狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

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私は眠りから目覚めると手の感触に横を向いた。
すると私の両手の先にはお父さんとお母さんがいた。
二人はベッドに倒れ込みながら私の手をしっかりと握りしめていた。

その手は熱く、決して離れようとはしなかった。

二人共、私を心配してくれて・・・

そう思うと嬉しくてギュッと握り返す。

すると同時にガバッと顔を上げた。

「「ラーミア!」」

心配する二人の顔はそれは・・・酷かった。
お母さんはいつも綺麗で身だしなみが完璧なのに髪はボサボサで目の下は泣き腫らしたのが赤く腫れている。

お父さんもきっちりした髪は乱れて顎からは髭がうっすらと生えていた。

「あっ…」

声を出そうとしたがかすれたような声しか出ない。

「だ、誰か医者を!」

お父さんが叫ぶとすぐにお医者さんが飛んできた。
私は温い水を少しずつ飲まされるとホッと息を吐いた。

「先生、ラーミアは!」

お父さんが心配そうに後ろから覗き込んでいる。

先生は横になった私の体を優しく診察していた。

「熱が下がりだいぶ呼吸も落ち着きました。まだまだ安静にしなければいけませんが・・・命に別状はないでしょう」

そう言われるとお母さんは泣きながら私に抱きついて、お父さんは目をうるませながらお母さんと私に覆い被さるように抱きしめていた。

その後お母さんが付きっきりで私の面倒をみようとするのをメイドさんやお医者さんが慌てて止めていた。

「奥様もお休みになって下さい、このままでは倒れてしまいます」

「ラーミアが苦しんでいるのに休めません!」

「リリア、ここは私が見るから休みなさい」

お父さんがお母さんを心配して休ませようとするがそんなお父さんもみんなに止められていた。

「旦那様もお休み下さい!ラーミア様が倒れられてからまともに休んでおりませんね」

アデリーさんの言葉にキッと睨みをきかせる。

「お前は黙ってろ!」

「まー・・・」

私は小さな声でお母さんを呼んだ。

「ラーミア!どうしたの?」

お母さんとお父さんが慌てて私の元に駆けつけてくる。

「ママ・・・ねて、パーも」

かすれる声で二人も休んで欲しいとどうにか伝える。

「ラーミア、自分が苦しいのに私達の心配を・・・」

「なんて優しい子・・・」

お父さんとお母さんは泣きそうな顔でわかったと笑って頷いた。

その顔をみて私はホッと安心してまた眠りについた。



「「ラーミア!」」

「大丈夫です、疲れて眠ったのでしょう。昨日とは違い穏やかなお顔ですから心配いりません。それよりもラーミア様の言われた通りお二人も休んで下さい。また明日ラーミア様が目覚めた時に疲れた顔を見せないように」

医者の言葉に二人はこくりと頷き頷いた。

「ラーミアまた明日・・・」

「明日は元気な顔を見せてくれ」

二人はラーミアの頭にキスをするとメイド達に連れられて部屋を出ていった。
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