコソと話し出す。
「馬鹿、よく考えろよ。スチュアートさんだってローズがいればいつもみたいに鬼のようにしごかないだろ? しかも今回嫌に根に持ってるからな……絶対にやばい鍛錬になるぞ」
「た、確かに……」
カイル様はロイ王子に何か言われてこちらをチラッと見ると渋い顔で迷っているようだった。
「そ・れ・に! ローズが行きたいって言ってるんだ。それならスチュアートさんだって断らないだろ」
「それもそうだな……」
カイル様は納得して頷いている。
「よし、決まりだな! 明日ローズも朝の鍛錬に来いよ。朝一なら他の兵士達もほとんどいないし大丈夫だろ」
「いいんですか!」
私は二人の許可を貰って嬉しくて顔を輝かせるが、ハッと気が付きクレアさんを見た。
クレアさんが許可してくれなければ行く訳にはいかない。
クレアさんは仕方なさそうに笑って頷いてくれる。
「いいんですか?」
「そんな顔をされたら仕方ありません。スチュアートさん達のご迷惑にならないようにしてくださいね」
「はい!」
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